600wで5分チン
※特殊設定あり 子持ち元カノ設定
「あぁ最後に悟、智花を宜しく頼むよ」
最後まで人を呪わなかった親友の言葉がえらく引っかかった、智花と呼ばれた女の事を忘れるわけが無い傑と共に行方不明になった同級生…兼元カノ
それはもう他人がみて馬鹿みたいに好きだと言って恋人を満喫した、他人の目を気にせずにイチャイチャする訳ではなくても手を繋いでデートしてキスをしてABCも全部した仲だった
互いを嫌いになって別れた訳では無い、夏油傑が処刑対象になった数日後突如消えた、きっと2人で逃げ出したのだろうと察して追いかけることも出来ずに立ち止まった
「久しぶり悟、なんかまた大きくなった?」
「久しぶり智花、うん…まぁ成長するんだよ男は」
「そう、ほら傑挨拶して」
目の前にいるのは数年ぶりに再開した元カノと親友にそっくりな少年だった、無表情で少し人見知りをするのか智花の背中に少し隠れるように挨拶をした「夏油傑です」と笑えない冗談だと言いたかった
半年前夏油傑による高専襲撃事件があった、そこから今現在和泉智花はまるで初めから高専にいた時のように子供を連れて帰ってきた、学校内を案内して時折顔を合わせる人に挨拶して
突如行方不明になった智花の部屋はあの時のまま掃除されて綺麗に残っていたのはいつ帰ってきても良いようにと言うためだった
上手く笑えてるか心配になりながらも腰あたりの子供に手を出す
「五条悟です、宜しく傑くん」
福耳も目元も口元も全部似ていて、まるで生き写しの人形みたいだと思いながら仕事だからと嘘を着いて逃げ出す、どうして今頃帰ってきたのかその子供はなんなのか傑とどうして逃げたのか…全部聞きたくて堪らなかったことは言葉に出ることも無く消えていき心に虚しさだけを残していく。
「どうして避けるの」
「は?避けてないし」
「嘘つかないで、悟って嘘つくの下手なんだから」
数日後智花は突如悟に告げる、悟は逃げ場を封じられて下から見上げてきた目は昔と変わらない、嘘つくの上手いって言われるのに…と言いたいけれど智花の前で嘘が通じた事などそう言えばいつも無かったと思う、感情に目敏いのか敏感なのかいつだって直ぐに人の心を読み取って接する、1人が寂しい時胸が潰れそうな時愛おしい時
大事な時に居なかったくせに優しさだけは変わらないのだと感じて見下ろす
「久しぶりだからなんていうか緊張しちゃって」
「嘘つき、帰ってきて子供作ってそれも傑そっくりだからもうどうしようって感じでしょ」
「知ってんなら聞かなくていいじゃん」
まるで高校生の時のような態度になるのはきっと彼女との思い出がそこで停止してしまっていたからだろう
智花は何も気にした様子は無くため息をこぼした
「傑の事放っておけなかったの、悟に分からないでしょ」
「…ンだよそれ、それが自分を正当化する理由なんだ」
「正当化なんてしてない、でもあの時の悟に私達の気持ちなんて分かるわけなかった」
「どういう気持ちだよ、言わずに出ていかれた俺の気持ちは分かってたわけ?」
「それは申し訳なかったけどでも分かるわけないよ、力のある悟に私達の気持ちなんて」
離れ離れになった高校生時代確かに自分たちは昔よりも力を付けたせいか任務は別々で忙しく学業なんてまともに出来なくて授業を受けるのもみんなバラバラ、硝子は滅多に出られないからよく会っていたがそれでも残りの3人はバラバラで互いの身の上話なんてものも出来なかった、そう言えば傑が目にかけていた後輩が亡くなったとかって話も聞いたな…なんて昔のことを思い出す
「それがアイツとの子供をこさえた理由?」
「元々私と悟じゃ結ばれるわけないでしょそんなの自分が分かってたことじゃん」
「そんな事ない」
「ごめんね、傑が待ってるからわたしもういく」
次に逃げるように背中を見せたのは智花だった、彼女が帰ってきてから何度目か分からないため息をこぼして呟いた
「じゃあ、僕の事は誰が見ててくれたのさ」
大人達なんて望んでない、ただ愛する友達と愛する恋人を望んだだけだと想ってもそれでも彼には大き過ぎる欲望だったのだろう。
秋の夕暮れ校庭で親子が2人遊んでいた、遠くから目が合っても互いに知らぬふりをするそう言えば智花ってバスケ得意だったよなと思いながらボール片手に遊ぶ二人を見た
学生時代は何も考えずに付き合っていた、其れは家にも知られていた親や周りはいい女を紹介すると見合い話を持ち出すのは極自然だったが苛立って反抗して自分には智花しかいないのだと言い続けた
