名探偵"不死鳥"


※トレクル探偵パロもどき


閑古鳥が鳴いた
この喫茶店は今日も今日とて元気に暇をしている
元気にとはどういうことだと聞きたいやつもいるだろう、その言葉通りカウンター席には一人の男が大皿のナポリタンにグラタン、サンドイッチにオムライス、オレンジジュースにホットケーキとフルコースを頼んではその口に頬張った
カウンター越しにエプロン姿で立っていた女は如何にも苛立っていますという顔をしていた

「おかわり!!」

そう大きな声をあげた青年、エースは先程までカウンターを埋めていた料理を平らげて皿を彼女に向けた

「ッッいい加減しなさいよ!この店の食料食い尽くす気?」

いい加減堪忍袋の緒も切れたと言いたげに女、ナマエは怒鳴り声をあげつつもテーブルの上に特大ハンバーグカレーを投げるように置いて
手元にあるタバコに手を掛けようとすれば、カウンター隣の階段から降りてきた男にそれを取られて華麗にゴミ箱に投げ捨てられる

「まぁまぁ金なら払うから勘弁してやってくれよい、それよりナマエ禁煙じゃなかったのか?」

特徴的な髪型をした眼鏡の男は物珍しい杖と今朝の新聞紙を抱え高いスーツに身を包んで降りてきた
その男の言葉にムッと不貞腐れたような顔をしつつも「禁煙は続いてますよ」と答えたが「2週間と3日」という男の言葉に食事をしていたエースは笑った

「そんなの禁煙でもねぇよ」

「うっさい飯馬鹿、はいコーヒーとパイナップルサンド」

「おー流石ナマエ」

両手をあわせて喜んだその男、マルコは出されたパイナップルサンドを口に運んだその時だった閑古鳥の鳴りそうなほど客のいない静かな喫茶店の黒電話がヂリリと音を立てた
その音にニヤリと笑うマルコ
その音に待っていたと言わんばかりに笑うエース
その音に呆れた様に溜息をこぼしたナマエが受話器を取る

「こちら喫茶"フェニックス"オーダーは?」

『あぁマルコは居るか!?事件だお前達の力がいる』

「こちらマルコ場所は?」

『マリージョア92番街"例の"天竜人殺人事件だ』

話途中のナマエの手から即座に受話器を奪い必要最低限の情報を聞き出す
外ではバイクの大きなエンジン音が響いた、さっきまで食事をしていたエースの姿はとうにない

「さぁて、仕事の時間だよい行くぞエースナマエ」

「久しぶりにデケェ事件だろ?楽しみだな」

「アンタが楽しみなのは喧嘩でしょ!私もすぐ行くからまた後で」

「それじゃあ行きますか、探偵事務所"不死鳥"出勤だよい」

そういってマルコはナマエに小切手を渡して、喫茶店のドアを開け、丁寧に入口の壁にかけていた札をCLOSEに切り変えた
待機していたエースが楽しそうに笑っていて、同じくマルコも口元を弛めてサイドカーに乗り込んだ
今度の事件もきっと一筋縄じゃあ行かないであろうことはここ2ヶ月の事件と全く同じことが起きているからだ、彼の杖が事件の幕開けだと青い炎を小さく吐いた。

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