朝日は酒に吞まれ往く
酒には飲んでも呑まれるな、等という言葉が過ったのは目覚めてすぐだった
前日何をしていたかと聞かれれば記憶が半分無いような気がして彼女は頭を抱え隣を見た、何度見直しても変わらない人物に智花の口からは心臓が飛び出しそうだった
「んぅ…」
低くセクシーな声を出した人物がまだ、まだあのエリオット・ウィットならばまだ2割は納得が行く、例えばオクタビオ・シルバでもまだ納得は…したくはないがするだろう、だが現に横にいる男は有り得もしないあの"クリプト"である、別名:キム・ヒヨンとも言うが基本彼はクリプトという名前にしか反応を示してくれない辺り好きでない名前なのだろう。
そんな下らない話はさておき、目覚めた智花は思わず被っていた布団の中を見たそして後悔をした2人とも素っ裸である、服はまるで事後だと言わんばかりに部屋の中で散り散りに置かれて床には空っぽのビール缶さえ転がっている
「よし無かったことにしよう」
誰にも聞こえない声で小さく呟いたそうと決まれば智花は服を早々に着替えた、というよりこの部屋は何処なんだと聞きたかったが中身を見る限りミニマニスト並に必要物しかなくシンプルなものばかりの為にクリプトの部屋だろうと予想する、そうなれば昨日の会場からあまり遠くもないか…と思いつつ全てを身にまとってから部屋にある缶やゴミを袋にまとめて片していく
「にしても昨日の記憶が何一つないのはなんでだろ…ってそんな事より早く出よう、お邪魔しました〜」
最後にドアのカギは閉められないがレジェンドなのだからそこいらの一般人如きには襲われても困らないだろう。等と考えて部屋を出ていき歩いていく目指すは昨日のパーティ会場だ
昨日は仲の良いメンバー等でミラージュの持つパラダイスラウンジでパーティを開いた、うるさいくらいの音楽と酒に酔ってはしゃいだ珍しく来てくれた同じチームであったクリプトにミラージュと絡んで鬱陶しがられたのも記憶にある
歩いて20分程が立てばCLOSEと表示を出しながらも中は滅茶苦茶な状態の店が見えてドアを開ければ朝からロボットが一体掃除をしている
「おはよう智花、調子はどうだい」
「おはようパス最悪だよ、私昨日何してたんだろ」
「確か酔い潰れてクリプトも帰るからって2人で帰るってなってたよ、そういえば彼は」
「エリオットはどこ!エリオットっ!」
「2階で寝てるよ」
まるでアドレナリン中毒者のように彼女は走って2階に行って寝ている男を叩くように起こした、相変わらず下着1枚で寝てるこの男に今更恥ずかしさ等はないが智花の頭は混乱していた
「おー揺らすなよ久々に昨日飲み潰れて」
「私!昨日!何してた!」
「ん?確かえー、みんなでそうウィスキーのショット飲み対決したんだよ俺とクリプトと智花で優勝者同士でな」
「それで?」
「で潰れて俺も酔ってたらクリプトが帰るって言うから私も〜って言うもんだから2人して帰って…ってまさか、そうかぁお前らがなぁ」
ニヤニヤ笑う彼に目を丸くして智花は思わず帰路に付く、今後は自分を抑えなければと考えつつ家に帰ればそんな事も知らずに明日のゲームの招待メールが届き、更にはメンバーはデュオマッチにてクリプトと2人と来てしまった為に思わず深いため息をついた拒否をしたい気持ちもあるがこれを拒否すると余計に勘違いされそうな気持ちになりOKと二つ返事を出す
「まだ酒が抜けてないのか」
彼の黒髪がサラリと揺れて長さの違う右側の前髪の奥から少し特徴的なスラリとした瞳が見え思わず持っていたスピットファイアを強く抱きしめる
「流石に抜けたよ、クリプトも結構飲んでたけど次の日平気だった?」
「あぁ酒はそんなに弱くないからな」
「そうなんだ、私全然記憶なかったから迷惑かけてたらごめんね?」
「記憶にないのか?」
「え」
思わずクリプトの言葉に顔を上げれば彼は心底驚いた顔をしていた、その様な反応を見せられれば人間誰でも勘違いしてしまいそうだ
少なからず自身は彼を悪くないと思っている気持ちがあるのだから当然だろう、遠くで銃弾の音にリング縮小のアナウンス等が流れていくラウンド3の安置の真ん中で思わず2人して顔を見合わせる
「私やっぱり変なことしてた?」
「やっぱり?あぁ俺の服に嘔吐したな」
「えっ嘘ごめんなさい、悪気なんかなくて」
「分かってる、だから近くの俺の家で一旦水飲むって話になって連れてったんだ」
そうすれば話の辻褄が合うでは無いか!と智花は漸く納得をして安堵した、この男がそんな関係を持つわけが無いのだから勘違いだと完結した時だったふとクリプトは自身のこの試合で指定された衣装の首元をみせた
「好きだ、なんて嘘でも言うから同意の上で俺達はセックスをした、どうだ?思い出したか」
その首にはしっかり沢山の赤い痕がついていて、まるでパズルのピースでもハマった様に頭の中の欠如していた記憶が戻る
そうだ、彼の大きな背中に必死に手を伸ばして彼の刈り上げた髪の毛にしがみつおて、薄いその唇に噛み付いたその熱を思い出してしまい思わず持っていた武器を床に落としてしまい急いで手に戻そうとする前にその手の上に大きな手を重ねられる、普段目もみて話もしないような男がはっきりと瞳を見つめた
「一夜の過ちだなんて俺は思わない、今日チャンピオンになったら今度は2人で祝おう、勿論俺のベッドの上で」
この男がそんなセリフを吐くとは思わず顔に熱がぎゅっとこもった、返事をする前に彼は背後にいたであろう敵を簡単にディボーションで打ち倒して楽しそうに口元を緩めた、答えを出すことなども出来ずに仕方なくやってきた部隊を壊滅させることしかその時の智花は出来ないのだった。
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