嘘も方便

ただの遊び心であった、普段絶対そんなことをしないであろう人物である彼女がしたらきっとあの男は気づかないだろうと、仮に気付いても彼女の冗談なら許してしまうだろう。なんて同僚は言った

「君は和泉智花、僕の婚約者であり僕達はもう時期結婚するんだ今日は職場に退職の届け出を出す予定で来たんだがこんな事になるなんてな…」

困ったように濃い黒眉を八の字に下げた彼は今しがた初対面のように自己紹介をした後にそう言った
そこで部下兼恋人であり問題を発生させた元凶の智花は目を丸くした、始まりは今から数日前智花はその日珍しく同僚のザップと酒を呑みながら近頃の組織についての話や彼の女性の話を聞いたり話したりした

「番頭と進展しねぇのかよ」

「しませんよ、あの人の性格上一人の女に縛られるだなんて有り得ませんから」

「出たでた、自分はなんでも彼を理解して支えますよって面、欲しいなら自分から食らいつけよ」

「結構です、私は自分の仕事の方が大切ですから」

目の前のグラスワインを飲み干してそう言えばザップは下らなさそうな顔をした後にニヤリと笑いまた空のグラスにワインを注いできた

「あの人のこと騙してみたらどうだよ、浮気してみたとか忘れた〜とか、そうすりゃ意外と必死になるかもよ」

「そんな訳」

「まぁ知らねぇけどな」

でもきっと楽しいかも。なんてお互いに顔を見て察した
普段そんなこと一切しないだろうに…と彼女自身を思いながら浮気は最低な行動なためにしないのは当然であり智花は毎日少しだけ考えていた、そして冒頭から15分前スティーブンと智花は最近薬物の取引の多い異界人経営のレストランにやってきた、完全にクロだったその場を抑えようとするも激しい抵抗の末スティーブンが襲われかけていた所を助けるも智花は打ちどころ悪く一瞬気絶してしまった
そして、目を覚ました時に考えたのは少し前のザップとのこと「忘れた〜とか」と言った彼の言葉にスティーブンに話掛けられた智花は咄嗟に声を上げた

「どちら様でしょうか?」

「…記憶が無いのか?」

「えっとここは?私何をしていましたか」

意外と私演技がうまいのでは!なんて馬鹿なことを考えていればスティーブンは深刻そうな顔をした後に智花の目を見た

「僕はスティーブン、スティーブン・A・スターフェイズ、君は和泉智花僕の婚約者であり僕達はもう時期結婚するんだ今日は職場に退職の届け出を出す予定で来たんだがこんな事になるなんてな…」

その言葉に目を丸くしていたが気にした様子もなく彼は手を引いて乗ってきた車に乗せて電話をかける

「あぁ僕だ…智花が…すまない、今日はこのまま直帰させてもらうよ処理はもう頼んでいるから何かあれば、ありがとう」

話し終えて電話を切ってじゃあ帰ろうか。といったスティーブンに小さく頷いた、帰るとは?彼の嘘は?と疑問が度重なる今本当に自分の記憶が一部消えてるのでは?とさえ思えてしまい混乱の中付いたのは大きなマンションだった、ここは確か彼の家だ何度も来たことがあるが住んではいないと智花は思った
おまけに家に帰る前に彼は何故か少しだけHLの役所に寄っていた事さえ思い出して顔を真っ青にする

「あっあの私本当に婚約者…なのでしょうか」

「あぁそうだよ、同棲は結婚してからにしようって話してたけど都合がいいから今日からにしよう、新婚旅行は少し難しいが交渉するし結婚式は…きっとクラウスが無理矢理でもさせてくるからその前に決めてしまおう、子供はゆっくり考えて君は毎日家で待っていてくれたらいい、そういう話だったしね」

普段よりも口数多く話をされて智花は目が回りそうだった、どうしてそんな嘘をつくのかと智花は思ったがもしかしたらこれは気づいていてそのなかでイタズラ混じりに話しているのではと考えたがスティーブンに左手を取られる

「忘れてたよ、これは君の分だ」

庶民の自分が持っていいものでは無い。と智花が理解出来るほどに眩しく輝く大きな宝石のついた指輪に何度もスティーブンの顔を見ても彼は優しく微笑むだけだった

「さっき書類も提出したから今日から晴れて夫婦だ…よろしく智花」

そう言ってソファーに押し倒され、スティーブンは楽しそうに微笑み智花は耐えきれずに声を出す

「嘘です!記憶がありますから」

「ん?知ってるよ知ってるがもう書類提出したからなぁ」

「へ」

「ザップと話してたろ、忘れたフリしたら楽しいかもって意地悪だよな君ってやつは、それに進展が欲しいって言ってたし丁度いい機会だろ?」

「それは言葉のあやというかどうしてそんなこと」

「智花、君は本当に甘いヤツだよ毎日僕から渡された携帯を大切に持って…それに仕掛けがないわけないだろ?」

悪い顔をして彼の耳から小さなインカムが現れる、あっだとかうっだとか漏れた声は小さくそこから溢れていた、スマホはポケットに入れているがそんなに鮮明に聞こえるとは…と感心しつつ彼を見ても楽しそうに笑って指輪を撫でる

「宜しくな僕のお嫁さん」

「えっえーー!!」

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