真鍋匠




「────────」

彼女がそう呼んだ途端まるで糸が切れたように本能に従った
人は楔が必要だ、それは時に人を強くする
楔は弱味であり、強味であり、その人の全てと言えるものだ
だからこそそれを失っても、残していてもダメなのだ
彼女の白い肌に手を滑らせ、彼女の唇に噛み付いて、甘い果実のようなその匂いを堪能して、舌を這わせて、声をあげて、自身を埋めて
喰らった、喰らい尽くした、まるで何者にも奪わせないように
彼女の姉に似た右目の2つの小さな泣き黒子を見つめて。


十数年前、彼女と初めて出会った、まだ自分の年齢が言えるか言えないかギリギリの少女はまるで姉の瓜二つのような子だった
最後の肉親であり、血の繋がりのある姉弟、そして誰よりも愛していた、弟として誰よりも目の前の男にも負けぬ程に

姉は決して頭が良いとは言い難く、けれど愚かではなかった、人当たりがよく誰にでも親切で、自己犠牲の精神がある女であった
整った容姿に見た目よりほんの少しだけ低い声細い指はいつだって匠の頬を撫でてくれた
彼女が選んだ男はごく平凡で一般的なサラリーマンであり、人柄も悪くはなくそれなりに交友関係もある経済面に不安定さもなければ調べる範囲では何も問題のない男であり、彼女が選んだのなら認めるしか無かった
大きな彼女の門出を拍手で送り出し作り笑いをした「幸せになってくれ姉さん」と嘘をついて

結婚をした姉と連絡を取ることは無くなった、こちらから連絡をする必要もなかったからだ
だが結婚して数年、子が出来たという報告を受けたものの会うことは無かった…きっと会えば何かが壊れてしまう気がしたからだろう、自身の考えに間違いはなかった
そして子が生まれて数年、姉の電話から連絡があった姉の訃報についてであった
何度か着たことがあるはずの喪服はえらく重たかった、参列しなければまだ姉は生きていると言い聞かせることも出来たはずだがそれを何かが許さなかった、重たい足取りでいった葬儀会場には昔見た男と……姉の生き写しのような少女だった
静かで笑いもしない彼女はハキハキと自己紹介をした

「匠おじさん」

と少女の高い鈴のような声で私を呼んで


あれから…あれから何年経ったことか真鍋匠は考えていた、目の前に跪く彼女があの時の少女だとイヤでも思い知らされる

「匠おじさんもう勃起してる」

彼女の白魚のような手の中にはグロテスクな赤黒い男性器がそそり立っていた、竿の根元を赤い舌がまるでキャンディを舐める様に這わされる
その度にそれは正直にびりびりと反応を示して透明な液を先からまるで涙のように浮かべた

「おじさんのビクビクしてるね、久しぶりにこんな事するの?」

「やめるんだナマエ」

「やめないよ、何言われたってやめない、その為にここに来たんだもの」

「っく」

「汗臭いし、苦いし、酸っぱいし、頭がクラクラしちゃう男の匂い………すごっ♡」

彼女の舌先から唾液が落とされる、まるで蜂蜜のようにたらりと先に落とされたそれが全体を包むように落ちていく、手馴れたように少女の手が塗り込むようにペニスを扱く
嫌な汗が背中に流れ、目の前を受け付けないようにと目を瞑る
そして思い浮かべたのは1か月前の事だった



珍しく"家"と呼ばれるこの場所に帰宅したなと匠は思った、一体何日職場やら車やらホテルやらに泊まり込んだことかと溜息をこぼしそうになる
だがしかし仕事に不満はない、内容は兎も角公務員として大人として至極真っ当な仕事の仕方だ、周りは年々結婚や子供で話題が持ち切りでそれが普通であり聞くこと自体は嫌いではなかった、シャワーを浴びてタオルで髪を拭いていた時だった

ピンポーン

と滅多にならないチャイムが鳴った、警戒心を強くしてモニターを覗けば白い制服に黒い学生鞄の少女がいた

「はい」

そう声を出せば少女は顔を上げた、その途端匠の呼吸は止まった様に思えた
モニター越しに経つ彼女はまるで姉だった、キラキラとした少女の瞳で困ったような少し下がった眉、少し鼻先を赤くして彼女が立っていた

『あの真鍋匠さんでしょうか、私ミョウジナマエと申します…えっと、母があなたのお姉さんでその…少しだけお話させて貰えませんか』

動揺を隠せぬまま彼女を中に通せば随分と外にいたのか手や鼻や耳が所々赤くなっていた、外は寒く長時間いれば当然そうなるだろうと察することが出来た
お茶を用意しつつ男一人の家の中で座布団やクッションなどある訳もなくベッドに腰かけてもいいと伝えるが彼女も礼儀を持っているため床に正座した

