推しにお金を注がせて!


『はい、山田様宅の今月のご請求分はいただいておりますので』

「そ、そうですか」

「にいちゃん、こっちも!」

「いち兄こっちもです」

リビングに2人の声が響いた、長兄でありこの山田家の大黒柱山田一郎は頭をううんと唸らせてテーブルの上にある複数枚の公共料金等の明細書を見つめた
犯行に気づいたのは3ヶ月前近くから、その月の公共料金の引き落としが何故か無く、何かあったのかと思い連絡をしてみれば先程同様に支払っているので問題ないです。と言われる始末
払った記憶もなくそれを利用先に言うも支払われてるものを返金等はできないの一点張りで支払い者も分からないように上手く隠されているようでそちらについても不明のままだった

「公共料金、携帯代、ネット代、カード代全部ここ4ヶ月払われてる…それ以外別に何も無いし」

「警察への被害届は」

「こんなの警察に言っても無駄だよバカ」

「ンだと?馬鹿って誰に言ってやがる」

「こらお前ら喧嘩するな」

2人の頭を軽く小突いて目の前の明細を見つめた、毎月そんなに安くない金額を払う匿名の誰かに少なからず検討は着いていた
2人が寝静まった夜に一郎はタンスに入れている通帳を見て、数ヶ月浮いたそれなりのお金に困った顔をした
カレンダーを見つめた後にスマホを見直しベッドに入り目を閉じた

「智花さんですよね」

翌日の事だ、依頼人和泉智花は萬屋ヤマダのお得意さまで月に数回買い物に付き合う
横浜勤務のOLだと言うが実際依頼人を疑う訳では無いが羽振りの良さは並大抵のOLでない事は若い一郎でもわかる事だった
出会いは依頼人よりもあの左馬刻の良き友人として出会ったのだからその時点からOLとは考えにくかった、実際名刺には取締役代表等長い肩書きが延々と綴られていた
一郎の問いに智花はビクッと肩を震わせつつ近くにいたメイドさんに恋のミックスジュースを頼んだ、今いる店も決して安くはないメイド喫茶だ、上品と高級感を売りにした店は秋葉トップクラスの喫茶店だろう

「な、何がかな?」

「とぼけんなよ、ここ数ヶ月の家の公共料金とか全部おかしい」

「おかしいって?」

「引き落としとか俺たちが払う前に毎回払い終わってる、おまけに支払い者は完璧にわからなくなってる」

こんなの出来るのは智花さんだ。
一郎のオッドアイがキラキラと光る、お待たせしました〜恋のミックスジュースでーす♡なんて可愛い顔のメイドさんが言って恋のメロメロビームを撃ってくれた、目の前の智花は嬉しそうにメイドさんに微笑んでありがとう。なんて手を振ったそれでも一郎はいつもの楽しさよりもこの話の重要さが大事だった

「智花さん、ですよね」

「えっえー、仮にだよ?仮にね私が払ってたとしてもそれはいい事なんじゃないかなぁ…な、なーんて」

「ダメっすよ、俺たちガキじゃねぇし…いやガキかも知れないけど自立してるしこれなら何のために仕事してんのかってなるじゃないですか、でどうなんですか白状してください」

「…わ、私です」

まるで捨てられた犬のような顔をする智花を一郎は正直とてつもなく好きだ、優しくて楽しくてオタク的で話の合う人と出会ったのは初めてだった、TDDやラップをする自分ではなく個人の山田一郎として見られることは嬉しかった
だがしかし智花は悪い癖がある、それは何でも金を出そうとすることだった

「一郎くんも分かるでしょ?推しには苦労なく生きて欲しいし幸せになって欲しいよ」

だから私MTCじゃなくてBusterBros応援してるし…左馬刻くんには凄く悪いけど。なんて言う彼女はたしかに申し訳ない顔をしていたそれもそうだ左馬刻とは昔からの幼馴染だと言うほどだった仲はいい方なのだろう、仲違いしたあとも智花はずっと中立で居てくれたほどだ

「分かりますけど、流石にやりすぎって言うか俺達も困惑します」

「…ごめんなさい」

「反省したならいいっすけど、これ一応わかってる範囲だと4ヶ月分位なんでお返しします」

「だっだめ!そんなの無理私死ぬから」

「何でですか、受け取ってくださいよ」

「嫌だよ推しに金を上げるのは嬉しいけど貰うなんて言語両断」

5分ほど言い合っても受け取らない智花に痺れを切らして一郎はため息をついた事に智花は流石に飽きられたのかと肩を揺らした
いつも怯えたように顔色を伺う彼女に弱かった、小さくため息をついて一郎は椅子から立ち上がる

「じゃあこれから智花さんの好きな物買いに行きましょう、これは依頼じゃなくて俺からのお誘いってことでどうっすか」

「っ!うん是非!」

やっぱりこの人には敵わない等と内心ため息をついて店を出た、左に立つ彼女に何買いますか?と聞けば取り上えず公式ショップに行ってBuster Brosのグッズ全部だね!と語る彼女にツッコミを入れるまで1分はなかったが惚れた弱みなのか強く言えずに結局一部のみ買わせてもらい店の中のグッズは根こそぎ彼女の手の中におさまりを見せたのだった


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