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そうとはいえアルバムが出現しないことにはスティーブンもライブラも動くことは出来ない状況下のため、仕方なしに仕事をするようにした
他の条件は無いのかとハブレスに確認をしたが無いの一点張りであり、自身でも調べたがそれ以外の方法はなかった運が良ければ早く解除されるが悪ければ難しいだろう、だがしかし原本を持っていたその異界人はどこに行ったのか見覚えのある顔だったのは間違いはない
そしてスティーブンに攻撃をしたくらいならば昔なにかがあって痛めつけられた身だろう
兎に角原本の入手を最優先にチェインやザップ、レオナルドに頼むも、ライブラは日々多忙だった
血界の眷属が出現しなければ次はフェムトが暇つぶしに作った魔獣が世界を滅ぼしかけようとしたり、ザップが女ごとでまた揉めて入院をしたり

「本当にこんなので戻れるのか」

「スティーブン怒らないでくださいね」

「怒ってはいないよ…疲れてるんだ」

菊が居るからと定時には無理に上がらされる現在、ライブラの書類が減らないのは困りものだ
栄養の偏ったものはダメだと言われれば外食を控えてヴェデットに頼み食事も3食用意してもらうようにいった、そんなに日が経つ訳では無いが改善に向かっている様子もない
ただ一つ進歩したのはアルバムを入手した場所だった、アンティーク雑貨と称した異界品販売店でそのアルバムはたまたまあり、内容を知っていたらしい男が買っていったと亭主は言った、調べてみるも店は嘘をついてもいない、どこかと繋がりがある訳でもない白だった
日々の激務とは違う意味で辛くなると思いながらも不安そうな菊には出来るだけ悟られぬようにスティーブンも配慮した
今頃菊の世界はどうなっているのやら…と思いながらもいつも通りの日々を過ごす

何日も共にいれば風呂に入れるのも食事も慣れるものだった、相変わらず服を着るのは苦手なのは洋服をあまり着ることが無いからだろう。
いつどこでアルバムが現れて開くのか分からない、この世界のどこかで毎日アルバムのコピーは現れている可能性もあるがGPSを付けないことには分からないだろう、魔術相手にそんな古風なものも通用するかどうかは定かではない

「おやすみなさい、スティーブン…」

「あぁおやすみ菊」

だから今はどうかこの少女を傷つけない形で守っていかなければと考えながら手を握り眠りにつく
子供体温は暖かくスティーブンを深い眠りに誘う


アラームが鳴るよりも少し早くに目を覚ました、隣にいない少女にトイレかと考えながらベッドの中から出てこれないでいたがふと香る珈琲の匂いに目が冴えた

「誰だ!」

「おはようございます、スティーブン」

そこには一人の女性がマグカップを片手に微笑んでいた
スティーブンは思った、この女は初対面だが知っているあんなに笑うような娘ではなかったが、随分と自分が知るよりも大人になったかもしれないが

「菊ですよ」

「……嘘だ」


どうやら寝ている間にアルバムが開いたらしい
菊側でアルバムを見つけたのだろう、攻略方法を知らない菊が戻るために開いたのかどうなのかはさておき、スティーブンの家のリビングで手馴れたように朝食を作り終えて席に座った彼女は子供よりも子供らしく美味しそうにパンを頬張った

「君変わったね」

「そうですか?昔のスティーブンって本当警戒心高いですね」

「未来の僕も警戒心は薄くない筈だけどね」

「まあ、そうですが私にはそこまでですよ」

「君は僕を知っていても僕と君は初対面だ、警戒しないわけがない」

「幼い私には優しかったのに」

その言葉にスティーブンはもう影響が出ているのかと理解する、パラレルワールドではなく1つの世界の中での過去改変は大事だが身内で起きることであれは気にすることもないだろう
だがこの経験は未来の菊もまた未経験であり、過去の経験のみだと言う
未だ元に戻る気配もないが、足の先から頭の上まで見下ろしてスティーブンは確かに彼女は自分の好みに大きく成長したとも考えた、服装や仕草等は自分に少し似たレベルだとも思えるほどに影響があった

「と言うより君32歳だって?」

「同い年ですね」

「26の間違いだろう、これだからアジア系は…チェインもそうだけど本当わからないものだね」

珈琲の味まで好みそのものだ、と内心褒めながらパンを咀嚼し飲み込んだ
またライブラに説明しなければならないが今回はまだ自分で話ができるだけマシなものだった、風呂も食事も問題無いのであればつもりに積もった仕事が少しは片付くというものであった

「所で君なんで髪の毛短くしたんだ」

「貴方が私に『短いヘアスタイルみたことないよな』なんて言ったから切ってみたんです」

「…君って相当僕のこと好きだよね」

「えぇ勿論、誰よりも愛していますよ」

変わらないあの声で、あの表情で言われるとどうも歯痒く思えてスティーブンは目を新聞に逸らした
菊は楽しそうにスティーブンの顔を眺めながら目玉焼きを口に含んだ。





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