「突然の来訪申し訳ありません…でも、家にいることが出来ないんです」

「何かあったのか」

「お母さんが死んでからもう何年も経ちました…それこそ10年以上最初こそ小さい私とお父さんで頑張ってたんです、でも最近のお父さんおかしくて…わ、私もうどうしたらいいのか分からないんです」

「…それは暴力を振るわれたりってことなのか」

彼女は涙を流して首をこくりと縦に振った、痣らしいものは何も見えない女で子供だから見えない箇所にあるのかもしれない証拠さえ出揃えば家族だろうとどうにでもなる。力になろうと声をかけたが彼女は頷かなかった
察しがいいのも考えものだな。と匠は自身の能力にこの時ばかりは嫌気がさした彼女が言えない暴力の種類なのだろう…1番心を辛くさせる特に実父から受けるそれはどうしようもないものなのだろう。

「兎に角今日は遅い、私の後で悪いが風呂でもどうだろうか?もしお腹が空いてるならコンビニでなにか買ってこよう」

そう声をかければ彼女は小さく頷いた、少し安心したような彼女の顔は正しく少女でどうしてこんな小さな子供にそんなことが出来るのかと悪人に嫌悪した
それからナマエはすぐに帰ったかと思いきや毎日ここまで通うようになった、暗かった彼女の顔にも明るさが出てきて元々父子2人の生活だったからか家事はそつ無くこなしてくれ仕事が落ち着いて家に帰ってくることが増えた今は助かるばかりだった。

「匠おじさん昔はもっと可愛かったんだね」

「そりゃあ子供時代は誰でも可愛いだろう」

ナマエが来てからはや2週間、クローゼットの奥にあった家族の遺品の中にあるビデオテープ、姉の生まれた時から結婚式までのビデオを数年ぶりに見た
テレビの前を占領するナマエは本当に姉によく似ていた、まるで生き写しのように嬉しそうに微笑む彼女はまるで映画を見ているようなキラキラとした瞳でいつもは少し大人びた彼女がその時は年相応の幼い少女にもみえて小さく笑みが零れた
どんな企みをされてるのかなどその時は考えもせず

「そろそろ寝よう」

「はーい、じゃあ匠おじさんおやすみなさい」

「こら寝る場所は分けてくれ」

「少しからかいたかっただけなのに」

小さくため息を零せばナマエはクスクスと笑ってベッドから出ていき下に敷いていた布団に入る、おやすみと小さな声で挨拶をして電気を消して目を閉じる
穏やかな日が続くのだと心から安堵した平凡な一般的な幸せと温もり、子供がいたら妻がいたら家族がいたらこんな風なのか…と考えてしまうほど穏やかな日々だった
毎日そんな日々を続けて仕事を帰宅して、そして満腹になり眠気に襲われてその日は夕飯後風呂にも入らず少しばかりベッドに横になっていただけだった


だからこそ

何故なのか

「匠おじさん我慢しなくていいよ、オナニーもしないみたいだからこういうのされると張り詰めちゃうでしょ?」

そう言って彼女はまた竿に口付けた、手が上下に動いて唾液やカウパー液がだらだらと男性器を包むように汚していく
大きな口を開けた彼女の口の中に赤黒いペニスが入る、狭く温かくぬるりと舌が全体に触れる、いつぶりに女にこんなことをされているのか分からない程前のことだ
困惑をしつつ身体は素直に喜んだ

「っやめろ、やめるんだ」

「いやれふ♡」

彼女はその瞳を細めてキャンディを舐めるように丁寧に深く味わっていく、頭に手を添えて少し力を加えれば離せることが分かっているのに身体は何も出来ず彼女の柔らかい髪に触れるだけだった
白い彼女の制服は姉が通っていた学校と同じものだった、似た顔の血の繋がった姪が今は恐ろしくて堪らない
彼女の空いている片手が制服のワンピースの裾にはいって、下着が床に落とされる、淡いピンクのレースの付いた下着
まるで夢なのかと思ったが強く握った拳は痛く血を流した

「あっ、匠おじさん血ぃ出てるよ…仕方ないからこれあげる、好きにしていいよ♡」

ちゅぽんと音を立てて彼女はペニスから口を離して、床に落とした下着を匠の右手に掴ませる、ピンク色の下着は赤く汚れていきまるで生理の血がついたように見えて自身の頭とは反対にまた男根を大きくさせた

