優しい暴(愛)を君へ



彼女の目はまっすぐと僕を捉えた、冗談ではなく本気だと言うのはそれだけですぐに分かった

「やっぱり今のは無しにしようよ」

「それがギャンブラーの言うこと?というか男に二言は無いでしょ」

だからさぁはやくと彼女は僕の手に押し付けた、鋭利な刃がついた其れは言わずともなにか分かっており、1度そのボタンを強く押せば彼女の体の一部に穴を開けるのだ
そして彼女は30分前にピアスを開けて欲しいと言った、高校生を卒業した記念だと言うが病院を提案しても開けて欲しいと強請る彼女に小さな賭け事を提案した、2人でよくやるようなババ抜き
別にこれは大きなものではなく些細な口約束になった程度だった

「ほら、梶くんが言ったんだよ?勝てたらねって」

「そりゃあいつも勝たないから」

「私が本当にいつも勝たないって思ってる?」

「…思ってた」

彼女も伊達にあの人といるわけじゃないんだと思いながら耳朶に触れる、染められていない黒髪も真っ白な肌も化粧が施されていない子供の顔も全て彼女を形容するものだった
それを自分から崩すようにこのピアッサーで穴を開けることに躊躇ってしまう

「冷やした方が良くない?消毒とかもしっかりしなきゃだし」

「消毒はしたし、印もつけてる冷やさなくても多分平気だよ」

「でも」

「覚悟決めてよ男でしょ」

この間まで高校生だったその子が貘さんみたいな瞳で言うものだから唾を飲み込んだ、もうここまで来たら覚悟だと何度もいい?と確認した
バチンッと大きな音を立ててゆっくりと針を抜いて彼女の耳朶を見れば少し赤くなった上に白かった無垢な耳から赤い雫が零れた

「どう?私似合うかな」

初めて与えた彼女への暴は予想外のもので、そしてその反面少し大人になったらしい彼女は随分と綺麗に笑ったものだから返事も出来ずに僕は小さく首を縦に振った。

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