Eyes Wide Shut

初恋をよく覚えている、小さな頃まるで電流に当たったような痛くてけれど病みつきになってしまうような感覚
悲しみは忘れられない、彼女に好きな人が出来た時も彼女の愛する家族が亡くなった時もよく覚えていた

APEXのチャンピオンになりました

画面の奥でそんな音が聞こえて顔を上げれば太陽のような彼女は名前なんか仲間に囲まれて笑っていた、パタパタと駆け足の音が聞こえてきて持っていた携帯端末から顔を上げる

「お待たせ智花」

「気にしなくて平気よ。ほらヘルメット」

「メルシー、もうクタクタよ」

「お疲れ様なナタリーには今日はご褒美あげなきゃね」

大型バイクに乗って智花の背中にぎゅっと強く抱き締めたのを確認してエンジンをかけて走り出す、今日も少し銃の匂いやいつもの柔らかい匂いに混じった電気の匂いがした
ナタリーは今ではAPEXゲームに欠かせない有名人だろう、愛想良く若く可愛らしく人々に愛されるキャラクターは誰も飽きさせず彼女の頭脳は他の誰にも追い付けやしない
幼馴染でありながら智花も彼女の脳みそは分からないものだった、ただ一つ家族や友達を誰よりも深く愛しており大切にしている事だけは変わらないことだろう

「智花、またタトゥー増やしたのね」

「あー少し前かも」

「ここだけ?」

試合疲れの彼女為の夕飯作りをと思いラフな格好で支度をしていれば、先にシャワーを浴びたナタリーが背後から背中を撫でるその言葉に確か先週あたりに入れたかと思い出した、左肩に入れた大きな足のないうさぎのタトゥーから指でなぞる幼馴染の正面を向いて両頬を掴み唇を奪う

「んっ…」

「我慢しなきゃお腹空くのはナタリーでしょ」

「でも最近構ってくれない、愛想が尽きたの?」

「そんな訳ないでしょ馬鹿なこと言わないの」

「…好きよ智花」

まるで子供のような顔をして彼女は呟いた、彼女が好意を伝えたのは家に来てスグだった、父を亡くし塞ぎ込んでいた彼女を慰めていたときのある日の夜同じベッドで眠るようになっていた際に彼女は突如服を脱ぎキスをして泣きながら
ごめんなさい。と一言呟いた彼女をシーツの上に抑えて何年も隠していた欲望をぶつけたナタリーは賢い女性だった
次の日も何も無く彼女は親友として接して、あの"家族"達に誘われてゲームに参加してしまった

「拗ねないでってば…別に嫌いじゃなくて嫉妬してただけなんだからさ」

「嫉妬?」

口の中いっぱいにパンを詰め込んだハムスターみたいな顔をした彼女が目を丸くした、宝石のようにキラキラ輝く瞳はいつか誰かに奪われそうだ
白い肌に綺麗な金髪、天才なのに少し抜けていてセクシーな見た目もしている、全てが魅力的であり。
あのゲームに参加をすればそんな彼女にみんなが夢中になるのは当然の事で人に好かれる彼女を自分だけのものにしたかった

「ナタリーが綺麗でかっこよくなっていくから」

最後の一口を食べきったナタリーが席を立ち上がり逃げるようにリビングのソファーに座りテーブルの上のタバコに手を伸ばそうとするがいつも智花には分からない、電気を弄る手が智花の手の上に乗り膝の上にナタリーが向かいあわせで座る
顔を見ることも出来ずに少しだけ下を向いていれば優しく顎を取られて目線を合わせられる

「ねぇ智花」

まるで赤子に声をかけるように優しい声だった、心底嬉しそうな顔をする彼女に狡いと思えた、一方的な片思いでありあの行為は2人の寂しさを埋めるだけのものだと感じていたから
愛していると何度言ってもそれは友愛だと信じていたからだろう

「Seulement toi」

「どういう意味」

「ふふ、愛してるって意味よ」

そういって彼女は服の裾に手を入れる、恥ずかしさを隠すためにテレビを付ければまた懲りずにAPEXゲームの再放送がしていた
画面の奥に映るワットソンがキラキラと笑った
それを見たナタリーが目を合わせてギラギラと獣の目をする、この瞳だけは誰にも譲りたくがないと思い小さなその唇に噛み付くようにキスをした、少しだけピリッとした感触を感じたのはきっと電気のせいだろう。

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