似た者
女というものは流行に対して敏感であり、人間として基本的に皆美しいものが好きだ、たとえ中身がどうあれ強者であり流行であり顔もそれなりに良ければ女が集まらないわけが無い
独歩と付き合い初めてデートが出来るのは月に一度あればいい方で智花がルームシェアをする独歩の家で家事をして一晩過ごして帰ることが多かった、そんな仲で2人で外でのんびりと買い物をしたり出掛けたりできるデートは貴重で智花は重要視した
トップクラスのブラック企業で働く社畜彼氏がゆっくりしたいハズの休日に誘ってくれるデートはたとえ休みでなくても有給や嘘をついてでも休みにしてしまう程には嬉しい
だがここ数ヶ月は穏やかなデートは木っ端微塵に消え去った
新宿ディビジョン 麻天狼3番手 MCネーム DOPPOこと観音坂独歩 それは流行最先端の渋谷ギャルどころか日本中で知られる男になった、元より有名な神宮寺寂雷や伊弉冉一二三は前より人が増えた…程度だが独歩はただの一般人だ、性格のせいもあるために女性は近づかなかったものが今では若い女性なんてものは怖いもの知らずで外に歩いている仕事中の独歩を止めてまでサインに2ショットに大忙しだった
『日曜空いてるならデートしたい』
簡略的な文章に嬉しさが募る木曜日の夜中、今頃電車に揺られてるのだろうか…等と考えながら次のデートの服をどうしようなどと言うことだけが頭の中を占める
仕事も代表としても彼は忙しい、会えるだけでも嬉しくベッドの中で考えていた
そんな楽しさは当日消え去った
仕事に奪われるのはまぁ気にしない、それはよくある事で仕事を優先してしまうのが悲しい社畜の運命だ、だがしかし今の現状はあまりにも嬉しくないものだ
「DOPPOじゃん!」
「サインしてください」
「かっこいいー写真撮って!」
その日は映画に見に行こうと向かっていてればそんな簡単に行けるわけがなかった、姿を隠すわけでもなく私服姿の独歩は珍しい上に彼は自分の性格のせいでに気づかないだけだが、思いの外顔が整っている幼馴染と比べても引けを取らないのに彼はそれに気づかない
そして今をときめく流行りの人だ、囲まれないわけがなかった
「智花ちゃんごめん俺みたいなゴミのせいでこんなに事になるなら家にいればよかった本当にごめん」
「…別に」
結局映画に行けず、智花の家に戻ってきて独歩はずっと謝っていた智花もいい顔はできなかった座椅子に座って有料サイトの映画を流すだけだった、入れてもらったはずのミルクティーは既に冷めていて智花はどうしようもない気持ちになっていた
「こんなのなら出場しなかったらよかったのに、いつもそうだ智花ちゃんの優しさに甘えて俺はクズだからその優しさが気持ちいいから好き勝手しやがってるこんな俺なんか死んだ方がそうだその方がいい」
「待って待って!おかしいよ」
ネガティブモード最高潮を迎えたのかついにキッチンに行こうとする独歩の腰に抱きついて自殺しそうになる彼に大声を出して制止た
独歩は悲しそうな顔で腰に抱きつく智花をみつめた
「俺が死ねばこんな悲しい目に智花ちゃんを合わせないし、こんな事なら俺からデートしようとか」
「そこまで言って欲しくない…別に独歩くんがあんなのになったのが嫌じゃないし」
「じゃあどうして怒ってるんだよ」
「…女の子にモテるようになったから、それまでみんな独歩くんなんか気にしなかったじゃんか」
小さく呟いた言葉に独歩の顔がみるみる赤くなる事に智花は恥ずかしくなっていく
「智花ちゃんそれって」
この人って本当言葉を求めるなぁなんて思いながら智花は腹を括った
「そうだよ、嫉妬だよ子供みたいに今までもずっとかっこよかったのに知らないにわかファンが君の可愛さとかかっこよさとか知って囲むのがムカつくんだもんデートだって無駄になるし、私せっかく可愛く努力してるのに囲む女の子私よりもっと可愛いしそんなのだといつか独歩くんが他の人に取られるかもしれないじゃんか」
一般人だけでなく有名人だって知ってる彼らに対して手が伸びてこないわけが無い、宙をさまよう智花の手を取って独歩は顔を見つめた
恥ずかしくてあげなかった顔を独歩に向ければ顔が近づいて唇が重なるゆっくりとその大きな舌が入ってきたことに驚きつつも受け入れギュッと独歩の手を強く握った
「はぁ死ぬかと思った」
キスをし終えたと思えば独歩がそういうものだから思わず?を浮かべれば頭を抱えて、身体を強く抱きしめられた
「結婚しよう智花ちゃん、俺みたいなゴミが智花ちゃんみたいな完璧な人に好きでいてもらってるのは今しかないからこの最高潮を味わった上で俺死ぬから、いや死ぬのは俺じゃなくて邪魔してくる奴らだなうんそうだ、今後そうならないようにやるし次同じことになったら殺すから大丈夫」
「独歩くんそこまでしなくていいよ、でも少しだけ、少しだけ、独歩くんの時間が欲しいだけだから」
恥ずかしいことばかり言ってる気がして顔を見れずに彼の胸元に顔を埋めたいい歳して他の人間に嫉妬を抱くなんて子供だと思ってしまう、独歩が気にしなくても自分は気にするなんて智花が思っていれば頭上の独歩はこれでもかと幸せそうな顔をしている
「智花ちゃん…えっちしよう」
「は?えっえっ本気で?」
「レイトショーで映画行こう好きなご飯出前で頼むし明日はぜってぇ休むからお願い」
仕事を休む、あの観音坂独歩が?智花はその言葉だけで彼の要求を飲んだ、その言葉どおりに夕方までグダグダと過ごして2人して変装のようなことをして歩き出した新宿の街が楽しく外で出会ったホストモードの一二三に笑われるのはベッドの中に落ちた2人には想像もつかない。
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