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そんな疑問を抱きながら橘香はやんやと応援で盛り上がる隊士達の間を縫うように進むと前方にいた大柄で目立つスキンヘッドの十番隊隊長、原田右之助に声をかけた。
「コレって何してるんです?」
「何って、この場所を賭けての叩いてかぶってジャンケンポン三本勝負に決まってんだろ」
「へぇ、……で花見は?」
「それはこれから……って、うおっ碓井!?何でここにいるんだ?」
「とあるお人からの命令で団子買ってきたんでさァ」
驚く原田に橘香が江戸っ子口調で団子屋の袋を掲げて見せると納得したような気の毒そうな顔で「あ〜」と頷いていた。
同情するならヤツを黙らせて欲しい(切実に)。
当の本人はチャイナ服の女の子と例の叩いてかぶってジャンケンポンなるものをピコピコと高速でしていて団子のことなどすっかり忘れているようだ。
「それはそうと、誰ですかあの人達は?」
「知らねーのか?万事屋だよ。何でも屋らしいがどうも真選組と折り合いが悪くてなァ。しかも、局長の惚れた女も一緒にいるもんだからこんなことになってる」
どうやら近藤さんは意中の女性に物理的にもノックアウトされたということらしい。
それって思いっ切り嫌われてるんじゃないだろうか?
それとも、嫌よ嫌よも好きのうちとか照れ隠しだろうか?
色恋に疎い橘香が二人の関係性をイマイチ理解出来きないでいるといきなり、ドンと何かがぶつかってきて地面に倒れた。
「いたっ、つーか重いィィィ!!退いてください。沖田さん!!」
「邪魔でィ」「もがぁぁっ」
考え事をしていたのが悪かったのか、うつ伏せに倒れた拍子に橘香は沖田に踏まれた。
さらに、その沖田のマウントを女の子が取って殴りかかってくるので余計に逃げられず、上の二人が暴れる度に橘香はアチコチに拳や肘を食らった。
「だからルール守れって言ってんだろーがァァ!!」
眼鏡の少年、ツッコミはいいから助けろよ!
橘香の願いも虚しく、少年の興味は酔っ払い達へ移ってしまった。
もはや、ヘルメットを被ったまま、ただの殴り合いをする二人では勝敗はつかないと判断したのだろう。
「いい加減、退け!!」
何とか体を捻って、橘香は沖田を蹴り上げる。
女の子諸とも吹っ飛んでいくが二人はこちらには見向きもせず、再びピコピコハンマーを構えて睨み合っている。
「大丈夫か?碓井」
「どこを見たら大丈夫に見えるんですか!?」
いつの間にか団子を救出していた原田や他の隊士達は宴会を始めていた。
どうやら皆で花見をすることになったらしい。
だったら最初から仲良くすればいいのに……
「さぁ、ゴリラも静かになったことだし、貴方も一緒にお花見しましょう」
にこりと笑ったあの綺麗な女性に勧められ、橘香はとりあえず花見に参加することにした。
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