伊崎瞬












年下は興味が無いと聞いて内なる想いに別れを告げた
金色に輝く眩しい髪の毛も、時折見せる柔らかな笑顔も、いつも眉間に寄せられるシワも、好きでたまらなかったが、遠く及ばないことを知った途端に目に入れることさえ辛くなった


「だからやめときゃ良かったんだ」


絶対泣くことになる。そう言ってくれていた同い年の鈴蘭生であるヒロミは隣に座ってタバコを吸いながらそう言った

ポンもマコも同じようにいって失恋を慰めた、所詮は憧れの類だったのかもしれないがそれでも悲しいものは悲しくて、人前では泣きたく無かった故に顔を俯かせるしかなかった


「あーぁ、先輩もズリぃよな」


ポンはいっていた
何がいいんだと聞く前に


「こんなに惚れてくれる女の子なんざいねぇのに」


っといった


もしこの3人のうちの1人が好きだったら、恋は実ったのかもしれない
好きになったのは彼らの先輩である伊崎瞬さんだった、私が仲良くなっていた源治さんの作ったGPSというグループの副頭をしている

そんな彼とつるむようになって恋をして早2ヵ月、一瞬で初恋は終わってしまい
現在校舎裏で3人に慰められていた、そもそも白昼堂々とサボってまで他校に来ている自分を親兄弟が知ったらなんと言おうか。

けれどその気持ちは変えれずにいたが、明日からはなんとかなりそうだ


「…ポンやマコやヒロミのこと…好きになったらよかった」

「バカ言うなよ」

「俺はいいぞ翔」

「……パス」


ポンの優しさと能天気なところは癒しになる、だがマコの少し間が空いたあとのパスは一瞬心に来た
こういうときのヒロミは優しくて相談しやすくて、この2ヶ月ほぼ毎日伊崎さんについて聞きまくった
迷惑をかけたと思うが今日でそれも終わりだから問題もないだろう。

年上なんかを好きになるんじゃあなかった、と思った
おまけに相手は'あの'伊崎さんだ、女なんて何人も相手してきてるなんてイヤってくらい聞いてきた
……だから勘違いして、自分でも問題ないかと思ったのかもしれない、見た目はあれでも性別だけは女だからと。

短い髪の毛も、似合わない白いワンピースの制服も、高い身長も、全てが自分の中で嫌になっていく
直接振られたわけでないにしろ、やはり心は沈んでばかり
どうしたものかと思ってしまう、三人の吸ってるタバコの匂いはあの人と同じセブンスターのソフト
きつくも優しく感じる匂い、そこに混じったメンズの香水、そして近づくとワックスのツンとする匂いが………


「ようやく顔上げたか」


顔を上げた途端に金色が見えて周りを見たら3人は消えていた
足音も聞こえないほど自分は凹んでいたのか。っと思うとショックでままならない

そしてどうしてタイミングよくこんな所にいるんだと文句を言いたくて仕方がない
間接的にふられたとはいえ思いを告げてない限りはまだ好きらしく、今目の前にいるだけで相手に聞こえないかと思えるほど心臓の音が煩かった


「あっ、あの、ヒロミたちならどっか行きました」

「知ってる、俺がやったからな」

「源治さんは、多分プールの方か教室かも」

「アイツとはさっき話してた」

「戸梶さんなら屋上に」

「あんな豚野郎いらねぇよ」


じゃあ、なんで、ここにいるんですか?


涙が溢れそうで仕方ない

真正面で顔を合わせるのが辛くなって顔を背けた
早く行ってほしい、というより何の用事で来たのかなんて考えは過ぎるばかりなのに

優しい手は頭に触れて短い髪を撫でた


「泣かせて悪いな」


いつも通りのトーンでいうものだから、何事かと思ったが、伊崎さんはそれでも撫でてくる
まるで犬猫のような扱いでやっぱり自分は、と思考はずっとそのまま


「泣いてないですよ」

「そうか」


口数は互いに多くなくて会話も長続きしない、元々女の子特有のお喋りは持ち合わせてなくて
もっと可愛ければもっと綺麗ならばもっと女の子らしければ、この人に振り向いてもらえたのかと考えるばかりで
そもそもそう考えても年下の時点で意味が無いんだと思った


「年下は、好きじゃないんですね」

「あぁうるせぇしガキくせぇだろ」

話の盗み聞きをしたのなんてどうでもいい、今はどうなのか聞こうとしたら即返答。
あぁそうですか、そこまで言われるとなんだか心はスッキリしてきて吹っ切れてきてしまう


「あの!!伊崎さん!」

「おー?」


気だるそうな伊崎さんは真正面で話を聞いてくれる、いつの間にか頭に乗せてくれていた手は元に戻っていて、お互いの目があった


「好きです」

「おう、知ってる」



「は」


もう私の頭の悪いアレは仕方ない、心底恥ずかしい告白をしたつもりだし、今世紀最大の想いを募らせた

だがそんな軽い言葉で帰ってきた、結局自分はそう見られてないのか…っと改めて確認するとなんだかもう馬鹿らしくなって、出て来そうだった涙は完全に消えた



「俺の女になりてぇんだろ」


いつもと変わらないように言った伊崎さんに次は目を丸くしてしまう
なんていうか、この人はこんなにマイペースな俺様だったろうか?なんて思う

二ヶ月、出会って恋をした期間

あっという間で失恋らしいものもあっという間だった


「え、あ…はい、でも伊崎さんは年下は興味ないって!」

「興味無いのはお前以外のだ、なんだそんなに俺がよかったのか」


年上ってのはずるくて余裕があった
この時初めて思い知らされたのだ、あぁなんなんだ結局自分はこの人の手のひらの上で面白おかしく踊らされていただけだと思えばにくったらしくて
伊崎の肩を押せば尻餅をついた


「当たり前だろが!!あんた以外見てなかったんだよっ」


あぁ頭の中がバチバチとまるで火花が飛び散るような感覚だ
伊崎さんの肩に手を置いて必死に言った、またこの人は笑って手を伸ばしたと思えば頭に手が回されて柔らかなそれが触れて離れた


「俺もお前しか見てねぇよ」


何よりも優しく笑ったくせにそういって抱きしめた伊崎さんの顔を見ることは出来ないくせに、引っ込んでいた涙はまた出そうで

あぁ、年上なんて嫌い。

心の底から思いつつも背中を撫でてくれる伊崎さんの手に甘えるのだった。










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