ドキドキが止まらない

爆豪勝己はこの世の中でもプライドが高い男だ、努力家で才能マンで天才形の彼を認めない人間は居ない
それは性格がどうであれ彼の力は目に見て分かることだからだ、怒鳴りつけて口汚く味方であろうと言う彼の不器用さは今更である、だからこそ爆豪少年は自分の気持ちにどう説明したらいいのか出てこなかった

「おはよう勝己くん」

隣の席の和泉智花は同じヒーロー科の生徒だ、特別顔がいいわけでも胸があるわけでも性格が良すぎる、訳でもなくて平凡過ぎる彼女に爆豪は惚れた
入学式の日、自販機の下に落とした500円玉を必死に拾おうと手を伸ばす彼女の背中を見て惚れた
その様はもう他人がみて、どう考えても爆豪が和泉という少女に恋してるのは分かるほどだ

「おー」

「昨日勝己くん教えてくれたようにねクッキー作ったら上手くいったの、だからその美味しくないかもだけどよかったら」

「ンなもん食うに決まってんだろが、寄越せ」

ゴソゴソと鞄の中を漁った智花は小さく可愛くラッピングしたクッキーの袋を爆豪に差し出せば早速ひとくち食べる彼にドキドキしながら智花は感想を待っていた
料理もお菓子作りも苦手な彼女は器用な彼にしっかりと聞いたとおりに作り上げた、味こそ違えど失敗はしなかったつもりだと自身で思いながら隣の席に座る

「うめぇよ」

「本当?爆豪くん優しいから嘘言ってない?美味しくないんじゃ」

「くだらねぇ嘘付くかよ、つうか名前で呼べや」

「あっ、えっと勝己くん?」

「ンだよ」

「また作ってきたら食べてくれる?」

「たりめぇだろが」

そう言ってくれる爆豪に智花は何処までも嬉しくなって微笑んでいれば騒がしいチャイムの音が鳴った
授業を聞きつつも隣で船を漕ぐ智花を軽くつついては起こしてやる、時々声を出す彼女は面白くなってしまう真後ろの席で良かったと互いに思いながら授業どこまで進んだ?と聞いてくる智花に指差しして教えてやった

智花を好きだと確信したのはクラスが同じ時だった、自販機の下を必死に手を伸ばす彼女を正面から見て好きだと確信した、運命等というチンケな言葉では表せれない程に彼女の姿は爆豪にとって全てを変えた
そこから猛アタックをしても気づいもしない智花にまず名前呼びを意識させるも仲のいい友達程度で終わった、時々荷物を持ってやっても優しいくらいで終わる、いっその事素直に言うのがいいのかと考えながら悶々と生活をまた送る

「ねぇねぇ智花ってさ、爆豪とどうなのさ」

「私も知りたい」

「えぇ、何も無いよ?勝己くん優しいし多分私みたいな何も出来ない奴の事心配して世話焼いてくれてるんだよ」

「そんなことないと思うわよ、彼他の所に名前呼びとかあんなに優しくしないし」

ヒーロースーツに着替えながら女子更衣室内でみんなでそんな話をする、智花は確かに出会った頃から爆豪は優しいけれどそれは誰に対しても同じだと言うのにみんなは分かっていないのか。と認識した
名前呼びも親しさを出すためだろうし、荷物を持つのは優しさ、お菓子作り等は彼自身が得意だからだろう、智花はいつも通りヒーロースーツを着てそう考えた

「私みたいな子、勝己くん好きにならないよ」

たまたま偶然でヒーロー科に入学したのだから、と智花は時折みんなに言う
彼女は自分の個性に自信が無い、対象のものの場所を移動させる能力は彼女が手を叩けばその決まったものは自由自在に場所を移動させることが出来る、けれど半径16m以内というデメリットなども小さくあるがどうしてもその能力を自分で強みには感じられずにいた
だからいつだって彼女は他の生徒よりも卑屈なのだ
正反対の爆豪は派手でヒーロー向きなその個性をモノにしているのがこれまた羨ましかったしそんな彼に優しくされると勘違いをしそうにもなった

「ごめんねいっつも」

「気にしてねぇよ忙しいんか」

「全然、帰ろっか」

学校終わり、隣駅だから帰りは駅まで送ってくれる爆豪に智花は感謝した、転けないためにと繋がれた手も全て嬉しいが勘違いの要因になる
好きなのでは?と実は何度も思ってはしまったが自意識過剰すぎだと感じた、爆豪は完璧で優しい当然女の子相手ならこんなものなのだと言い聞かせて押さえつけた
だから手汗を気にしたし智花はいつだって爆豪の気持ちを理解は出来ないが胸はずっとうるさく鳴り響く

「お前明日食いたいもんあるか」

「お菓子?」

「なんでもいいわ、好きなんいえ」

「じゃあお弁当欲しいな」

「明日持ってきたらシバくからな」

きゅっと強く握られた手にクスクスと小さく笑う、駅に近づく度に明日も同じように帰れるかな?なんて思う
電車の中で止まらないドキドキを必死に家に帰るまでに整えようと毎日した

「あ、明日も帰れるかな」

「当たり前だわボケ、おめェが嫌だっつっても帰ってやるわ」

その言葉に思わず微笑めば呆れたようにも彼は優しく微笑んで頭を撫でた
だからもう少しこの気持ちに知らないふりをしていつか勇気が出た日には彼に聞いてみようなんて思って手を離した

「智花」

改札に入ってすぐに名前を呼ばれ振り返る、駅は人が少ない為に止まっても誰の迷惑にもならない

「俺様がしてやるのはてめぇだけだわ、それくらい分かれや」

「…そ、それってその」

「おー、好きに受け取れ明日の昼飯に答え聞くからな」

慌てふためく智花を置いて爆豪は背中を向ける、ドキドキを止めるどころかその日から智花の胸はうるさいくらいに毎日悲鳴をあげ始める。

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