ずっと変わらず28歳で独身の当主など苦言が出ないわけが無いそれでなくても早く六眼を継いだ息子をと高望みする者は多く、心の負担になるばかりだ、過去の女のことを兎や角言うことはなくてもその女にまだ惚れてるとバレた時には何を言われることか考えただけでも肩が重たい
「ボール取って」
「はい」
「ノーコン、ちゃんと渡してよ」
「仕方ないじゃん、遠いんだからさ」
転がってきたボールをわざと遠くに投げてやれば近くに飛んできた為かその小さな身体で少年がボールを受け取り手馴れたようにゴールにボールを入れた
「智花より才能あるんじゃない」
「私の子だからね」
親バカみたいになって子供に微笑んだ、こんな表情を数年間見届けていた親友がズルいだなんて思う辺り心底惚れている上にどうしようも無いほど嫉妬しているのだと自覚して反吐が出そうになる
遠くから生徒の声が聞こえて、こういう感覚と同じなのかと思いつつもきっと違う好きな人と結ばれるということは到底今の五条悟には分かりえないものなのだから
「ご飯作り行ってあげようか」
何だかんだと1年近くもいれば嫌でも昔のように話をして仲違いなんて無くなっていた、傑は基本的に一人が好きなのかよく高専内で1人で勉強していた、智花もいつまでも仕事をしない訳にも行かず任務を受け始め2人で話す時もあったがいつの間にか食事に行く関係にまで戻った
そんな中智花が一人暮らしの悟にそう声をかければ高専内の食堂で昼食を食べていた悟が驚いている間に皿から唐揚げを奪った
「は?ご飯作れんの?」
「失礼だなぁ、一応もう大人なんだし美味しいかは知らないけど作れるよ」
「じゃあ今日来てよ」
「分かった、私一人で行くから家で待っててね」
「うん」
まるで初めて彼女を家に呼び込んだ中学生のような感覚だった、変なものは置いてないか部屋は綺麗かと必死に考えて無駄に広い家の中を早く帰ってきて走り回った、風呂は?材料は?つか何作るんだろ?なんて脳は普段よりも回転していればチャイムが鳴った、家の中で一人の時は極力サングラスも目隠しも外していた今更つけるのも面倒で「どうぞ」といいながらマンションの入口と部屋のロックを解除すれば智花は部屋に上がってきた
普段と変わらない姿だが手には大きなレジ袋が2つ、あまりにも多くおもたそうな荷物を奪って広いキッチンに置いてやる
「すごっひろーい!悟ってこんなとこ住んでるんだ」
「まぁ金が余ってるから」
「キッチン広いと料理しやすいよね、そうだ和食にするけどいい?」
「うん、風呂とかはいんの?」
「…なぁに、帰す気ないの?」
「違うし優しいから聞いてやっての広いお風呂味わいたいかーって」
「また別の日ね」
からかったように笑った智花に言われて仕方なくソファーに座りテレビを見る振りをしたもう何年も傑といたのだから自炊も慣れているのだろう、ゆっくり香る出汁の匂いを感じて人の手料理なんて久しぶりだと考える
智花の後に恋人を作ったことはなくいい雰囲気になる頃には離れる様にしたのはいつ帰ってきても智花を迎えたかったからだ、そんな気持ちも知らないと言うように子供を連れてきた彼女を少なからず憎くも感じたが愛おしさは変わらないままだった
「悟はかっこいいし素敵だからきっと私よりいい人いると思うの」
「んなわけねぇだろ、居たとしても智花しか俺はいらねぇよ」
「そっかじゃあ私だけ見ててね、私も悟だけが好きだから」
付き合いたての頃から智花はあまり自信がなかった、仕方がないが悟にはその気持ちは理解できない肝心なところでなぜか人間の気持ちを彼は読み取ることが苦手だった
会う回数も減って、会っても互いに映画を静かに見てイチャついて好きだとも言わなくなって、そして智花は消えていった
好きだと言い続けなくても互いの気持ちなんてわかっているのにそんな単純な話では智花からしてみれば無かったのだろう、大人になって少し分かったその考えを今更帰ることなどできない
「…とる、悟ってばご飯できたよ」
「あれ僕寝てた?」
「うん、2時間くらいぐっすりと」
「いい匂いする」
「手洗ってきてご飯しよ」
エプロンを着けた智花はまるで自分の奥さんに錯覚してしまいそうだった、温もった体を冷やす様に手を洗って席に着けば目の前に味噌汁やご飯が置かれる
日本人らしい和食料理はおかずだけでも4.5品はある、時間がかかったのは当然の事だった、楽しそうに智花は日本酒を持ってきて開ける昔秋田に出張に行った人に貰った物だが呑めずに置いていたことを忘れていた
「悟はお酒飲める?」
「いや、下戸だから無理」
「残念、大人になったし飲めるかなって思ったのに」
