負け犬の遠吠え>
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Hard to Get ヴォルデモートとその支援者たちは言うまでもなく純血主義を標榜している。
しかし現在の魔法界に、完全なる純血の魔法使いや魔女は圧倒的に少ないのだ。
「ポイント制なのだとマルシベールは笑っていた。私も笑うしかなかった。ホグワーツを真似たのかもしれない。しかしどちらかというと、生まれ育った下町の、マグルのスーパーマーケットのようだと思った」
穢れた血や、血を裏切る者を害すれば5点、命を奪えば10点、怯えさせるだけでも1点……
「貴公にも点をやろうと言って肩を叩かれた。おそらくはあのときに仕込まれたんだろう」
点を溜めれば、例えば4分の3マグルの血が入っていても、半純血と同等に扱われる。
「それくらいしないと、少しでも血の濃い魔法使いで配下を固めることもできないのだ。純血はそれだけで価値がある」
スネイプが悪徳の限りを尽くし、それでようやく得られる椅子に、純血の魔法使いは……ジェームズ・ポッターやシリウスは初めから座っている。
「そんなもの要らない」
ジェームズは吐き捨てた。
「ああそうさ、僕のところにも勧誘はあった。こんなにもダンブルドアに近しい僕にすら!」
「優秀だからだろう。才のある純血の魔法使いを仲間に加えた者にも10点だ」
スネイプが自分を評した言葉に、ジェームズは動揺ししきりに眼鏡を押し上げた。
「……すまなかったな。祝いの場を台無しにした」
「君本当にスネイプ?」
「ジェームズ!」 リリーが、白い布製のハイヒールでジェームズの靴を踏みつけた。
「リリーも、すまない」
「……いいえ」
「改めて、おめでとう」
「ありがとう」
「幸せに」
「ええ、勿論……必ず」
スネイプはその場を姿くらましした。空は再び青く美しく、先ほどの恐ろしい闇の余韻は欠片もなかった。シリウスはやっと地面から腰を上げ、軽く尻と膝を掌で叩いた。
「くそっ、レギュラスお前な。モーニングが汚れただろうが。一張羅だってのに」
「マグルの服なんて着てるから」
レギュラスはしゃあしゃあと言ってから、魔法でシリウスの衣服の汚れを取り去った。
「それで―――話の続きだ。これ、しばらくお前持ってろ」
シリウスは魔法で呼び寄せた小さな手鏡をレギュラスに渡した。
「何これ?」
「さっきので分かったと思うけど、最近は物騒だ。何あったら俺を呼べ。俺の持ってる鏡と繋がる」
両面鏡だ。学生時代にジェームズと持ちあってよく使っていた。
「何かって何? どんなこと?」
「だから、さっきみたいなことだよ」
レギュラスは物珍し気に鏡を眺め、不審な目つきでシリウスを見上げた。
「やけに過保護なんだね」
「そうでもないだろ。死喰い人に狙われたらどうする」
この弟が、死喰い人やヴォルデモートと接触した様子は今のところ見られない。と、思う。多分。おそらくは。しかし以前のレギュラスが闇の魔法使いに与したのは、おそらくこのくらいの時期だろう。スネイプもだ。彼は、本当にそれを回避したのだろうか? シリウスはまだ信じられなかった。リリーとジェームズのようには。
「何それ。我が家が死喰い人に襲われる理由ってなくない? うちの血統馬鹿にしてるの?」
「そうじゃなく。さっきの話聞いてただろう。……勧誘されるかも。お前が」
弟は目を見開き、途端に幼い顔付きになった。
「僕? 長男を差し置いて?」
「俺は自分で何とかできる」
長子だという、彼の言葉を否定しなかった。自分の名前はまだあの家の家系図の中にあった。
「でも僕まだ学生だし。ないと思うけど」
「いいから持っとけ。安心させてくれ。何かあったらすぐ連絡しろ。いいか、俺に黙って勝手なことするなよ」
念押しし、鏡を持つレギュラスの手をぐっと押した。
「分かったよ。そこまで言うなら持っておいてあげる。感謝してね」
「……おう」
「兄さんも」
「あ?」
「兄さんも、危ないことしないでね」
思わず、かけたこともない眼鏡を押し上げたくなった。
「あ、ああ、大丈夫だ」
「本当に?」
「本当に。俺は、お前が……俺自身が思ってたよりずっと臆病者だから」
「そうなの?」
「ああ。俺は、自分がこんなに弱い人間だとは思わなかったんだ」
風が吹き、緑のガーデンのそこかしこに落ちた白い花弁を吹き上げた。やっと、また、弾ける笑い声。白いベールが揺れる。
「そう。……でもそれで、いてくれるなら、僕はそっちの方がいいよ」
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