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よく爺さんもこうやって介抱してあげてたっけ。
「さてと、私も帰る……アレ?」
やっと一息ついた所で橘香は自分が万事屋を出た後、誰かが内側から鍵をかけてくれなければ帰れないことに思い至った。
橘香のいた田舎とは違って都会は何かと物騒だ。
「お、起きて!起きてェ!!お願い、銀時くん!橘香が帰った後に鍵閉めて欲しいなァ」
「グーー」
なるべく小さな声で布団の上からペシペシと叩きながら橘香は銀時を起こそうとするが、銀時が起きる様子はなく、寝返りついでに橘香の顎にガッと肘打ちを入れた。
「!!グフッ」
あんまりな仕打ちにこいつホントは起きてんじゃね?と思いつつ、橘香は銀時を起こすのは諦め、今度は神楽を起こすことにした。
「起きて、神楽ちゃん!神楽様!!ちょっとでいいから。鍵閉めるだけだから。お願い、酢昆布あげるからァ!!」
万事屋の居間兼事務所にある狭そうな押入れの襖を開けて、気持ち良さそうに寝ている神楽に橘香は必死に声をかける。
「…うるさいネ」
ベシャアッ
「!!ガハッ」
揺さぶり起こそうとする橘香の後頭部を神楽は眠りながらガシッと力強く掴むとそのまま寝床である押入れの中段板へと顔面から叩きつけた。
鼻が潰れるゥ
床に倒れて悶絶した橘香はこれ以上、二人を起こすことは自分の身が持たないと感じ、神楽の寝床の襖をそっと閉め、和室の押入れから勝手に毛布を引っ張り出すと何故か居間の隅に猫のように丸まった。
今の季節は風邪を引く心配はないし、意外と掃除が行き届いていて床で寝ても問題はなさそうだ。
幸い明日は休みで何の予定もない。
一晩泊めさせてもらおう。
そう決めて橘香はソッと目を閉じた。
まともそうに見えた橘香だが、知っての通りかなり酔っている。
誰か人が居る場所で眠るのは随分と久しぶりで寝息や寝言、鼾が聞こえていつもより煩いのだが不思議と嫌ではなかった。
翌朝
前日酒を飲んでいたこともあって橘香は万事屋に新八が出勤して来ても、大声で銀時や神楽を起こしても、起きなかった。
三人がテレビで結野アナの天気予報を見ながら朝食を食べても起きなかった。
そして、昼過ぎにやっと目の覚めた橘香は寝惚けながら這うように椅子の影から出た為、ちょっとした騒ぎになった。
「「ぎゃあああああ!!」」
「あっ、橘香アル」
「橘香さん!!?いつからそんな所に!?」
「バッキャロー!!驚かせんな!!」
「…帰る」
ギャーギャー騒ぐ三人を置いて橘香はふらりと外へ出た。
日の下で体を伸ばすとあちこちが痛かった。
とんだ休日になってしまった。
眠いし、お酒はやっぱり苦手だ。
そう再認識して橘香は賑わう歌舞伎町を歩き出した。
「で、結局何で橘香さんはあんな所で寝てたんですか?」
「銀ちゃんのせいネ!昨日、酔った銀ちゃんを連れて帰ってきたアル」
「あー、じゃあ二人が寝ちゃって帰るに帰れなくなったのかな?今度、ちゃんとお礼言ってくださいよ。銀さん!」
「おー」
(ヤベー、昨日の飲み比べ負けた気ィすっけど金払ってねーし。……アイツ忘れてくんねーかなァ)
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