恐怖




高校生だし多感な時期だ、どれだけ彼が私達が大人びて見えても抑えられない性欲と抑えられない感情に支配される
1年半の付き合いで彼吉田ヒロフミくんをよく知った、何処がキモチイイのか何処が弱いのか、身体の内部だけを知り尽くしてしまう

「また痣残ってるね」

そう言って彼の女よりも白い指先が太ももを撫でた、ふと自分の視線を落とせば綺麗なタコの吸盤が残されている
もう何度目かこの行為をする度に残るそれに"彼女"は怒っているのか、神とも悪魔とも恐れられるその存在を前に肉欲を晒す人間に対してどう感じているのか未だ察することは出来ない
それでも目の前の恋人は嬉しそうに太ももを撫でて足首を撫でる

「痛そうだね」

「あんまり分からないよ、毎回残ってるから怒ってるのかな」

そういうとヒロフミくんは薄く笑う、私は訳の分からずに足を撫でる彼の指先を眺める、ふと見えた彼女の指先?にたまには話してくれればいいのに…と感じつつヒロフミくんの指に重ねて痣を撫でる

「きっと独占欲の現れだよ」

「誰の」

「蛸の」

まさかなんて思っていたらヒロフミくんの足にギュッと蛸の足が絡まった、この時だけは彼女の口がなくても言いたいことがわかった(黙ってろ)とその後痣の付いた足を彼女が撫でて消えてしまう
あぁどうやら私は悪魔に魅了されていくかもしれない、恐怖よりももっと恐いもので

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