SS集


サボは時折無自覚に人を誑かす
顔のいい彼は街を歩くだけで女達に黄色い声ではやし立てられる
その度に小さな嫉妬が込み上げて思わず隣を見たが彼は優しく彼女たちに微笑んでいた
「そういうのやめた方がいいと思うよ」とできる限り穏やかに伝えれば「なんのことだ?」と彼は分からなさそうな顔をした
少しだけ顔を背けて素直に「嫉妬するから」といえば「そのセリフ、そっくりそのまま返す」と言い指先を絡め歩いた、遠巻きに彼女を見てる男達に向かってニヤリともう一度わらって

(サボ)

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好きだと気付き意識すればするだけガキみたいにどうしようも無い意地が出てきて素直になれなくなった、あまりの態度にみんなからも「そのうち嫌われるぞ」と釘を刺された
ある日彼女に告白をして振られた奴が「ごめんね、私はエースが好きだから」と言われて
内心ガッツポーズをして大喜びしたのに面と向かって「好きだよ」と言われたらこっぱずかしくなって「俺は別にそんな」とぶっきらぼうに答えれば
優しい彼女は手を重ねて微笑んだ、あぁ俺は適わねぇなと思いつつニヤつきそうな顔をどうにか直してその手を覆うように重ねた

(エース)

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あのゾロに好きだと伝えられた翌日から知恵熱が出るほど頭を抱えた。
当の本人は気にした様子もなく聞き間違えたのかと思ったがどうやら違ったらしい…
何故かって?それはまぁ今部屋に来た彼に「いい加減答えをくれ」と言い押し倒されて唇を舌でなぞられたからだ
あぁどうやらもう答えは決められたらしい

(ゾロ)

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年齢不詳不老の女、元海軍、海の風来嬢、海賊タトゥー専門屋やら色んな肩書きや名前を持つ不思議な女とこの海では知られている
そんな女も所詮自分の下じゃ普通の女だと感じる
過去どれだけの男達にベッドでその顔を見せたのかと思えば年甲斐も無く苛立ってしまう
「スモーカーくん」と甘く呼ぶその声は自分だけが知っていればいい思いながら唇に噛み付いた。

(スモーカー)

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我が夫ミホーク様はとてつもなく顔がいい
歳を重ねる度に美しくかっこよく妖艶で強く神は彼に"完璧"を与えたのだ、まさに彼はこの世の神に近い存在だろう
そんな彼の膝の上に座らされ晩酌に付き合う、彼の弟子の活躍でもあったのか珍しく機嫌の良い彼が髪を撫でながら「愛している」と呟いた「わ、私もです」といえば
彼はあまりに美しく微笑むものだから血を吹き出して意識を失った、彼はその姿さえも愉快だと笑ったような気がした、これからもお慕い申しております

(ミホーク)

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船の上で兄としてエースは様々な事をしてやりたいのだろうと誰が見てもわかった
あのエースがデザートをくれたり、髪の毛をといたり沢山してくれるがそんなことを毎度される度に申し訳ないほどで感謝の言葉を伝えれば彼は嬉しそうに太陽のように明るい笑顔で笑ってくれる
だがしかし今無人島に二人きりで彼は巨大な虫を丸焼きにして食ってみろという、その彼の笑顔は輝いていたがその反対に冷や汗が背中に伝った

(エース)

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初めて好きだと伝えたのは5歳の頃だった、彼女はもう少し大人になったらといった
もう一度10際の頃に言えば、もう少し大人になったらといった
結婚のできる18になってもう一度いえば、もう少し大人になったらといった
成人になり結婚してくれといえば彼女は困った顔をして「私とサボ様の関係はメイドと坊っちゃまですから」といった
それでも諦めずに毎日伝え続ければ彼女は「私はもう30半ばの女でして素敵な女性はもっと居ますので」というものだから、いるはずがないと言っても聞かなかった
「ご主人様の指示ですか…かしこまりました」震えた彼女の声が聞こえた、ここをクビになるのは彼女の家が潰れることを指すからだ、部屋から出てきた彼女の顔は青ざめていた、なにきみが俺をわるい大人に仕立てあげたんだ

(サボ)

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好きだと伝えた時、女は目を大きく丸くして笑った
その顔がやけに頭に張り付いて離れなかった、いつも馬鹿みたいに笑う女だからと気にもとめなかった
ある日のベッドの中で「好きだ」「愛してる」と馬鹿みたいに子供のようなセリフを吐いてしまえばあの頃とおなじ顔をして笑ったものだからその顔が見れるなら馬鹿になるほどそう言ってやるのも悪くないと思った。

(スモーカー)

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とある島で出会って家族になった半ミンク族のナマエはまだ幼い子供のような見た目の犬のミンクだという
普段は頭を撫でられればしっぽをブンブンと振り回して喜んで、怒られた時には耳もしっぽも垂れ下がって悲しんだ
みんなの可愛い白ひげ海賊団の末妹である、彼女がどれだけもう16歳の立派な戦士だと言ってもここじゃあ子供扱いなのだ、だがある日の宴の席はあまりにも綺麗な月だった
それをみたナマエの身体がおかしく進化した、ミンク族を知る奴らは"月の獅子"だと呼んだ、確かそれは意識がなくなって暴走をしてしまい最後には死ぬのでは?と本で読んだ内容を慌てて思い出したが
思わず目を丸くする、あんなにチンチクリンのガキのナマエがスラリとした手足、豊満な胸、キュッとしたヒップに細く抱きたくなる腰、長く伸びた髪に大きく丸い瞳、誰が見ても大人の絶世の美女がいた
鼻の下を伸ばして喜ぶ連中と何も分かっていないナマエ、混乱しながらも
「おめェらみてんじゃねぇよい!!!」と叫んだ真っ赤な顔したマルコ隊長の声が夜空に響いた

(マルコ)

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