その娘、無邪気にて
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銃声が大きく耳に張り付き視界が悪くなっていく感覚に漸く自分も死に直面することが出来たのかと小さく思った、この世に縋り付く気もなければ後悔することももない、あるとすればもっと人間で実験をしたかったということか、完全な死を迎えることはこのゲームに参加する以上まだ与えられないが苦しみは消えることは無いだろう
「おじさん…アレクおじさん」
「またお前か」
懐かしい子供の声に思わず目を向ければまだ10歳にも満たない見た目の子供が部屋に入ってきた
楽しそうに笑って自身の机の上にある分からない文字だらけの報告書を読み漁る
「見ても分からんだろう」
「あっ、取らないでよ意地悪」
「ここには来るな、何を言われるかわかったものじゃない」
「いいでしょう、おじさん私の事嫌いじゃないんだから」
まるで子供は皆大人に可愛がられる存在だと言うような傲慢な言葉にため息を深く着きそうになるもこの娘は違った、他の子供よりも賢くそして残酷だった
出会ったのは自身の職場であるハンバート研究所の裏で彼女は何処からか持ってきた酸を死にかけのネズミにかけて楽しそうに笑っていた
「…怒らないで欲しいな、どうなるのかなって思っただけだもん」
反省の色もなしに微笑んだ彼女は幼いながらにアレクサンダー・ノックスに興味を引かせる対象になった、とはいえ普段は普通の少女であり時折彼の"個人的"な研究が大好きだった
殺虫剤を使う対象物がいつからか人間に変わった時、少女に伝えてやれば大きなその瞳をさらに大きくした後に嬉しそうに満面の笑みを見せた
「もしする時があれば教えてね、私が1番にアレクおじさんの研究みてあげる」
それか私で研究する?だなんて言うものだから頭を軽く撫でてまだ今は言いと断りを入れてやれば、つまらなさそうに子供特有の丸い頬を膨らませた
「ねぇ、いい子にするのはそんなに大切なのかな」
「人間には裏があるものだ、いい子の裏側なんて醜いに決まってる」
「それ私のこと言ってる?」
「そんな事を私に聞くな、お前は思っているより賢い子供だ」
理解していると言う気配もなく彼女は子供が見るには早すぎる毒ガスの研究書を読み続けていた、動物で試して直ぐに死ぬならできる限りもっと強く更にもっと苦しめられるガスを作らなければつまらないだろう。
いつからかカゴの中にいる鼠が人間に見えてきそうな程だった、考えれば考えるだけ心は待ち焦がれて妄想を駆り立てる
「ほら、こうしたら良くなったでしょ」
15歳になった彼女がそういって最後の足りないピースを埋めていた、優秀な彼女を助手に欲しいと思いながらも巻き込むのは人生をむちゃくちゃにする事くらい分かっていた、自身もまだ人間だったのだと思いながらガスに苦しみ、炎に燃えて、消えて行く思い出達を見た
「行っちゃうの?アレクサンダー先生」
「アァ勿論だ」
「ねぇ、次出会う時は私のこと傍においてね」
「考えてやろう」
「Yesって事でしょ、絶対迎えに行ってあげるから安心してね、私のおじさん」
銃撃がなりやんでいた、懐かしい夢のような感覚に重たい体を起こした、見覚えのない女の後ろ姿にすぐ様銃を無ければふと振り向かれ柔らかく女は笑う
「おはよう、コースティック…ううん、私のおじさん」
「まさか…」
「さ、楽しい実験を始めましょ」
そういって取り出した彼女のボトルからは自身の見覚えのあるガスが広がり思わず口元が緩む、自分たちの実験はこれからだと言うことに気がついてしまったからか、それとも再会できた喜びかは2人には分からない事だった。
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