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「真選組にも女性の方がいらっしゃったんですね。私、志村妙っていいます。そこの眼鏡の姉です」

「姉上、そこの眼鏡って……えっと、初めましてですよね。志村新八です」

「ご丁寧にどうも。真選組で女中をしております。碓井橘香と申します」

 橘香が花見の和に加わり、そばに座った志村姉弟が自己紹介をしてくれたことで、そういえば名前も知らなかった人達と一緒に花見をしてたんだなぁと橘香は改めて思った。

「銀さん!神楽ちゃんも!橘香さんとは初対面なんですから挨拶くらいちゃんとしてください」

 新八が声をかけたのは土方と飲み比べをしている白髪の男と沖田と遊んでいるチャイナ服の女の子だった。
 どちらも話を聞いていないのか無視しているのかこちらを向く素振りすらなかった。
 あーあー、桜の木が切り倒されてる。

「すみません。僕等は歌舞伎町にあるスナック『お登勢』の二階で万事屋をやってるんですよ。」

 気を使った新八が説明してくれるが橘香は四つん這いになって吐いている白髪の男から目が離せないでいた。
 癖のある白髪の頭、死んだ魚のような目、ぶっきらぼうな口調と嫌味な言い回し。
 それらに橘香は覚えがあったからだ。

「ーー銀時くん?」

 いやいやいや、ないないない、これはないって。
 私の知ってる銀時くんはもっと立派な人間になってるって。
 あんな公共の場で醜態さらすような駄目な大人なワケないじゃん。
 きっと何処かで元気で幸せに暮らしてるんだって!
 橘香が思わず自分の中で浮かんだ可能性を全力で否定していると、新八が不思議そうな顔で尋ねてきた。

「あれ?橘香さん、銀さんと知り合いだったんですか?」

「新ちゃん、失礼なこと言わないの!橘香さんがあんな駄目人間と知り合いなワケないでしょう」

「いや、姉上の方が失礼ですよ」

「……」

 約二十年ぶりに再会した昔馴染みはある意味ちっとも変わっていなかった。
 思わぬ所で探し人を見付けてしまって、拍子抜けだ。
 団子屋で花見ならばと勧められた三色団子を一本頂戴ちょうだいして、橘香は立ち上がった。

「あら、橘香さん。もう帰ってしまうんですか?」

「ええ、元々団子を届けに来ただけですし。用事も思い出したので」

「そう、残念だわ。もっとお話ししたかったのだけど……あっ、そうだわ。良ければコレ、お近づきのしるしにどうぞ。卵焼きなんです」

 そう言って橘香との別れを惜しんだお妙がタッパーを差し出した。
 何故か急に新八が慌てる素振りを見せたが、特に卵焼きが嫌いでもなかった橘香は「ありがとうございます」と言って受け取った。

「今度、味の感想聞かせてくださいね」

 にこやかに手を振って見送ってくれたお妙に軽く頭を下げて、橘香は公園を後にした。
 騒がしかったが久々に楽しい時間だった。

「お妙さんの手作りなのかな?近藤さんに自慢してやろーっと」

 橘香は浮かれ気分でスクーターを走らせた。



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