04
ここ数日朝から夜までずっと図書室で本を漁っていたがそれらしい情報が上がってこなかった、貴重な血界の眷属の本や異界の伝承の本等もしオークションで売れば価値は随分と高いものばかりだと菊の素人目ながらも察するような古書ばかりだった
両親はあまり家に帰ってこない為屋敷のメイドや執事達だけだというスティーブンは疲れたらしく紅茶を飲みながら大きな欠伸をしていた
「もうそろそろ辞めないの?」
「えぇ、情報を少しでも掴めたらと」
「坊っちゃま、菊様、夕飯のお時間ですが」
「ほらね」
「わかりました今日はここまでにします」
狙ったようにメイドがそう言いにやってきた事に菊は渋々諦めた、まだ1割も読めていない上に狙いの異界品の本も大量にあるためその中からあのアルバムが記載されたものを1冊見つけるのでさ困難だった
広い部屋で二人きりで食べる食事は少しだけその広さに押し込まれそうな程に孤独感を与えた、スティーブンが孤独に強いものだとは知っていたがこういうものだったのか…と菊は何となく察した、兄弟のいない家庭で親もあまり帰ってこずに、ただ鍛錬を時折しながら彼は家に居る
「ねぇ菊、後で庭に行こうよ新しい薔薇が咲いたんだってさ」
「構いませんよ」
夕飯のスープを飲み干してご馳走様でした。と菊は告げてスティーブンの時間が始まる
庭で新しいバラを見て、部屋でチェスをして、カードゲームもして、少しだけ屋敷の中を探索して、風呂はさすがに別々にするようにした
「菊様」
「はい」
「スティーブン様はとても聞き分けの良い男の子でございます、ですが彼も少年…孤独には弱いものですですからどうか大人になっても彼の傍を離れないでください」
初老のメイド長は悲しそうにそういった、菊はその言葉に頷くしかなかった
大人の彼とベッドを共にした初めての日の朝向けられた殺意の籠った瞳は怯えていた、朝を共に迎える人間などこれまでもこれからも居ないと信じていたからだろう
情報の為なら女と寝ることなんて簡単だった、情を移すことは無いようにと警戒していたものがいつかその大きな氷の壁を壊されていたのだから仕方がないことだろう
「菊は本当に僕が好きなんだね」
「そうですね、貴方が居たから私が出来ましたから」
「そうなんだ、ねぇ菊…帰らないでよ」
同じ広いベッドの中で菊の胸に顔を置いて彼は小さく呟いた
まるでそれは罪悪感だった、この時代の彼と出会うべきではなかったと何度も思えてしまう言葉、何も言うことが出来ずに彼の頭を撫でた
12歳の少年だと実感してしまう、どこまで彼を大人に見ても抱き締めて額にキスを送ってやる
「いつか未来で私と出会います…その時は二度と貴方から離れません」
「僕は未来より今がいい」
「…愛してますよスティーブン」
「僕もだよ菊」
寝間着が少し濡れる感覚と彼の鼻をすする音が聞こえて、菊は泣きそうになった
彼と離れたくないと願うのはいつだって菊だったから、翌朝目を覚まして図書室に向かえば1人の男性が立っていたスティーブンによく似た男の人は1冊の本をテーブルに置き菊をみた
「おはよう、芍野菊くん」
「おはようございますお義父さま」
「ふむ、君に言われると嫌な気はしないな…話は聞いているよ」
菊は相手が誰か知っていた、何故なら1度出会ったことがあった為だ家の事情でスターフェイズ家の長である彼を
メイド長達から話を聞いているらしい彼は久方振りの帰宅だったらしく、疲れたような顔をしていた
「君が当たったアルバムはこれだろう」
「…これですね、お手数煩わせてしまい申し訳ございません」
「こんなに本があるんだ、見つけるのも一苦労だろう仕方ない」
では私はこれで。
そういって出ていった彼の姿を追い求めようとしたが扉を出ればもうそこにはいなかった
本の内容を読み解きながら、次に現れるアルバムを開かなければならない、いつか現代のスティーブンとタイミングが被るようにしなければならないと考えながら
「菊…アルバムがあった」
再度本を読んでいた菊の元に現れた幼いスティーブンはそういった。