ヒソカ
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つまらない人生だなぁ。
そう思ってはや数十年、サービス業レベルには休み無しの年がら年中働いて、週7のお仕事に毎日7時間の残業
家に帰れば最近ハマった深夜番組とビールにつまみ、空っぽになった米を買いに行く気も起きない
本当に、本当につまらない人生だ、そのせいだ…残業7時間の深夜0時過ぎ、電車を降りて家までの道のり、突然の大雨に傘も持ってなかったゆえに走って帰ろうとした
大きなクラクションの音に近づく光に気づいて自分の体が宙を舞い、世界が何回転したのだろうか
骨が折れたな、とか内蔵潰れてるんじゃない?とかそんなことばっか適当に思って携帯電話がなる音にどうせ定時帰りの馬鹿上司からの鬱陶しいメールだと予想して
明日の仕事どうしようとか、このまま死ぬのならいいけれど、生きのびた場合仕事は暫く休みになるためクビにされたらどうしよう。なんて思う
大型トラックから降りてきたえらいガタイのいい若いお兄さんが慌てたようで、そりゃあ人を轢いちまったもんな…でも私如きどうでもいいよ
なんて思ってでももう考えるのも、何もかも痛いし眠いししんどいからって目を閉じて意識を手放した
ゴミ臭い、薄暗くてハエも集ってる、目の前でノラ猫が数匹威嚇して毛を逆立て見ていやがる
あぁ、さっきの兄さんに路地裏に捨てられた?なんて思うがまだ痛みは少し引いていた
食べてなかったからとお腹の間抜けな音が鳴って携帯…と思いきや圏外な上に4日は過ぎていた、時刻は12:04とかかれて、遅刻どころでもない
メールは最後に4日前のあの事故の時の予想通りの上司のメール、来週使うプレゼンの資料を作れとのこと
服も体も顔さえも、あの轢かれた時の血で固まって赤黒くなっていた
「…何処ここ」
路地裏の奥には人もいない、そう思いきや走ってきた大柄の男は突然倒れた
見てみればトランプの刺さった人間、こりゃあ大変だ…なんて冷静に思うのは基本的に問題なんて特にない。自分に関係もなけりゃ仕事に支障が来ない限りどうでもよかった
「これでお、し、まい」
次に現れたのはサーカス団のピエロだった
でかいゴミ箱にケツから挟まってゴミと血まみれの私を見た、ピエロって日本じゃ見ないんだよ…と思った
えらく整った顔の奇抜な髪色のピエロの若そうなお兄さん
「キミの家かい?お洒落だね」
「バーロー、私の家は6畳のお風呂キッチン冷蔵庫クーラーなしの3万円だ」
初対面で変なことを言われるがまだ私の家の中はましなことを言っておいた、会社から渡されている寮は寝るためだけの場所
ネットも繋がらないし、寝るためだけのような部屋はテーブルもないのが少しさみしいがサボテンが可愛く咲いてるのがポイントだろう
「それはどうかと思うけどね」.
えらくいい声で話すイケメンピエロのお兄さんは近づいたと思いきや、両脇に手を入れてゴミ箱から抜いてくれた
なんだか優しいじゃないか…と思いきや、じっくり見たあとにまるで珍獣でも見るような目だった
「変わってるねぇ、この辺の人間には思えないし」
「それはお兄さんもじゃない?日本人には見えないよ」
「…日本人ってなんだい?」
「え?ジャパニーズだよジャパン、えーっと、わかる?」
「ジャポンかい」
ようやく分かったようでそれにしては日本語お上手なお兄さん、流暢な日本語はまるで日本人かと思えるほど
外人特有の訛りもないのが感動を覚える、職場の外人さんたちでも訛りがあるのに
「観光客?にしては…おかしい格好だね」
スーツに血まみれで片方のパンプスは消えてた、あぁさよなら3900円のパンプスの片方、あ、500円のストッキングもだ…
カバンが地面に落ちているのを見てどう見ても自分のものであるそれを拾い上げて中身を見れば財布にメモ帳、パソコンは完全に壊れて他には書類やその他仕事のものだけ
「…はぁ、怒られるだろなぁ」
無断欠勤な上に病院に行くために休みをもらいたいと有給消化をするつもりなのだから
カバンの横のポケットから薄い箱のタバコを出して火をつける
「君、観光客だろう?行かなくていいのかい?」
「観光客??いやお兄さんじゃないの?サーカス団に怒られない?あ、サボリ?」
固まった後にお兄さんは笑い出した、あ…こいつ危険なやつだわと思いながら見つめて近くのゴミ箱代わりのバケツを逆さにしてまた座る、携帯は相変わらず県外で連絡もつかない
「僕はここで天空闘技場のために来てるんだ」
まぁ、少し仕事をしながら…だけどね。と言ったお兄さんに何のことやら?と思う
ここは片田舎、なにもないコンビニは22時に閉まるしスーパーも19時まで、飲食店一つもないのだぞと思いきやお兄さんは指を指した先には巨大すぎる建物があったがよく見ればここは見たこともない場所だ、ただの路地裏でもない
「…あ、あのぉ、ここどこかな?」
「一応パドギワ共和国の天空闘技場の近くだよ」
「どこだよぉ」
「面白い匂いがするし、僕のところに来るかい?服くらいなら遠慮しなくていいよ食事も」
そういわれて怪しむはずの男なのだが、何も気にせずに彼の背後を歩いていれば、隣に立たれ手を取られる
よくよく見れば顔のいい青年で、外人さんってなんでこんなに鼻も高くてきれいな顔をしているんだろうか、そう思えば見つめられ細く綺麗な瞳を細められる
「君変わってるね」
「..いや、あなたに言われたくないけど」
ピエロの格好をしている男なんてそうそう見ないぞ、なんて思いながらついていく先に200何階と書かれているその天空闘技場とやらの一室、道中で買った服を適当に着て男のところにいけばメイクを落として髪の毛を下ろした
こりゃまたイケメンじゃあないか..と思った
「ねぇ、君名前は?」
「リーリェです」
「僕はヒソカ、今日から僕と一緒に住むんだからよろしく」
「...」
まぁここがどこかわかりはしないけれど、言葉はわかるし困ることもないか...なんて思いながら差し出された女顔負けの綺麗な手を掴めば彼は狐のように目を細めて笑う
会社が倒産してれば、何も怒られないだろうな...なんて女は仕事の心配をした、彼女は当分気づかない、世界が変わってしまったことなんて
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