片桐拳
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女は誰だってかっこいい頼りになる男に惚れる。
それはよくある話であった
それはよくあることで。
水上翔という16歳の少女がいた
女でありながら身長179cm、出身校は有名な私立の聖明鏡女学院、部活は1年でありながらボクシング部主将とまでいく
そんな彼女は毎日白色の可憐で清楚な制服に身を包んでいた。
少し男性のような話し方であっても見た目は普通の女子高校生である彼女は今日もまた男に絡まれていた
「なぁ?いい加減話ついたかよ?なぁ」
「テメェのおかげで大分うちの兄貴が世話なったらしいじゃねぇの」
「……」
「携帯いじってんじゃねぇぞゴラァ!」
そう言いながら壁にもたれ掛かって興味もなさそうに携帯をいじっている彼女こそ、この話の夢見るシンデレラヒロインである
如何にもなヤンキーのような男達に囲まれていても平然とした顔をするのは彼女がなれているからだ
365日このような日々を過ごせば嫌でも人は慣れるだろう。
最初はこうでなかった、彼女の通う高校は有名な市立学院であり女生徒もナカナカの上玉だとよく言われている
頭も見た目もいい娘達が近隣の馬鹿な男子高校など相手するわけもないが、絡まれることは少なくない。
そのため家に頼み送り迎えを頼む者が殆どである、だが徒歩で帰宅する子達もそれなりにいる
そして彼女、水上翔は入学式早々そんな自分と同じ学校の同じ学年に絡んでいた有名過ぎる不良高校の"鈴蘭"の男達を容赦なく素手で殴り飛ばしてしまったのだ
そのせいで彼女はその日から毎日鈴蘭高校の輩に狙われ、そして……噂は広まり女子高特有の"王子様"になってしまったのだという。
現に今も奥の柱から溢れんばかりに女生徒たちが目を輝かせている、これに対して喧嘩をすればさらに盛り上がりを見せるのが翔は鬱陶しくてたまらなかった
普通の女子校生として、恋人や好きな人の一人くらいほしいという彼女の願いは脆く儚く消されていたのだ、その日までは。
「シカトこいてんじゃねぇぞ」
そういって男が勢いよく殴りつけようとした時だった
避けようとしたが何も知らない男が間に割って入った
「女に手ェ上げるたァ!どういうことだテメェら!」
「あぁ?んだよオッサン」
そういって間に入った男は背が低く白く長い裾の服を着ていて、派手なシャツがよく目に映った
鈴蘭の連中が引くはずもなく喧嘩は始まり男を見つめたがひ弱な男だった、一丁前に出てくるものだから腕に自信があるのかと思えば違い、ボロボロになった男はフェンスに寄りかかっていた
それを見つめた翔もボロボロであるが鈴蘭の男達は逃げるように行ってしまった
「ハンカチ貸してくれ」
「えっ、あっはい!」
奥にいた女生徒にいえば次々にハンカチが盛られていくが一枚だけを受け取った
「あんた、変わってんな」
「強いんなら早く言ってくれよ」
「名前、聞いてもいい?」
「あ?あー、片桐、片桐拳ってんだ」
「拳さんってんだ、かっこい名前だな」
片桐拳なんて名前を何度も呟いた彼女の顔は緩みきっていた。
まさかまさかと女生徒たちは目を疑いそうになる、そんな顔は恋する乙女のする顔だ、だがしかし…彼女のそんな一面もまた一興、これはいいものを見れたと彼女らは心の中でガッツポーズ
「私は聖明鏡女学院1年、ボクシング部主将の水上翔っていうんだ、その…拳さんはなんで私のこと助けたんだよ」
翔は恐る恐る隣にしゃがんで聞いてみれば、白いハンカチを自分の血で汚しながら痛いという片桐は
「女1人に囲んでるようなヘタレ共なんて見てて鬱陶しいだろ?」
そういった言葉に翔は目を丸くしてパチパチと瞬きした
寒かったか?なんて内心思って片桐は何か言い直そうとするが翔は片桐の両手を掴んだ
「スゲェ、かっこいいんだな拳さんは」
「はっ、ンッンなこと…まぁ、あるかなぁ?」
「私初めてそんな人に会った、いつも私タッパ(身長)デカイから男共も女扱いなんかしてくれたことなんかなかったんだ、そのスゲェ恥ずかしいけど…アンタに助けてもらえて私嬉しかったぜ」
なんていう彼女の笑顔にまるで若い頃のように心が跳ねてしまう
まてまて自分よりも一回り以上離れてるこの娘にそれはないだろう、色気も可愛げも見た目にない彼女に対してそんなことは……っとおもってチラリと横からの視線を感じれば大量の女生徒、何事だと冷や汗が流れるが目の前の幸せそうな顔の翔に片桐はどうしたらいいんだ!っとなる
「なっ、なぁ拳さん…私あんたに惚れたかもしれないよ」
「おっお前なぁ、まだ会ったばっかだろ!そっそれに…その、あのなぁ」
気持ちは嬉しくないわけがないが女生徒達の視線が痛い
今にも刺殺されそうな目線がナイフのようだった。
「………また会ったらな、お互い知らねぇし」
「絶対!ぜってぇ!拳さんが振り向くような女になってやるからさ、私のこと忘れんなよ?」
そう言って立ち上がった翔を思わず見惚れてしまう
そのまま行ってしまった彼女の後を見つめたがその後の女生徒達にはこってり色々やられた片桐拳は源治にいった
「女って恐ろしいな」
「何言ってんだよ拳さん珍しい」
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