くしゃくしゃの葡萄色
本当男は単純だな。とその時レオナルド・ウォッチ少年は思った
部屋を片付けている際、ゴミ箱から香った除光液とタバコの灰の匂いは混ざって少し目を刺激するようなものだった、部屋の中で所々香るのは確かに彼女がつけている香水の匂い、甘くて高そうな香水の匂いはうら若き少年の胸を刺激した
昨夜を共にした智花という同僚である女性は彼にとって刺激が強くそして魅力的な女だ、はぁっと息を吐いても部屋の匂いは変わらぬままで少しの湿気と甘い香水の香りを残していた
「おはよレオ」
「おはようございます智花さん」
「急に呼び出されたの、ごめん」
目覚めた時にいなかったことを謝りたいのだろう、チェイン・皇の様に口数は多くない彼女は少し眉を下げて謝った事に平気ですよ。と微笑んだ
仕方がないのだ、智花はレオナルドとは違いザップ達同様前線が多い為に有力な情報があったり力が必要であれば呼び出されるのだ
宿無しになるレオナルドに部屋を提供してやった智花は年下の少年である彼を狼の如くペロリと喰いあげた、汚い話あの女好きな先輩いわく智花は「さくらんぼ好き」だとか、噂は本当なのかと思い少なからず嬉しさと悲しさがあったが智花はレオに必死に好きだと伝えた、身体から奪う気はなかったが我慢出来なかったと述べる智花の慌てぶりや赤面やらギャップに難なく落ちた結果が今である
「今日はナポリタン食べたい」
「えー、いいですよケチャップがない気がしますから帰り買いましょうか」
「うん、あ…人参は抜きがいいな」
「ダメですよ、スグ好き嫌いするんですから」
ライブラの執務室のソファでお互いにスマホで出来る最新のFPSゲームをしつつ会話をする、後から混ざってくるメンバーとも会話を程々にしていればスティーブンの声が上がる
「智花少しこれみてくれ」
「はい、今行きます」
これしてていいよ。と自身の個人情報満載のスマホをロックもしないままテーブルの上に置いて行った智花に不用心だと思いレオが手を伸ばすより先にザップが手を伸ばしてスマホを漁る
「こら止めろよ!智花さんのですよ」
「けけけ、彼氏様はいいもんですなぁ智花も浮気の1個2個してんだろーよ」
「そんなわけないでしょ」
「おーかけるか?」
「…別に僕が勝ちますから」
そう言いながらもレオの顔は少しだけスティーブンと並ぶ智花に向いていた、同僚とはいえ智花は26歳で結婚や子供等を考えるのはごく自然な年齢と言えるだろう。
更には自分より身長も高くスタイルもいい、正直な話をいえば自身はあまりなかった
自分が選ばれたことさえ、そんなことも気にしない目の前の男はスマホをいじり倒した後に飽きたようにテーブルに置き直してまたスマホゲームを始めた
「少し出かけてくるね」
智花の声が響くように聞こえて、夕飯には帰ると一言きりライブラにはその日帰ってこなかった、メッセージが来るわけでもなく1人にしては広い家の中でナポリタンの用意をする
料理の匂いと同じように匂うマニキュアのツンとした匂いを思い出して昨夜ネイルが崩れたことに少し文句を垂れていた智花を思い出す
今頃は戦場のような所でいるのか?なんて思いつつも専業主夫の様に食事に風呂に用意を済ませる、いつの間にやら20地を回る頃にようやく家のベルがけたたましく鳴った
「ただいま」
「おかえりなさい」
「ご飯食べた?」
「まだですよ、お風呂とご飯どっちにします…か」
「…レオがいい、レオナルドが欲しい」
玄関で迎え挨拶をした直後に壁に押さえつけられる、興奮したような瞳は仕事終わりだからだろう、少し背の高い智花を見上げるようにして頭に手を乗せて撫でてやれば猫のように気持ちよさそうに目を細める
「お疲れ様智花、後で沢山構ってあげるから今はご飯にしような」
「…うん」
智花は兄のような顔を見せるレオナルドも敬語を話す外でのレオナルドも好きだ、小さなその体で走り回り足掻き頑張る姿は何よりも勇気をくれる
好きにならないわけがなかった、向かい合って食事をする度にこの人に出会えてよかったと思った、嬉しそうに見つめられては顔に穴が開きそうだ
全てを平らげれば同じ湯船で体を温める、癖のある彼の髪は濡らせば半分程になっていつもそれが面白かった
「やっぱネイル失敗してる」
「乾ききらない間にやっちゃったから」
「じゃあ後で俺がしてあげる」
そういったレオに風呂上がり手を引かれてソファーに座らされる、沢山入ったマニキュアの中で葡萄色を手に取る、指の上でクシャクシャになったり色のムラがあったり剥がれていたりと喧しいネイルは除光液含んだコットンにより消えていく、つんとした匂いにまたレオは少し興奮した、女の人と生活をしてるのだと認識するからだ、妹のネイル姿はそういえば見た事ないな。なんて思って相手の顔を見れば嬉しそうに爪先を見る
「そういえば智花さんスマホロックしてた方がいいかも」
「なんで」
「個人情報だし、今日もザップさんみてたから」
「…私、レオのことしかスマホの情報全くないから平気、仕事のは別に持ってるし」
あれはレオとゲームしたり、レオの写真撮るためのスマホなんだ。なんて風呂上がりのせいかぽわぽわとしたように話をする智花はまだ塗られていない左手でスマホを操作して画面を見せた、ホーム画面も連絡先も画像フォルダも全て自分だけだと見せられたおかげでマニキュアの筆から落ちた葡萄色のネイルは白いソファーカバーを汚した、慌てふためくレオナルドに対して智花は落ち着いた声でま彼の名を呼んだ、顔を上げた途端に唇を奪われる
「今日もネイル上手く出来ないみたいだね」
「えっ!あっ智花さんあの」
「嫌なら、ほら眼を使ったらいいよそうじゃないなら」
恋に溺れるなんて考えたことは無かったがその通りだった、結局マニキュアごと倒れてカバーは買い直した、スマホは流石に彼女の言葉に問題なくとも寝顔や着替え姿なんて色々ありすぎて流石にロックは掛けさせた
次の日彼女は同じベッドで眠っていた、思わずその寝顔を撮影すれば間違えてフラッシュがたかれていたが起きる気配もなく彼女は心地よさそうに寝ていた、指先はやはりクシャクシャになった葡萄色だった。
_top