メメントモリ



カタッと音を立てて本が落ちた、長いロングスカートの裾から入って来ようとした手に自身の手を添えた女は目の前の主を見た

「ここでする気ですか」

「あぁ、何か問題が?」

「えぇありますよ、本部ですよ?」

本日のお屋形様業務は終業時刻となった故にお屋形様の専用室の掃除をしていた時突如部屋にやってきた創一に押さえつけられていた智花は言った、興奮気味の彼に何かまた新しい発想を与えられたのか記憶を上書き保存したのかは分からないが定期的に動物としての本能を公に晒す

「鍵はしたし、この部屋には入らないように丈一さんに伝えてるよ」

「まぁ…またあの御手洗清掃時の札を出すようにですか」

「うんそう、智花さんの掃除中って出しておいたよ」

「それはお早いことで、ですが私仕事中ですから」

「僕の仕事が終わったら智花さんも終わりでしょ」

「仕事服でありますから」

言い訳を次々して逃れようとすれば彼はエプロンの部分を手に取って自身の口元を隠すように持ち上げて目を見つめて言った

「男の浪漫だろう」

「同じロマンなら別が良かったです」

こんな俗物のような…と思いつつ諦めた智花に機嫌を良くしてエプロン下のワンピースのボタンを外していく、少しずつ見えていく白い肌に口付けを落として創一の少し長い垂れた髪が擽ったく感じた

「他の人に気づかれてしまいますよ」

「後いるのは夜の人達だしいてもここには来ないよ、まぁ智花さんが大きな声を出したら知らないけど」

「意地悪な人」

「好きな子は意地悪したくなるんだごめんよ」

ちゅっとリップ音が静かな部屋で流れる、首筋に軽く吸いつかれてあぁ見えないような場所でありますようにと願いつつ自身の主人から与えられるものを拒絶することは出来ないと言い訳をした
彼と関係を持ち始めて早一年近くどんな事であれ賭郎本部で事に及ぶ事など初めてであり互いにその背徳感に緊張をした

「脱いだ方がいいですか?」

「いや、たまには趣向を変えてこのまましてみたいんだけどどう」

「構いませんがなんと言うか」

「なに」

「創一様も男の人ですね」

智花の言葉に少しだけポーカーフェイスをわざとらしく崩して子供のようにムッとした顔をする、そう演じていたとしても愛らしくてよく見える綺麗な額にキスを落とした
服の上から胸を触れられいつもとは違い下着や布越しのその感覚は不思議なものであったが服の上から器用にホックを外した創一が更にワンピースの胸元から手を入れて揉んだ、優しくエプロンのみを残して下のワンピースを肩まで下ろされればエアコンを付けて暖かい室内とは言え明るい室内にさらけだされた肌は少し寒いものだった

「僕はさ、揉んでから吸うんだと思うんだけど智花さんはどう?」

「どう?と聞かれましてもそれは創一様のお好みでしょう」

「それもそうだね、でもまぁ智花さんの胸は吸ってから揉んでも反対だとしてもずっと楽しんでられそうだよ」

「褒めてるのですか」

「そのつもり」

そんな意味の無い会話を繰り広げながらも背中を本棚に預ける、高価な本が並んでいるアンティーク系で統一されたこの仕事部屋でこんなことをしているのがバレれば普通はクビだと智花は思いつつ赤子の様に胸に吸い付く創一の頭を抱きしめて髪を撫でた、固まった整髪料の触感と少し顔を寄せれば彼のシャンプーと混じった香水の香りがする

「っん創一様」

「智花さん今は仕事終わりだから」

「創一さん」

「うん、それでいいよ」

いい子だと告げるように彼が唇を重ねる、薄く長い舌が智花の口内を荒らして先程まで摂取していた珈琲の味が伝わる、唾液が互いの口を行き来して鼻息も直接感じる、ぐっと身体を抑えられれば腰あたりに当たる硬い熱の塊にこんなに澄ました顔をしている彼でも人間らしく興奮して求めてくれるのだと考える度智花自身も興奮する

「スカート持ち上げて落とさないでね」

上半身の乱れた衣類を少し戻されて熱にうかされ始めた頭に聞こえた声に黙って従い長いスカートを持ち上げる、中にあるのは薄手の黒いタイツと下着があるだけだったが創一の手が伸びてタイツ越しに撫でる

