お祝いのキスはキャンドルのように

この人は案外祝い事を大切にするタイプでそして案の定楽しむタイプだった、誕生日記念日はしっかりお祝いをして他に予定があっても基本大事なことではないと判断すれば拒否をするということが分かった…とはいえそこ迄何度も祝う程の長い付き合いではないがもう3年は一緒にいれば何となく理解した

「おめでとう智花ちゃん」

ニコニコとまるで自分が誕生日なのかと聞きたくなるほど彼は嬉しそうに笑顔で隣にいた、枕元には案の定プレゼントまみれで金遣いが荒いと言いたくもなるが誕生日に言うのも悪く思った

「ありがとう貘くん、今年も沢山だね」

「智花が好きそうなのいっぱいあって悩んだんだよ」

「別にいいのに、私お返し出来ないから」

「そんなのいーの、俺にとっては智花が側にいておめでとうって言われるのが幸せだからさ」

相変わらずこの人は人を喜ばせる才能があると思いながら足を外に出せば足元には風船が散らばっていた、思わず背後を見れば「マルコ達とつい…やり過ぎた?」なんて困ったような顔をするものだから、それには頷いてやった
とはいえ悪い気はしない、自分が一番のお姫様だと扱われているようで彼が好きだと分かりやすくアピールされれば心も安心する
これでギャンブルさえ程々にしてもらえれば心労も少しは減るもののそんな事は無理なのだろう

「今日何したい?行きたかった旅行行く?それとも気になってたスイーツビュッフェ?それとも欲しがってた服見に行く?」

「んー、映画借りたい」

「映画館ごと?」

「いや、レンタル」

というよりスイーツビュッフェもお買い物も毎日と言うほど暇があれば連れていかれる、少しインターネットで検索履歴があれば何処で貰ったのかチケットを持ってきたり
突然旅行と称して連れ回されたり、何も言わなくても彼の情報入手力は強く欲しいものなど無くなってしまうほどだった
とはいえ勿論ギャンブル資金は別で用意があるために彼の資金源が気になって仕方なくも感じるが深堀をしてもいいことは無いのだと察していた

「えー、それみるの?」

「めっちゃ見たかったから嬉しい、貘くんも楽しみでしょ」

「俺ホラー映画はてんで得意じゃないのよね」

「嘘つきそれなら向こうのコーナー借りてきてもいいんだよ」

二人でやってきた無料レンタルのできるビデオ屋さんで物色していれば文句をこぼした彼に指を指した先はピンクの暖簾がご丁寧に18禁と書いていた、ソワソワした様子の彼に軽くデコピンをする
彼は人らしからぬ頭脳や勘を持っていながらもこういう人間くさいところが多いのが愛おしくてたまらなかった、手に握られた1枚のホラー映画はみんな大好きスプラッターだ
楽しみに歩いて帰る道中コンビニに寄って誕生日ケーキ替わりに買って帰ろうと提案するも「もっといいの買ってあげるよ?」と言われ「そうじゃなんだよ」と返せば分かったのか分からないのか彼は仕方なくコンビニケーキをレジに持って行った

昼からホテルのスイートルームの中でカーテンを締めて大きな80インチのテレビに大音量でスプラッターが流れる
用意したビールとピザはゆっくりと消えて真剣に見ている智花を横目に貘は笑う

「映画見てるから」

太ももの触れた彼の手を避けて智花は小さく返事する、智花が毎年映画を見るのはいつもの事だが普段していることと変わらない事に飽きたのかちょっかいをかける

「貘くん」

「なぁに」

「今いい所だったのに」

「せっかくの誕生日なのに、普段と一緒だとつまらないじゃんか」

智花の腕を引っ張り自分の胸に抱きとめ見下ろせば白銀の髪が顔にかかった、肉食獣のようにメラメラと燃える瞳で見つめられれば智花はごくりと唾を飲み込んだ、それでも映画は止まることなくキャーッと女の悲鳴があがって殺されていた
やはり映画の魅力は目の前の恋人を見ても消えることはなく思わず魅入っていれば元に戻される

「智花ちゃん、俺の事見て」

「ちょっと、あの.、みれなっ、あ…もー」

あまりにも智花が乗らない事に苛立ったようにテレビを消してまるで子供のように頬や額や鼻先に沢山キスを落とす彼はまるで我らのリーダーなのかと疑いたくもなる。
するりと伸びてきた手を受け入れて彼の両頬を包み見上げて言う

「どっちのプレゼントなんだか」

「んー智花ちゃんのが俺のプレゼントだよ」

「お前のものは俺のモノ的な感じ?」

「そんなに自己中じゃないけど、まぁ智花は俺のだからあながち間違いじゃあないかも」

そういって結局ふわふわのフカフカの巨大なベッドの中に、シーツの海に2人して溶け込んで子供のようにじゃれ合って話をして未だに片付けていなかったプレゼントが邪魔だと落とした彼の背中を軽く叩けば恨めしそうな目で見つめた

「大切にしてよ、私が貰ったんだから」

「あげたの俺だもんね」

「可愛くないなぁせっかくおれいしようおもったのに」

拗ねる彼の髪の毛を指先でクルクルと遊びながらベッドにまた横になれば引き摺られるように同じく隣で横並びで寝転んで、彼の指先がボタンを外していく度に肌が見えて服がはだけていく
ふと顔を近づければ自然と唇が重ねられて2人して小さく笑う

「お誕生日おめでとう智花ちゃん」

「うん、私を拾ってくれてありがとう貘くん」

彼のシャツのボタンを外しながらそういったまた今日もいつもと変わらない日常じゃないかと後々気付きながらも枕元にあるプレゼント達を開ける時間を楽しみに2人してベッドの中に堕ちていった。

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