いつか運命が裂かれる日まで
1000年前先祖は贄になった
正式にいえば妻になった、それは強大な力を持つ人間とも言えるのか定かでない人間だった
両面宿儺、名を聞いただけで呪術師達は苦い顔をするだろうそれが過去の初めての呪いだった、宿儺と人生を過した人間はどうなったかは分からなかっただが赤子が1人とある家に返された
そして何百年、1000年が経った今智花という少女は生を貰った
「ふぅんお前がそうなんだ」
齢12となった和泉智花は怯えた顔を隠すことなく目の前に座る男を見た
何故ならこの男こそが今世の彼女の夫であるからだ、宿儺の妻になった家には呪いがついた
1つ、女しか産まれない家系である
2つ、呪いに取り憑かれやすいく呪いは彼女達に取り付くこと以外出来ないこと
3つ、短命であること
大きく分類してはこの3つだろう、母も祖母も皆智花の一族は35になる時には死んだ、だがある意味宿儺の呪いを制御するのも智花の一族だけだった、だからこそ皆疎みながらも大切にするしか無かった何時しか復活した宿儺の贄にする為に
「話は聞いてるの?分かってる?」
「はい、嫌という程」
「そう…別に親の決めたことだからじゃないさ俺がイイって思ったからね、それでどう?未来の旦那様と初対面」
立派な日本料亭の様な場所を用意された時点で智花は察していた、と言うよりも産まれた頃からこの家の道は決まっていたのだから仕方がない
目の前の青年は智花の気持ちなど気にもせずに楽しそうにニコニコと愛想良く笑う、目元は見えはしないが特段機嫌がいいという訳でもないのに彼の表情は崩れない
着慣れない着物の裾を握って智花は言った
「私と結婚するんですか」
「勿論、その為に来てるんだから」
「それはどうしてですか、私は正直喜べません毎日の様に五条の為に…宿儺が…と散々聞かされ育ったんですから」
家の為に、世界の為に死ねと言うのと何が違うのだろうと智花は考えていた幼いながらも授けられた使命は軽く受け止めることが出来ないものだった
目の前であぐらをかいて珈琲を飲む20そこそこの男の事など理解も出来なかった
「俺は智花の事を奥さんにしたいんだよ、惚れたんだ」
本当だよ?と呟いて彼は付けていた目元の布を外した、可哀想であり愛おしくてたまらないと五条悟は思った、運命に抗えないこの哀れな少女を。
「智花〜疲れたよ」
「学校ですよ、やめてください」
智花は廊下を歩いていれば目の前からやってくる自身の担任に抱きつかれたことに思わずそう答えて190cmを超える男にベタベタとされながら前を歩く
少し奥で見えた禅院達二年生達は哀れみの瞳で智花をみた、口パクにて"助けてください"と言っても彼女らは"無理"とだけ返事をした
「ナニなに浮気?」
「な訳ありません、というよりベタベタしないでください五条"先生"」
「うーん、智花に言われる先生も好きだけどやっぱり悟ちゃんとか下の名前がいいな」
「阿呆な事を言わないでください」
初めての出会いから約3年は経過した智花は15歳から16歳に向かおうとしていた、結婚自体は16歳の時点ですると家は決めたがそれは五条悟の意向(ワガママ)により時期をずらし学生の時代にはしないと決められた
そうは言えども実質二人は夫婦であり、第三者を介入を許すことはなく智花も理解していたが故に本で読むようなロマンチックな恋など想像することもなかった、おまけにこの呪術の世界の中で甘い夢を見られる程優しいはずも無かった
「智花の呪いって厄介なのか有難いのか分からないよね」
「有難うございます、肩のおもたさが減りました」
「いえいえ、それより今日は泊まりに来てよ」
「…考えます、それより次の授業もあるので私行ってもいいですか」
「考えるじゃなくてさ」
「行きます」
「そう来なくちゃ、それじゃあ行ってらっしゃい」
どうせそう言わなきゃ抱きしめる腕を離さないじゃないかと智花は思いながら仕方なく即答すれば満足したのか頬に小さくキスをして悟は長い足を反対に向けて言ってしまった
智花に時間はない、もう時期人生の折り返し地点に来る事への焦り
宿儺が復活しかけていることも全てが不安の対象になる、それでも優しくする悟に智花は苦しくなった、だが素直に言えなかった家柄の結婚であり彼が特殊な特別な子だから結婚をする為
「おかえり智花」
「あれ早くないですか」
もう何度も来なれた高級マンションの一室にカードキーを通して入れば早速電気が付いていた事に驚き、その奥からエプロン姿の悟の姿にさらに驚き目を丸くする
「一緒に帰ろうかなぁって思ったんだけど、たまには僕が先にいてもいいかなって」
「何作ってるんですか」
「面倒臭いしシチューにした」
それよりもお風呂に入っておいでと悟に背中を押されて智花は仕方なく風呂に入った、ドアの奥でパジャマ置いてるから。と言われますます彼の考えなど分からなくなる
兎に角五条悟は智花に甘く優しかった、家の人間や周りと違い一人の女性として扱った生贄でもなく邪魔者でもなく家柄でもなく、和泉智花という婚約者として
湯船に漬かりながら左手の薬指に光る小さな指輪を見つめてはなんとも言えない気持ちになり風呂に上がれば早速悟は待っていた
「何してるんですか」
「上がるの早いね、一緒に入ろうって思ったのに」
「馬鹿なこと言わないでください」
「ははっごめん」
早くおいでと言いたげに人の裸を見ておきながら謝る気もない彼に深いため息をついてドライヤー片手にリビングに行けば楽しそうに悟はソファーに座る、仕方なく智花は黙って彼にドライヤーを手渡せば濡れた髪の毛を乾かしていく
「智花しんどい?」
「平気です、悟さん今日何かあったんですか」
「んー、今は内緒」
そういえば近頃学校というより呪術界隈でいたく騒がしい気がした、去年の乙骨を思い出してしまうほどに騒がしい
あの時の悟を思い出して智花は少し不安になった、彼は天才であり彼以上の人間はいない、それでも繊細で心は人間なのだと再認識させられた事件だったから
「悟さん痛いよ」
「智花は僕と生きていくんだよ、ずぅっと老衰するんだ」
「そうなれば幸せですね」
「僕と死ぬことは良いの?」
ドライヤーを止めて強く抱き締めた彼に智花は冷静に思った、分かっているのだ宿儺が目覚めかけていることをそして本能からそれに恐怖していることに彼に出逢えば自分は変わるかもしれないことに恐れを生している
それが智花だけでなく悟でさえも思ってしまうのだろう、だから弱気なのだ
「私たち夫婦になるんですから、当然でしょう」
そっと悟の左手をとって指を絡める、それが夢だとしても叶えられないものだとしてもこの部屋にいる穏やかな時間だけは変わらないのだろう
向き合って抱きしめあった時智花の肩が冷たく感じたのは気の所為ではない、それでもそれを指摘するほど智花は子供でもなく己の運命に抗いたい。と強く想うのだった
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