キューティベア


帰り際の街で見たクマのぬいぐるみ、キリッとした太い眉毛大きな瞳なにかのキャラクターなのだろうか野球のユニフォームを着て片手にグローブを持つクマに目を奪われる

「…クリス先輩だ」

クリス先輩だった、どこをどうみてもその茶髪も変に生えた頭のてっぺんにある癖毛もこれはクリス先輩を元に作ったな?と聞きたい程に似ている
お財布を空けて入っている百円玉は8枚、いけるのでは…と思いながら無けなしの実家から送って貰っているお小遣いを計算しながら許されたその百円玉を1枚入れれば五月蝿くクレーンゲームのBGMが流れる
少し動いてはなかなか落としてくれないクマにぐぬぬ…っとなりながらも5枚目の百円玉を挿入した

「お、何してんだ」

「栄純くん、あのねクマ欲しくて」

「なんだかクリス先輩みたいだね」

「でしょ?かわいくて」

「…クマ」

「そう、ほしいの」

やって来た制服姿の同級生3人にそう告げて4人で祈りながら100円をつぎ込む、あと少し…と思いながら百円玉を入れればカタンと音を立てて落ちた
目のパッチリとした太眉の茶色の手のひらサイズのぬいぐるみ

「よっしゃー!クリス先輩ゲットだぜ」

「やったー!クリス先輩だ!」

大声ではしゃぎながらハイタッチをした

「俺に似てるのか」

聞こえた声にカタカタと首を動かせばクリス先輩と小湊先輩に伊佐敷先輩と結城先輩に目を丸くする、ふと手から奪われた茶色のクマとクリス先輩が並べば一層似ている気がするが限界だった、顔が熱くなるのを感じながら先輩の腕からクマを奪い走り出す
あぁあぁもうどうして、普段こんな道みんな通らないくせにと思いながら家に着く頃にスマホには薄ピンクのスカートを履いたクマのぬいぐるみの写真と一緒に一言添えられていた

「お前に似てるよ」

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