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 いい加減横にいる桂が鬱陶しくなった橘香は文句を言おうと口を開いたが、言葉を発する前に周りが騒がしくなった。

「攘夷志士桂小太郎殿とお見受けする。我等はそこの女に用があるゆえ、こちらに引き渡しては貰えぬだろうか」

 ザザッと帯刀した七人の男達に囲まれ、橘香達の目の前に立ち塞がった男が言った。
 今いる長屋の通りは人通りが少なくと人拐いも比較的しやすい場所ではあるが、こんな昼間から何故自分が狙われているのか橘香には心当たりが無かった。

大方おおかた、お前を人質に真選組を潰そうとする過激派だろう。戦えぬのなら逃げろ」

「…それ誰に言ってんの?」

 橘香は帯の後ろの結び目に隠した短刀程の長さの木刀を引き抜くと目の前の男の眉間を真っ直ぐに突いた。

「き、貴様ァァ!!」

「大人しくしていればいいものを!!」

 倒れた男の両側にいた男達が刀に手をかける前に橘香は木刀を横に振り抜き、右側の男の頬を殴りつけるとそのまま振り上げ、もう一人の男の頭上に振り下ろした。
「ガハッ」という呻き声を聞きながら素早く反転し、背後に迫っていた白刃を木刀で受けると桂が残っていた四人を一気に斬り伏せた。
 血が出ていない所を見ると、どうやら峰打ちのようだった。

「腕はにぶっていないようだな」

「まぁ、コレのお陰でニートに成らずに済んだようなもんだしね」

「それはどういう…「カーーツラぁぁぁ!!」」

 パトカーのサイレンが聞こえてきたと思ったら、桂の名を呼ぶ大声と共にドゴォンとバズーカが撃ち込まれた。
 橘香は衝撃で吹っ飛ばされ、ガシャンと長屋の戸をぶち破った。

「チッ、真選組か。橘香!話はまた今度聞く!!さらばだ!!」

「待ちやがれェェェ!!」

 脇目も降らず走り出す桂と追う真選組の隊士達。
 誰も橘香を気にかける様子はない。

「あり?橘香さん、そんな所に這いつくばって何やってんですかィ?餌場えさばは向こうですぜ」

 バズーカを抱えた沖田が指差すのは野良猫達が漁るゴミの入ったポリバケツだった。

「誰がゴミなんか漁るかァ!!もう、ハゲろ!!お前等全員ハゲちまえ!!」

 あまりの踏んだり蹴ったり具合に自棄になった橘香は暴言を吐いて、「わあぁぁぁぁ」と逃げるように走って帰った。
 もうイヤだ!!当初の目的だった銀時くんには会えたし、早いとこお金貯めて江戸を出てやる!!田舎に帰ってやるゥゥゥゥ!!
 橘香は密かに決意を固めた。

「何だ、アレ?」

「さぁ?でも、すっかり化けの皮が剥がれてきてらァ」

 その後ろ姿を沖田と土方がよく分からないまま見送っていた。




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