Cinderella


この街で子供一人で生活をすることがどんなに困難なことかを彼は理解していた、だからこそ"援助"してやった
ほとんどスラムと変わらない治安の悪いその街の特に悪いような一角に彼女はつまらなさそうに立ってスマホを弄っていたかと思いきや顔を上げて、普通でないはずのその男に声をかけた

「3.5でどう」

「自分の価値がわかってるのはいい事だ」

男はそう言って彼女を連れ歩いてやった、聞けばまだティーンエイジャーでハイスクールにも通っている歳だった
親戚含め両親もすべて街が変わった時に死んだと語り、それが嘘でも真実でもスティーブンにはどうでも良い事だった
智花と名乗った彼女を彼はいたく気に入り暇な時間ができた時には家に呼んだり、食事に連れて行ったり様々なことをした
勿論多忙な彼は頻繁に彼女を連れてやることは無かった為に彼女のスマホも震える回数は少なかった

「僕以外には会うなよ」

「えっちょっと嘘でしょデータ消したの?」

「当たり前だろ、知らない汚い奴と穴兄妹になるだなんて気持ち悪いだろ、それに君の客の中で思った1番太客で良客だ、文句ないだろ」

「…文句あるよ、私のお給料は!」

「それなら毎月の分を今の2倍…いや、3倍にしてやるさ」

「本当?ならいいや、契約は今からね私は他の客を取らない給料は4倍ね」

ガキの癖に変に商売上手だな。なんて思いながらも心底スティーブンは彼女を気に入った
色っぽい体の割に子供じみた顔をしているのがまた不釣り合いな気がして楽しかった、ベッドの中のトークは上手くなくても表情だけで男を持ち上げられる才能がある
16歳から彼女がゆっくり成長していく姿を見るのは楽しかった

「結婚しないの?」

「仕事が忙しいからな、別に結婚しなくても人は生きていけるさ」

「ふぅん…というかロリコンなの?」

「ブッッ馬鹿な事言うなよ、何処をどう見てそんなこと言えるんだか」

飲んでいた赤ワインを思わず吹き出して慌てて口を拭う、楽しそうに彼女の瞳が細まって笑う
もっと歳を重ねればきっと彼女は今以上に美しくなることだと確信していた、だが別にそんなことはどうでもいい摂取する側される側という違いだけで2人は恋人でも親子でも何でもない、ただの客と売り子なだけ
だから遠慮もあまりない、出会って1年半が過ぎれば何となく彼女がわかる、金遣いは悪くないが人にたかることが好きで強請るのが得意、いつの間に彼女の身につけてるものはスティーブンが負けて買い与えたものばかりになっていた

「じゃあ、私が好き?」

シャネルの唇が弧を描いた、そこだけ見たらまるで大人で取引相手のように見えてしまうのに少し目線をずらせばその濃いメイクの下の年相応の少女の顔を思い出してしまう、カルティエのむせ返りそうな香水の匂いに包まれて2人してベッドの海に落ちるのは何度目か、先程見ていた赤い口紅をつけた唇が色を落として色っぽく輝く
服を脱ぎあっていつも通りにしようとしたのに彼女の細い手がそっと胸元を押してくる

「もうこの関係終わりたい」

智花はいつの間にか19歳になっていた、学校を卒業して大学生になるのだと言う彼女は医者を目指していることを知っている
両親は死に、親族は生きているが1人生き残った彼女を不気味がって引き取らず、多額の借金を彼女名義でしていたことも、全て知っていた、そして隠れてそれを全て返してやり縁を切ってやった
この街で調べて分からないことなどきっと無いだろう
智花は利口な少女だ、脱ぎかけていた買ったばかりの紺色のドレスを気直してベッドから抜け出そうとした彼女の手首を掴んだ

「お金は、君の将来は」

「お金ならもう充分、奨学金だって貰えてるし不自由なんてない」

「だとしても」

「本気になったらダメだよスティーブン」

私たちは恋人じゃ無いよ、まるで母のように優しく叱り付けるような声色で制した彼女にバチンとまるでピアスの穴を開けた時のような音がどこかで聞こえた
泣いて喚いてまるでヴァージンの女のように拒絶した彼女に何度も己を打ち付けた

「なぁ…智花、僕を置いていくなんて許さないからな…」

彼女の白い胸元でそう呟いた、これが恋だと言うならばどうして初めに気づかせてくれなかったのか、そう思っても回答は得られずにただ1人大人になった彼女は頭を撫でて「2人で本気になったら依存するだけでしょ」なんて分かったような口を利いた。


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