わんわん物語
その日レオナルド・ウォッチは事件に巻き込まれた、この街においては毎日が事件事故で死人が出るのは当然だと取れるが彼にとっては大事件だった
それは約2時間前、今日も元気なこの街で人々の喧騒をミュージックにピザ屋のバイトをしていた、そして事件は起きた
『やぁ諸君!!つまらない君たちのために可愛い薬を開発したよ!』
かの暇人フェムトが突然街中をジャックし、伝えた今降ってきた雨に掛かったものを別の生き物に変える運が良ければ元には戻る…はず。とそしてレオナルドはライブラに走ったぺちぺちとなる肉球の音も忘れて小さくなった体で真剣に走り
「ほぉ、それで少年が…子犬になったと」
「わぅ」
なんとか伝えることが出来たことにほっと胸を撫で下ろしたレオは随分上にいるライブラ副官とボスに伝えた、先程の事件はやはりすぐ報道に流れたらしく犬でよかったと安堵した、魚にされたりハムスターにされたりましてやなんの生き物か分からない存在にされた者までいた
だがしかし問題は犬になった事により誰が面倒を見るのかという話だった、明日から目の前の2人は本部に直接報告を言われギルベルト含めいってしまう
そしてあとからやって来たK.Kは子供がいるので不可、チェインも泊まらせられないと却下、ザップは論外、ツェッドも大道芸で知り合った人たちとご飯がある為難しくライブラは全滅した、一人を除いて
「少年、すまないが今日は頑張って家に帰れるだろうか…ソニックもいるし、な?」
「きゅぅん…」
その笑顔は頑張れ。と一言だけでクラウスも何度もレオに謝罪した結局どうしようも無く家に帰ろうと夕方頃いつも通りの道を歩いていた時だった、突如身体が宙に浮いて目の前には巨大なモンスターだったコイツらは人間も犬まで食べるのかと理解した時はレオは暴れても所詮子犬程度のレオでは意味もなかった
「わう!わう!!」
神々の義眼も大人しく言うことは聞いてくれず、シン…とまるで何も無かったようになっていた、まさか犬の姿で死ぬのかと思った時だったふと宙から落ちる感覚と同時にポスンと温もりを覚えた
「全く犬を食べるなんて考えられませんよ、こんなに可愛いのに…次からは容赦しませんからね」
簡単にあの大きな異界人の腕を4本落とした女がレオを抱いたそしてレオナルドは最悪だと思った
彼を助けたのは智花だった、救われたくなかった訳では無いが救われるなら彼女ではなく別の人ならよかったと心の底から思った事には理由がある、ただ単純にレオは智花を好きだからだ、歳は変わらず前線を張るタイプの人で笑顔が可愛いその人に恋をするのはすぐだった
小汚いもふもふの雑種犬を抱き上げた彼女は優しく微笑んだ
「もう怖くないよ、お家ないの?」
そう問いかけた彼女に家はあるものの伝えることは出来ず、さらに自分がレオだとバレたくないと思いながら小さく首を縦に振れば理解したのか彼女は歩き出す
「もう仕事も終わったし、私のお家においでこんな所より安全だから」
「わん!!!」
なんてこと言うんですか!なんて言いたかったがその言葉は犬語になって可愛い子犬の声になってしまい、抵抗も虚しく智花はそんな子犬を持ち帰ってしまう
ワンルームの部屋はシンプルで時折みんなから貰ったものが飾ってある程度だった、部屋についたと思えばそっちがトイレだベッドで寝ていいなど犬相手に説明する智花はいつもよりもずっとデレデレとした顔をしていた、好きな人のそんな姿が見れるなら悪くないか…と思っていた時智花は立ち上がる
「ご飯作らなきゃ、君も食べる?」
「…くぅ」
返事をする前にお腹が素直に鳴ってしまえばクスクスと楽しそうに笑う、こんなに笑う彼女初めて見た気がしてライブラにいれば真面目な顔で仕事をするだけだった、おまけに彼女と二人だとしてもいつも真剣な顔でときには怒っているのではないかと思えるような表情をする、弱く小さな自分だからそこまで好かれてもないのだろう…等と卑屈になりながらもそれでも智花に想いを寄せた
そうこうしている間に夕飯を作って床に犬用にキャベツとササミの薄味のスープを用意してくれた彼女と食事をする
「わん」
「美味しいかな」
