B



「橘香さーん、すみません。客間片づけてもらえませんか?」

「はい、いいですよ」

 通りすがりの隊士から頼まれ、昼食の仕込みが一段落ついていた橘香は割烹着と三角巾を脱いで、二つ返事で客間へと向かった。
 急がないと休憩がてらの昼食を食いっぱぐれてしまうと縁側を小走りに進む。

「!う、わっ」

 角を曲がったところで橘香は何かに蹴躓いてすっ転んだ。

 ガンッ

「イテテ、誰だこんなとこに……」

 柱にぶつけた額をさすりながら足元を見るとそこにはバズーカが転がっていた。

「えっ、なんでバズーカ!??どうやったらこんなところに落としちゃうの??……つーかコレ、触っても大丈夫なのかな」

「なんでェ、橘香さん。バズーカに興味あるんですかィ」

 いくら武装警察の屯所で働こうとも橘香は一般人である。
 武器であるバズーカに触って許されるのかと一人、首を捻っているとひょっこり沖田が現れた。
 沖田は床にへたり込んでいた橘香の腕を取って立たせると落ちていたバズーカをその肩に「よいしょ」と乗せた。
 そして、中庭を挟んだの向こうの部屋を狙うように構えさせる。

「えっ!?ちょっ、沖田さんんん!??」

 背後から体勢を固定されて乗せられたバズーカを放り投げるわけにもいかず、橘香が戸惑って動けない内に、沖田の手によって無情にも発射された。

「死ねェェ、土方ァァァ!!」

 ドオォォォン

「ぎゃああああ!!ウソでしょ ォ ォ
ォ!!」

 見事に命中してしまった部屋は焼け焦げ、障子は吹っ飛び、ヒラヒラと舞っている紙は灰になっていく。

「総悟ォォォ!おまっ、なにしてくれてんだァ!!」

 あちこち焦げた土方がまさしく鬼の形相で部屋から出て来ると沖田に怒鳴り始めた。
 それを見ながら橘香はパニックを起こしていた。
 えっ?あれ副長の部屋なの??えっ?じゃあ、あの燃えてるのは仕事の書類なの??えっ?ってか今、土方さん部屋から出て来たよね!?もしかして一歩間違ったら私、ちゃってたんですか!??

「チッ、しくじったか」

 忌々しそうに呟かれた沖田の言葉にプチンと橘香の中の何かが切れた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」と叫びながら橘香は乗せられていたバズーカをぶん回し、その弾みでガンッと沖田の顎を打ち抜き、そのまま土方へとぶん投げた。

「なんでだァァァ!!」

 ゴシャ

 バズーカ(本体)は見事に土方の腹に命中した。



.

- 4 -
←前 次→