クロロ
▼▲▼
クロロが私から奪ったものはとてつもなくしょうもないものだ
家族と、家と、能力とかその程度、家族が大事じゃないのかと言われれば、人形一家みたいな優しさの欠片もないそれを望むわけもない、それなら嘘でも愛してくれる人に甘えるのが普通なのかもしれない。
クロロは幻影旅団という盗賊団のリーダー、即ち団長をしてるんだって
仕事の時はその時によるけど基本は髪の毛をオールバックにして変わったコートを着てる、ここに来る時はとってもラフな格好だ
クロロはなんでもくれる、欲しいと言ったらなんでも与えてくれる、だからいった
お家、食べ物に困らないこと、二人での食事
沢山たくさん家族のふりをした、だからある日言った
「リーリェ、欲しいものはあるか?」
いつも通り、今日はあったかなシチューを食べながら
私はあまり食べ方が綺麗じゃないとメイド長によく怒られてきたがクロロは食いっぷりがいいと嬉しそうに言ってくれた。
だから今日も口周りはベタベタで手もベタベタ、膝に置いてるナプキンの上には人参が転がってるのを発見して手で掴んで口に含む
私のテーブルの周りは汚いというよりめちゃめちゃだがクロロは文句一つも言わなければ怒りもしない。
クロロの毎日来る質問には時折答えたり答えなかったり、答えても欲しいものがあったりなかったり
曖昧なのは毎日だからだろう、365日を何回繰り返したか、それくらいの時間は共にしてる
「家族欲しいな」
「わかった、母親、父親、兄弟はどうしたい?ペットは?」
「んーっとね、ママに、パパでしょ?あとお兄ちゃんとお姉ちゃんと妹、あとペットは犬が欲しいなぁ」
「あぁわかった、きっとリーリェが気に入るのを用意しよう」
一週間立たないうちに"家族"は来た、頭には何かが刺さっているが特に気にしない
ママとパパは優しい、お兄ちゃんは無口でお姉ちゃんは優しい、妹は私よりもずっと小さい
犬は真っ白でおっきな犬だった
クロロは親戚のお兄ちゃんって設定になった、よく顔を見せにくれて毎日一緒に食事をする、クロロが来ると私と犬以外みんな顔が暗くなる
クロロに怒られたのかな?ご飯の仕方が汚いとママが言ったのをクロロに報告してからママの頭に刺さる何かは増えて、ブツブツと何かを呟いてばかりだ
まぁどうでもよかった、あかい屋根に白いおうち
お庭がついて広い一軒家、少し歩けば海があって天気がいいと眺めが良くて、風の入りが気持ちいい
ご飯はいつも美味しくてクロロがいつもいてくれる
「リーリェ欲しいものはあるか?」
今日はボルシチが美味しい日だ、ママの料理はとってもうまい
ぽかぽかとしたご飯が美味しくて堪らない、クロロと2人のご飯はどっちかの手作りだ、美味しいが素っ気ない、仕方ないのは二人共料理なんて興味無いから
「今はいらない」
「そうか、今日は何してた?」
「お姉ちゃんとね」
その途端クロロはお姉ちゃんを見た、お姉ちゃんが怖がってるのが雰囲気でわかる、クロロは優しいから何もしないのに何を怖がるのだろうか
お姉ちゃんはヒステリックな時がある、うるさい時は舌を切るといえば黙る、まるで利口な犬みたい
可愛い人だ、美人だしスタイルもいい、素敵な人
「お絵かきしたの」
「…へぇ、よかったな」
クロロは頭を撫でてくれた、その日生きた自分を感謝するクロロは優しい人だから好きだ
好きだ、好きだから怖い
どうしよう、怒られちゃう、でも私のせいじゃないシャドーのせいだ
シャドーがみんなを食べちゃった、クロロがいない間に私を寝かせて食っちゃった、黒いインクみたいな何かが白いソレを噛み砕いて甲高い犬の悲鳴が可愛いあがる
「シャドー、クロロに怒られちゃう」
<なんだ、お前まだあいつのこと気にしてんのか、お前と俺ならあいつを殺せるのによぉ>
「ダメよ、クロロは私たちを良くしてくれてる、どうしよつ…クロロに怒られちゃう…嫌われちゃう」
クロロが帰ってきたらこの真っ赤になったお部屋をみてきっと呆れる、怒らないけどきっとそうだ、クロロは無闇矢鱈と怒鳴ったり強く叱りつけないけれど、みてればわかる
クロロの呆れ顔なんて、どうしよう嫌われちゃうと思ったのにシャドーは笑いながらまた私の影に消えた
瀕死の犬が目の前で半分食われたまま残されていた、あぁ私のせいだあなたを苦しめるから、私悪気なんてなかったのに
でも苦しいのなら私が気持ちよくしてあげるから、ごめんなさい白いあなたは綺麗だったよ
「…ただいま」
「おかえり!クロロ」
「今日は何してた?」
「んっとね、お掃除」
赤黒く、そして嫌に鼻につく匂いに襲われながら部屋に入れば案の定少女は赤黒いタオルを片手に壁を拭いていた
真ん中には完全に二つに食いちぎられ頭の転がった犬が1匹、汚く落ちてる指や肉をバケツの中にボトボトと音を立てて入れては近づいてきたリーリェ
「掃除は業者を呼んでおこう、その間に一緒に風呂に入るか」
「うん、私ねお掃除頑張った?」
「あぁもう業者もいらないレベルかもな」
嬉しそうに笑う彼女はどこか欠落してる、彼女の家は特殊だ、きっと彼女の使っている「シャドー」と呼ばれる能力のせいだろう
精神面は可成り常人離れしている、狂ってるといえば正しいことだろうか、小さな手を取ればその手は年相応で赤子の手をひねるようなもの
歩き出してもその歩幅は小さい、身長も胸あたりか下の方、そんな小さな少女の力でそこにいた人間と動物全てが死んでいるのだ、ありえない方法で
欲しいと思った凶暴な能力は入手出来なかった為にその少女ごと迎えた
純粋で真っ直ぐな少女に入れ込み始めたのはいつからか、迎えに行った時に彼女は目を輝かせ両手を広げた
「好き」
その両手はゆっくりと頭に回されてまるで子を抱く親のように大きなその腕に抱かれ、求めたのは遠くない過去の話
彼女の全てを手に出来るなら全てを捧げたかった
「クロロ」
「どうした」
「怒らない?」
悲しそうな顔を見たくなかった、愛おしい我が天使のような
尊き人だった、その小さな手を取って握りながら暖かな湯船の中で頬を緩めて笑う
「あぁ、俺はリーリェが好きだからな」
それ以上のことなど何もいらない、ただ世界が二人だけで回り続けている気がするこの家の中だけは何よりも心地いいものだから。
▲▼▲
- 8 -