「智花だけでも飲みなよ残してても悪いしさ」
「お言葉に甘えてじゃあいただきます」
向かい合って食事をするのは久しぶりだ、帰ってきてからゆっくり2人で過ごす時間は今が初めてである
いつだって彼女は母親の顔で高専にいる、任務が被ることなど到底無いことだから余計だろう
「美味しいよ、料理上手くなってんじゃん」
「ありがとう」
山芋の煮っころがしを口に入れて昔なんか卵焼きを焼くことさえできなかったこの子が成長した、自分の知らないところでなんて考えていれば口に広がる味は余計に苦く、そして反対温もりのある美味しさだった、お猪口に入れた日本酒を満足そうに飲んで智花はいう
「悟はさ彼女いないの」
「今はね」
「"今はね"って前はいたんだ…狡いなぁ私の知らない悟知ってるその子のこと嫉妬しちゃうよ」
思わずその言葉に箸を置いて智花を睨めばわかっていないように彼女は日本酒を煽りながらタコを摘んだ
「智花も僕のこと捨てて傑と宜しくしてたんだしお互い様でしょ」
「本当に私が傑とセックスしたと思う?」
「は?」
そういった智花が席を立ち上がり横に来る、細い指先が頬を撫でて髪を撫でるのは昔から変わらないもので心地よく目を細めてしまう、唇を撫でてゆっくり手が降りていき智花も腰を下ろして腕を伸ばし腰に抱きつく
「してるからガキが居るんでしょ」
保健の授業でも開かれるのか?と聞いてやりたくなるものだがどうやら言いたいことはそうでは無いらしく智花はジトリと睨みつけてきた
あぁ今ムカついてるんだな。と分かるのは付き合ってる時から変わらないことをしているからだ
「私が悟以外と寝るわけないでしょ」
馬鹿だアホだ何も分かってないと突然叫び始める智花がぽかぽかと腰を殴ってきた事に思わず目を丸くした、この女はさっきから何言っているんだ?も疑問を抱きながらも本気らしい智花は遂には泣き始める始末でそれには驚き抱き上げて膝の上に座らせて頭を撫でてやる
せっかくの夕飯は冷めてしまうし台無しだと言いたかったが智花を慰めることが優先で、ふと自分は変わらず彼女を愛していて変わらず甘やかしてしまっていると感じた
「落ち着いた?それでどういう意味」
「そもそも本気で私が傑とエッチしたって思うなら抱きなさいよ!!私ここ10年近くもしてないんだから!」
「いや、あのさ待ってよ智花脱ぐなって馬鹿っおいっ」
服を脱いで暴れ回る智花を呪術で抑えて座らせる、兎に角冷静になろうといい日本酒は取り上げて夕飯も1度中断しリビングのソファーに2人で座り見つめ合う
水を1杯飲んだ智花はそこでようやく落ち着いたのか深呼吸をして話をした結果分かったことは
あの子供は夏油傑本人であったという
いつか死ぬことを想定して智花の家系秘伝の呪術を用意した、人間と全く同じ素材で人形を作りそして死んだ人間の魂を人形に入れる、そうして魂がゆっくりと馴染めばその人形は完全に人間になって歳をとって生きていくと。
禁忌とされたその呪術を使用した事を知られれば智花も処刑まで行かずとも幽閉される可能性はある、人形作りはそもそも普通の呪術師には到底出来得ないもので、智花も祖母の話を思い出して試しにした結果成功したという何とも才能の話を聞かされたものだった
「え、じゃあ…その、傑とそういうことしてないの」
「してないって言ってるでしょ、私悟以外とそういうことしたくないし…そりゃあ一緒に逃亡したことはきっと誰も理解して貰えないけど」
「なんで言わなかったわけ」
「傑がまだ完全に馴染んでないし言わない方が楽しいって」
「はぁぁぁ本当2人してなんだよ」
「硝子ちゃんは知ってるよ」
というか東京高専は殆ど…といった智花に更にため息をこぼした全員わかってて言わなかったのかと言う事と自分も他人に智花の事をあまり触れられたくなくて言わなかったことが原因だった
もう拘束を解いていた智花がふと両腕を広げていた、そこにもたれるように抱きつけば髪の毛を撫でられる
「ねぇ、彼女いたって本当?」
「そんなわけないでしょ智花以外の奴なんか考えたくもない」
「じゃあ悟もう1回私と付き合ってくれますか」
「付き合うどころか結婚しよ、子供作って絶対もう逃がさないから」
指を絡めて唇を寄せてそう言えば智花は声にも出さず小さく頷く、もう何年自分達は愛を伝えてなかったんだろうと思い出して智花に言う
「智花大好きだよ」
「私も悟だけを愛してるよ」
冷めきった夕飯を温めるのはもう少しあとになりそうだ。
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