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「…ありゃ万事屋のトコのチャイナ娘じゃないのか?何故姫と」
橘香の隣で同じように手を翳し、成り行きを見ていた近藤は不思議そうに言った。
その横で「さァ」と興味なさげな返事をしつつ、パトカーからバズーカを取り出した沖田。
「ちょっとォ!総悟君!何やってんの物騒なモン出して!」
「あの娘には花見の時の借りがあるもんで」
「待てっ!!姫に当たったらどーするつもりだァ!!」
「そんなヘマはしねーや。俺は昔スナイパーというアダ名で呼ばれていたらいいのにな〜」
「オイぃぃぃぃ!!だだの願望じゃねーか!!」
「夢を掴んだ奴より夢を追ってる奴の方が時に力を発揮するもんでさァ」
「…別にここで発揮しなくてもいいよね。総悟君」
子供みたいな理由をつけて保護対象ごと吹っ飛ばそうとする沖田を必死で止める近藤に呆れた目を向けながら、橘香は一体どういう育ち方をしたらこんなブッ飛んだ思考になるんだろうと考えていた。
そんなグダグダしたやり取りを無視して土方は身を隠した神楽に呼びかける。
「チャイナ娘出てこい!!お前がどうやってそよ様と知りあったかは知らんがそのお方はこの国の大切な人だ。これ以上俺達の邪魔するならお前もしょっぴくぞ。聞いてるか!」
「土方さん、いたいけな少女の説得に脅しは逆効果じゃないですか?」
「あの娘がこんなんでビビるタマかよ」
「いや、どちらかというと今後の真選組のイメージの方が問題かと…」
遠巻きに野次馬がヒソヒソしている。
街中で少女に脅しをかけるチンピラ警察とか噂されそうだ。
顔バレしないように橘香は帽子を深く被り直すと、再び屋根の上に視線を戻した。
暫くして貯水槽のある建物の屋上からそよ姫だけがそっと姿を見せた。
「早く保護しろ!!」
隊士達がバタバタと慌ただしくそよ姫のいる建物へ向かって行く。
もう日も暮れてきている。
いい加減面倒臭くなった橘香はため息を一つ吐くと強く地面を蹴りつけ、走り出した。
その先で背中を向けていた近藤を思いっきり踏みつけて片足で跳躍すると、近くの店の軒先を逆足で蹴って橘香は屋根まで上がり、駆けて行く。
「!?橘香君んんん!!」
ギャアギャア騒ぐ近藤達を無視して橘香はそよ姫の元に辿り着くと、今度は「失礼」と彼女に一声かけて抱き上げる。
そして躊躇することなく屋上から飛び降りた。
一層騒がしくなる外野を尻目に難なく屋根ずたいに降りた橘香は最後にそよ姫を地面へと降ろした。
「警察の方って凄いんですね。あんな高い所からあっという間に降りてしまえるんですもの」
キラキラとした目で見つめてくるそよ姫に橘香は苦笑を返す。
まさか、昔近道だからと米や野菜を担いで山を駆けていた経験がこんな所で役に立つとは思ってもいなかったのだから。
「今日は皆さんに御迷惑をお掛けしてしまったんですけど、…私すごく楽しかった。色んなことを教えて貰ったし、初めて友達が出来たの」
そう言って少し寂しそうにするそよ姫に橘香は言った。
「じゃあ、まずは手紙でも書きましょうか。お城に呼んだりするのもいいかもしれませんね。…今度はちゃんと許可を貰って会いに行きましょう」
きょとんとするそよ姫に橘香が「普通とは違っていてもお友達と遊ぶ方法はきっとたくさんありますよ」と言えば、
「そうですね!」
そよ姫は嬉しそうに笑った。
そうして橘香はこの後駆けつけた土方に殴られ、近藤に「姫に何かあったらどーすんの!!全員漏れなく打ち首だからァ!!」とこっぴどく怒られた。
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