クロロ
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何度目だろうかと冷静になった頭の中で思った、真っ黒だった頭が白くなるような感覚に襲われて地面には赤黒い何かが広がって自分の衣類も汚していた
荒くなっていた呼吸も、身体に突き立てた爪も、怒り狂った感情も全て消えてしまう
「そんな顔をするな、お前の気持ちはよくわかった」
そう彼がいうものだから何となく神様に拾われた天使みたいに救われてしまった
綺麗な女性だったのを覚えている、赤いワンピースに整った顔で赤くキスがうまそうな唇をしているのも、羨ましくてたまらない、自分が幼い子供である故に隣に立てないからと憎くてその人に酷いことをしたと思った
形も失くした人間の前でまるで猫のように激しく息を吐いていた自分を落ち着かせた、もう終わったから問題ないんだと
クロロは私にとっての神様だ
少女はそう思った
このゴミ箱みたいな世界の中で唯一無二の輝く存在、黒い羽の天使様の様に美しく気高く愛おしいとも言えないほど尊く、手に触れれば消えてしまうような人に思えた
「リーリェ」
名を呼ばれ
「愛している」
愛を囁かれる
それが自分だけでいてほしいと願ったのはいつからだろうか、心臓が壊れそうなほど彼を望んで
彼に近づき彼に愛される女を全員憎んで、神様を奪う悪魔達は殺さなきゃならないと誰かが囁いた。
神様は平等でなくてはないないのだと本で書いていたことなど知らぬふりをしてクロロという一つの神に信仰した
「ねぇ、クロロ、クロロは私がいらない?私なんて欲しくない?私は邪魔なのかな」
分からないの。少女は泣いた
大抵そうだった、人を殺した後に泣きながらすがりついていうのだ、愛してると囁いてほしいと願うようにいうのが心地よくて神はその少女の背中を撫でながら地面を見つめる
「俺はお前だけを愛してる、ほらみろ…俺が愛さない奴らはお前が殺してくれる…まるでお前は死神だな」
死神は恋をするのだろうか、ふと少女は思ったもしそれならばその邪魔をするモノを殺すのは自然なのだろうと思えた
黒い神の頬に触れて熱を感じながら見つめた
「お前は俺の美しい死神だ、俺だけを愛して生きるんだ」
愛を餌に生きる花は美しいと神は仰った
生命力に溢れ美しく気高い力を持ちそして、愛されることを当然とする故に堂々としているのだと
それならば神の愛を貰う存在は偉大なのだろうと少女は思えた、天使を凌駕するほどの力を持ち愛を知れるのだろうと思えてしまう、唾を飲み込み赤い水溜りを踏みながら靴を汚す
「私、クロロ以外なんていらない、クロロの世界で生きるから、私以外見ないで」
触れずに見ずに話もせずに出来ることなら空気が混じり合うことさえ憎らしい
でも神のためならなんだって少女は我慢してきたつもりだ、彼に近づく哀れな人間の事以外
神に近づく不届き者はみな人ではなく本来の姿である水に変える
赤い黒い水溜り、鉄の匂いに溢れるそれを見つめて神の言葉を聞くのだ、彼の逆十字に誓いを立てて口付けて
魂の底から彼だけを望みながらも生きるのが何よりも心地よい
「クロロのためならなんだってする、この世界を飲み込むことだって私はできるんだから」
だからどうかたった1人の信者を愛してくれと願い続けた
少女のその哀れな姿を何よりもいとおしく感じた
自分だけを望み自分だけを愛すると誓い自分だけに全てを捧げ自分の為に全てを捨てるのだから
愚かな子は愛おしいと思えてしまうのだ、貪欲に望んでいると思いながらも神の欲深さに気づきもしない哀れな娘
神ではなく悪魔だとも気づかずに、いや、悪魔を神と讃えたのだろうか
「大丈夫だ、俺はお前を愛してるお前の全てを」
魂さえも喰らい尽くすほどに愛してやるからと、そういいながら少女の額に口付けた
あぁ、次はどんな餌(女)を捕まえようか、きっと信者は祈るのだから愛するのだから、もっと歪んだ先さえもきっと彼女は愛するだろう
それ以外に彼女の見える世界など存在しないのだから。
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