「私のこと誰かと重ねていいよ、ああそれとも怖かったら夢だって思ってて」

「そんなこと」

「大丈夫、おじさんと私だけの内緒ゴトだよ」

柔らかい唇が重ねられて生ぬるい舌が唇をなぞった、ダメだと思えば思うほど人は興奮した、この関係に対してこの行為に対してすべてが悪循環だ
くちゅくちゅぱちゃぱちゃちゅぽちゅぽ
沢山の水音が部屋の中を響かせる、わけも分からず仰向けに寝転がって考えないようにと右手で顔を隠そうとすればナマエが渡していた下着が顔に乗る

女の匂い
雌の匂い

やめなければ、このままじゃあ必ず私はこの娘を抱いてしまうと思った、やめなければ、あの日の夢を叶えたくなる、やめなければ、やめなければ

「やめなくていいんだよ」

あの娘の甘い言葉が耳に張り付いた、ベタベタになった指を舐めながら彼女は跨っていた、目を見開いて見つめれば彼女は舐めとったばかりの手で左頬を撫でる
まるで指先でそこに生えた獣のような毛を愛するように

「欲望に呑まれちゃえばいいんだよ、ね?匠おじさん♡」

それが人だと彼女は語って
少女は自身の中に男の物を狭く熱く蠢いた女の腟内に埋めれば情けなく声が漏れた
ナマエの手が胸に触れてシャツのボタンをゆっくりと開けていく、そこいらの中年男性とは違う鍛え上げられた男の身体に彼女はうっとりとした瞳で見つめた、ぎゅうぎゅうっと締め上げた腟内に気をやりそうなほど気持ちがいいのは久しぶりの行為だからか、姪という危うい存在のせいか、はたまた年下の女だからか
姉に似ているからなのか今は分からないでいた
ぷっくりと主張する匠の胸の先端をナマエの指先がまるで音楽でも奏でるように弄びはじめる

「んぅっ♡」

「匠おじさん乳首好き?かぁわいい♡女の子みたいだね♡♡沢山可愛がってあげるね?♡」

「ぁっ♡やめるんだナマエ、やめろっ」

「だめ、やめてあげない♡だっておちんちんびくびくしてるもん♡♡」

避妊具も無しに挿入れたことなどどうでもいい、ただ戻れなくなる気がした、いや確実に戻れないだろう
目の前で微笑む少女は女の顔をして匠にキスをした、舌を絡ませ互いの唾液が口の端から流れ落ちても止めず、その間も男の突起を爪先でくりくりと撫でてやれば彼の声が部屋の中に小さく広がる
興奮したナマエの腟内がぎゅうっとまた一段と強く締め付けてまるで搾り取ろうと必死さを伝える
目の前の女を力でねじふせることなど簡単だ、仕事上そんなことは何度もしたことがある大人も子供も女も男も関係なく"暴"を振りかざした、だというのに目の前のこの娘にだけはまるで金縛りにでもあったように何も動けずに好き勝手にされるだけになってしまう。
それは彼女が姪だからか、幼い娘だからか、ではなくただ姉に似ているからだ

「おっっ♡匠おじさっ、ん♡きもちぃ?」

「はァっ♡ぁ、ダメだ、ナマエ」

髪型も服装も右目の涙黒子も全てが似ていた
ばちゅんっばちゅんっと音を立てて肌と肌がぶつかった、互いの繋がりあった箇所は白い制服のスカートに隠れて見えなかった
まるで狂わされるようだった
ナマエが倒れ込んで見上げながら胸の突起を赤い舌で舐めあげる、その様はどんな女よりも厭らしく妖艶で下品で美しかった
そして耳元に顔を寄せて腰を少しだけ上げた

「大好きだよ"たっくん"」

「あ"ぁ"♡♡♡♡」

彼女がそう呼んだ途端まるで糸が切れたように本能に従った
大きな音を立てて深く腰を下ろしナマエは匠の乳首を軽く引っ張ればまるで彼は玩具のように射精をする
脳みそに電流が走るかのような感覚を感じながら脱力感と心地良さに口の端から涎が流れる
ふと目線を逸らせばテレビがついていたことに今更気付く、古いビデオには幼い姉が映っていた

『だいすきだよ、たっくん』

そういった少女の声に涙が小さく零れればナマエは優しく頭を包み撫でてくれる

「私が匠おじさんのお姉ちゃんになってあげるから大丈夫だよ、ずっとずぅっと一緒に居ようね」

繋がりあった彼女の腟内からは白濁の液体がとろりと流れ落ちシーツを汚した
かつての姉と似たような言葉を吐いて、もう二度と離れられないような気がして彼女の白い肌に手を滑らせ、彼女の唇に噛み付いて、甘い果実のようなその匂いを堪能して、舌を這わせて、声をあげて、自身を埋めた
姉に似た右目の2つの小さな泣き黒子を見つめて。

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