別れ話

※現パロ

「で?なんだっけか」

いつも通りシーザーは変わらない表情でにこやかに注文してやってきたばかりのコーヒーをソーサーに戻して目を見て聞いた
向かいあわせで座る恋人は他人行儀に目を逸らしてまた口を開く

「別れたいって言ったの」

「マンマミヤー、智花の口から冗談でも聞きたくない言葉だな」

「冗談なんかじゃなくて本気だから」

そう言い切り智花は立ち上がればシーザーは真剣な顔をして智花の手を引っ張りもう一度席に座らせた
シーザーは中学時代から不良をして女関係もだらしない男だった、高校3年くらいにはゆっくりと喧嘩などという不良行為は落ち着き大学ではめっきりだが女関係が消えることは無い、恋人がいながらも変わることがなかったのは以外ではあったが彼の容姿や性格を知れば恋人がいても関係無しに来る女等後を絶たないでいた
智花がシーザーと付き合い始めたのは1年半前だった
マメな男で記念日にはしっかりとプレゼントまで用意して先に祝ってきた、友達に紹介するくらいには恋人としても扱ってくれた、智花は一つ下であり恋人もできたことがなかった、それ故にシーザーは魅力的であり尚且つ彼に全てを教えられてきた

「私じゃなくて平気だもの、昨日も今日もずっとそうでしょ」

「何言ってるんだ智花しかいないんだ、情けない男だって思われてもいいさ、けどお前じゃなきゃ本気で愛せないんだ」

「何回こういうこと言い合ってると思ってるの」

智花は落ち着いて席に座り直して生温くなってしまったミルクティーに口付けた
シーザーは落ち着かない様子で智花を子犬のような顔で見つめた、大きく美しいエメラルドのようなグリーンのようなブルー混じりのその瞳は智花を弱くさせる、いつだって別れ話をした時に彼の瞳を見て何度も体験したはずのキスをされるだけで許してしまいそうになるのだ
そして次の日の学校では彼の腕には別の女性の腕が組まれて嫌そうな顔もせずに歩いている

「本気だ、別に彼女達が好きなわけじゃない智花しかいないんだ」

「私は別にシーザーじゃなくてもいいの!」

そう言いきってから智花はしまった言いすぎた…とシーザーに思い顔を上げれば、まるで人を殺したようなそれ程まで冷たい瞳で智花を見る彼の瞳に背中がひんやりとした

「…そうか、分かったよ希望通りにするさ」

「えっ」

「でも最後に頼みがあるんだ、最後くらいデートして欲しい…俺の家に来てそこから出かけてくれないか?」

次に彼が言葉を発する時には優しい穏やかな顔で智花はほっと胸を撫で下ろした後にさすがに断り切れないと思い頷いた
最後のデートは別日にしようと結果的になり智花はまた一週間を過ごした、その間校内でシーザーを見ても隣にはずっと男友達や女の子はいても誰かの恋人らしく別の人とイチャついたり、それらしい雰囲気なども何も無かった
目が合えば手を振って軽く挨拶をして、毎日の様に連絡を取りあって次はどこに行きたいか何したいかと連絡をした

土曜日の朝には智花は胸がドキドキと高鳴った初デートの時のような高揚感とこれが最後だと感じさせる切なさに智花は苦しくもなった
シーザーを嫌いになった訳では無い、彼の態度に我慢できなくなったのだ子供のように恋人なのに特別ではないと感じた自分が悪かったのだ、ジャンバースカートの裾をつい掴んで彼の住むアパートのチャイムを押せば奥から声が聞こえドアが開く

「すまない、少し寝坊して」

「ううん平気、待ってるからゆっくり準備してていいよ」

「グラッチェ智花」

いつも通りのシーザーが頬にキスを落として部屋に入れば鍵を閉めた、綺麗にされた部屋に少しだけ感動しつつあまり来なれない男性の部屋をまるで都会に出た田舎娘のように見渡しては彼は笑う

「あれシーザー禁煙やめたの?」

「ん?あー…すぐ消すよ」

「平気だってば」

「いいや、智花の綺麗な服を汚したらダメだろ」

ワンルームの部屋の中でベッドの下に座る智花が火のついた煙草に興味を持ってしまえば早急に消して換気扇を回した、そしてテーブルを片付ける次いでに智花の隣に座り見つめた

「考えは変わってくれたか」

「考えって?」

「先週の面白くない冗談の」

「私本気だって言ったでしょう冗談で済ませたい?」

「あぁ勿論じゃなきゃどんな方法でも縛らなきゃ行けなくなるんだ、それくらい俺にとっての智花は全てなんだ」

そういって距離を詰めるシーザーに智花は少しだけ恐れを抱いた、彼は女性を大切にする人だ。
紳士的で歯の浮くような台詞でさえ簡単に吐ける、けれどそんな台詞さえ彼がいえば浮いたような言葉で無くなる程であった
智花はシーザーの過去も現在もそれなりに話には聞いていたが怖くはなかった、今までも別れ話は何度もしたがなぁなぁに流されてしたったが今日は違う

「シーザー怖いし、近いから少し離れて」

「なぁ智花、俺は君と結婚するし別れるなんて事は有り得ない」

「別れるよ、私本気だから酷いことするなら私怒るよ!」

思わず怒鳴りつけたがシーザーはそんなことも気にせずに体格差のある智花を床に押し倒した、この流れに乗るのはダメな事だと察知して智花は逃げようと背中を向けて四つん這いになろうとしたがシーザーの大きな手は智花の腰を掴んで引き止め、もう片手で智花の顔を掴んだ

「んぅっ」

唇を奪われ動きを停められ智花はぼぅっとした瞳でシーザー見た、いつものミントの匂いでなく苦い煙草の味のキスに困惑しながらも逃げようと智花は体を動かしたい

「嫌ってば、こんな事したくない」

「俺も無理やりしたくない、だから智花別れるなんて言うのはやめてくれ」

「やだよ、もう耐えられないの私が子供だからって理由でもいいから別れたいよ」

そういって恐怖のあまり思わず涙がポロポロと零れ落ちれば冷静になったのかシーザーは少し固まってその後にぎゅっと抱きしめた

「嫌なんだ…智花が居なきゃ俺は死ぬ、君が本気なら俺はほかの女とも縁は切るし話もしない絶対にだ、だから」

「…シーザー、でも」

「本気だ、じゃなきゃ君を殺しかねない」

本気なのだろう、シーザーの手は震えていた
瞳は悲しみと苦しみに満ち溢れてその巨漢がまるで子供の身体のように弱くも見えた、智花は体ごと振り返りシーザーの頬を撫でて抱きしめてやる

「殺されるから別れないんじゃないよ、けど今回だけだから」

「あぁ、勿論だ約束する」

あぁまただ。ずっとこうして彼に離れられないのだろうと智花は深く考えた抱きしめられた手は優しく満足そうにシーザーは微笑んでいる
けれど彼の言葉は本当だろう、だってベッドの下には使うことなど無いはずのレンチが転がっていたのだから。

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