「熱くなってる興奮した?」

「はい」

「よかった僕だけかと思ってた」

彼の手が智花の手を取り自身のスーツの上からペニスに触れさせる、腰に伝わっていたそれが直接指に感じられて下腹部に大きな熱が溜まるのを感じられる、互いの手で自慰を行うように衣類越しに擦りあうのはまるで初めて行為を知った子供のようだった
創一から手を離され熱の篭もる瞳で見つめれば「そんなに強請らないの時間は沢山あるから」と言われ彼は足元にしゃがんだ

「創一さん膝汚れますよ」

「クリーニング出すから大丈夫だよ」

「っそんなに見ないで貰えますか」

「いやぁ本当智花さんってエッチだよね」

まさか主であり恋人である彼の口からそんな台詞が出ると思わずに智花は呆れてしまう、思ったことを告げた迄かもしれないが今彼女は職場で上司となる男の前でスカートをまくし上げて見られているという行為、それをさせてるのは彼であり興奮しているのは自分だ、はしたないと思いつつも言い返すことが出来ずに物言いたげな顔で見下ろすことしか出来ずにいれば創一は「可愛いって意味だよ」と慰めにならない言葉で布越しのその場に顔を寄せる

「汗で蒸れてますから汚いですよ」

「うん、汗とか今日一日の匂いが感じられる…智花さん来週末くらいに生理来るから休暇申請しておいてね」

「そんなことまで分かるんですか」

「大体だけど」

人間以上のまるでスパコンやAIみたいだと思っていれば擽ったいような足裏に電流が来たように快感が訪れる

「んっ…ぁ」

小さく漏らした声を聞き流しながら創一はじんわりと熱の篭もる智花の中心部を爪先でカリカリと引っ掻いた、まるで匂うように顔を寄せながらも手はそのまま動かして智花はスカートをたくしあげた自身に恥ずかしさが湧き出る
下ろしてしまいたがったが彼女の犬としての性質を理解しているゆえにその命令に背くことは無くじっと肩を震わせ受けていた

「そ、いちさん」

「ベタベタだよ」

「だからおやめ下さいと」

「ごめんごめん、いじめ過ぎたね好きな子はいじめたくなるのが男の子って言うでしょ」

そんな可愛い存在じゃないかと文句を言いたかったがそんな発言できる訳もなく智花は立ち上がった創一を見上げた、まるで深海のように深い彼の瞳の色に引き込まれれば額や頬にキスをされてスカートを持った手をぎゅっと握られる静かなこの部屋の中で動物のように求めようとしている自分達が恥ずかしくも感じながら智花は創一からの口付けを受ける

「智花さんもノリノリだよね」

くちゅっと音がしたのは智花の身にまとった下着のなかだった、白く骨ばった男らしい彼の手が智花のストッキングと下着のなかに入って秘部に触れる毛の感触と愛液の付着した指先が卑猥に音を奏でて部屋の中に広がったように聞こえる
耳たぶを軽く噛まれて舌が耳をいたぶる、秘部か耳の音なのか分からずに智花は目線をスカートを持つ己の手に移すしかできずに快感を受け入れる

「そん、なぁ、っいいです」

「負担かけさせたくないしこっちの方が興奮する」

自分の胸の内で真っ赤な果実のような顔で愛撫を受ける彼女が愛おしく可愛らしく官能的だった、耳元で小さく囁けばきゅっと膣口が狭まりトロリと蜜が溢れ愛らしく思えて唇を奪えば智花はだらし無く唾液を口端から零した

「ッもいい、からぁ創一さっぁん」

「あっイきそうなんだいいよ」

1番気持ちがいいGスポット部分をとんとんとリズム良く叩いてやれば智花がスカートを落として創一のスーツを掴む「いあっ、フゥッッん、ぁ…あ」少し小さな声を出し絶頂をした智花を見下ろしてぐったりとした様子の彼女を気にもせずにズボンのファスナーを下ろす

「智花さん後ろ向いて」

「どこに、入れてたんですか」

「紳士の嗜みだよ」

本棚に手をつけさせて背中を向く智花の言葉に創一はペニスに避妊具を被せながら小さく笑って言った、掃除しても見つからなかったことからポケットか又はわかりにくい場所に隠していたのだなと準備のいい主人にため息をこぼす