「わううん」
いいこだと彼女の手がレオの頭を撫でる、人に撫でられることなんていつぶりだろうなんて思いながら彼女の手の心地良さに眠気も感じてご飯を終えて横になりながら見つめれば家の中でもハキハキと彼女は片付けをして風呂の用意もする、浴槽にお湯を貯めるのは日本人らしいと思いながらその姿を見ていた時だった
「結構汚いよね野良生活長かったのかな…でもごめんね」
「ワン!!!わん!!!」
「君のためなんだよ」
智花さんやめてください、僕だって子供じゃないんですから。と大きく叫びたかったが虚しくレオは風呂場に連れ去られたずっと目をつぶって頭の中の天使と悪魔が言い合いを続ける間も智花は気にせず洗っていく
外で散々歩いたせいか黒い毛からはまるで泥水のようにお湯が流れていきあんなにふわふわだったレオの身体も半分くらいのサイズになった
「本当彼に似てるね、いっその事私のお家で飼ってあげようか」
「うぅ」
「唸らないでってばすぐ終わらせるからね」
「わうぅ」
ふと目を開けてしまえば智花の素肌が見えて膨らみがふたつ見えたことに思わず驚き転けてしまったが智花は慌てて抱き上げて軽く泡を流して風呂場からレオを連れて出ていく
ドライヤーの風に当たりながら気持ちよくブラッシングされれば智花が話をしていた
「君によく似た子を知ってるの、小さくて勇敢で可愛くてカッコイイんだ」
智花の言葉がまるで子守唄のようで心地よく寝そうになりながら軽く耳を上げて聞く
「レオナルド・ウォッチって名前なの、素敵でしょ?かっこよくて素敵な人…でも私きっと怖がられてるからダメかも、いつも私の顔みて少し困ったような顔されるから」
え?と思わず顔をあげれば抱き上げられ彼女は語る、普段怖い顔をしてしまうのは可愛いと思ってしまって感情に出さないようにするためだと、好きだが伝えることも出来ず二人きりだと緊張すること、もっと仲良くなって2人でご飯でも行きたいと、散々語る彼女にレオナルドは自分ばかり聞いてずるいような気がしてしまうも智花は止まらずに語りかける
「本当君みたいな可愛い子なんだよ」
そういって智花が持ち上げて目を合わせたあと唇を近づけた、チュッと小さなリップ音と共に部屋の中でどたんっと大きな音がなり薄い煙が部屋の中にたつ
智花が驚いた顔をして見上げれば自身の上には先程まで話していたレオナルドがいた
「え!!あっ、戻った」
「え、あれ?な、なんでレオナルドがいるの」
「あ…えー、なんて言うかですね」
これはヤバイ…と顔を真っ赤にした智花を見て事情を説明すれば彼女はベッドに潜り込んで布団を被る
犬の時の記憶がある?と聞かれ普通に答えて、さらに言葉もわかっていた?と聞かれ首を縦に振る
「智花さんあの」
「私の事軽蔑した?」
「そんな訳ありませんよ、反対に僕すごく嬉しくて」
そういえば布団の中からごそっと動き手が伸びて手招きされる、高鳴る心臓の音に知らないふりをして近づけば布団が開かれて中に案内される
「私すごくレオのこと好きなの、答えなくていいから困らせてごめんなさい」
しゅんとまるで叱られた子供のような顔をした智花に思わず布団をとっぱらい叫ぶように声を出した
「僕だって大好きなんです!なのに自分だけなんて思わないでくださいよ」
じゃなきゃお互い報われないじゃないかと言えば普段大人しいせいもあったのか智花は目を丸くして下を向いてまた布団に手を伸ばすものだから、思わずその手首を掴み目を合わせる泣きそうな嬉しそうななんとも言えない顔になった
レオナルドは深呼吸を大きくしていう
「智花さんのことが好きです、だから付き合ってくれませんか」
そういえばついに彼女の瞳からは涙が出てきて慌てて拭ってやる
「よろしくお願いします」
と律儀に返事した彼女の唇に軽くキスを落とせば小さく聞こえたファーストキスの言葉に互いに顔を赤くして、その日2人は暖かいベッドの中で子供のように話をして眠りについた
あぁなんて不思議な街だろうなんて、もう何度2人で思ったことか。
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