「破れてるから後で捨ててね」

「っな!創一さんが今破ったんじゃありませんか」

「敗れてたんだよ、僕はトドメを指しただけだ」

「足寒いんですよ」

下ろすことが面倒だったのかストッキングを綺麗に破いた創一に文句を言う智花に悪びれない様子でもう言っても仕方があるまいとスカートを腰あたりに持ち上げて下着をズラした

「これぞ浪漫だね」

「バカ言わなっっンッ」

文句を言う彼女の言葉も気にせずに性急に奥に押し込めばガタンと本棚が音を立てて奥の本が落ちた、あの本高かったはずなのにと思いつつもこの行為をもう抑えられる訳もなく腰を掴み先程まで愛撫していた右手の中指と人差し指を智花の口に入れる、無言で舐めろという意味を理解して丁寧に爪の間も指紋のひとつでさえ数えるように舐めて智花の体は揺らされる

「はぁっぁそいちさん」

浅く漏れる声に反応して指先で彼女の舌先を遊ぶように触れる、緩く揺れた腰に捕まった本棚も震えていく、熱に浮かされた声の智花が静かに声を漏らす度に奥に欲をぶつけた

「智花さんッきつい」

「すみませ、ぁ…だっ、て」

「興奮してくれてるなら良かったッあ」

「創一さっ、そこぁんやっ」

互いの交わった箇所から甘美な音が流れて互いのアドレナリンが自然と分泌されて野生動物のように求め合う
何冊も本が落ち飾っていたルービックキューブも足元に転がったがそんなことも気にせずに互いの唇を重ねて熱をぶつけては息を吐く、彼女の長いワンピースがクシャクシャになることも考えられずに普段とは違う布地がゴム越しに擦れればそれさえ一種の快感で赤くなったうなじに噛みつき舌でなぞる

「ひっっそ、やめだ、ぁめです」

「いいでしょ明日は髪の毛下ろして仕事したらいい」

「で、ぇすが」

「別に見られてもみんな僕のものだって知ってるから大丈夫…っあ、ほんと気持ちいい」

「ッん、ぁんはぁ」

立ち続けるのも苦しそうな智花の膣内からペニスを引き抜き向き合わせて身体を持ち上げる、困惑する彼女を他所にナカに穿てば創一の身体にまるでコアラのように強く抱き締めて快感から逃れようとする

「そっ、いちさま」

「駅弁って言うんだっけ?」

「しらなっぉ、おっくささっぁてる」

「うん、子宮口まで来てるのがわかるよ」

全体重を受け止めている故に普通の対面座位等よりも奥まで感じられる、膣内のウネリや熱がゴム越しに強く伝わり普段よりも強く膣が締まる為に創一も限界は目の前だった
彼の額には汗がじわりと落ちていく、ガタガタと小さくなる本棚のことも忘れて互いを深く求めて腰を揺らし声を吐く

「そ、いちさっも」

「うん、一緒にイこうね」

「んっや、ぁっイクツッは、ぁあ!」

「僕も…っく」

痙攣をした互いの性器を感じながら智花の力が背中に強く込められて力が抜けたように体重がさらに加わる

「智花さん?智花さん……寝てるのか」

労働後にここまで激しく動いた故に疲労が彼女を襲い眠気に変わってしまった、小さく寝息を立てる彼女の額にキスをして創一は片付けをしていく

ちゅんちゅんと雀の鳴き声と共に目を覚ました智花は寝巻き姿で枕元の時計を見れば時刻は8:10を指していた、飛び起きようとしたところ隣には創一が眠っており驚き声も出なかった

「ん、おはよう智花さん」

「創一様申し訳ございません、朝の準備が今から」

「いやいいよ、それよりまだ一緒に寝てようよ」

「ですが」

「それともベッドで次はする?」

その言葉に智花は静かに布団の中に潜れば彼の長い手足が絡められる、何も言えずに黙って隣を見れば彼はまた静かに眠ってしまった、昨日の行為後のことを覚えておらずまたこの部屋が自分の自室であることを理解しているゆえにパニックになってはいるが眠った彼を起こせる訳もなく綺麗な天井で見つからないシミを探し続けた勿論隣に眠る主人が目覚めるまで。

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