
廻り廻る四季の中、君はだんだんと年を重ねる。優しい笑顔は何時までも変わらないのに、1年、また1年と歳を重ねていくその姿は年々と僕らとは違い変化していく。
「主も……僕を置いてくの……?」
「……よ」
君が歳をとるたびに、僕から離れていく気がしていた。“遂に終わりが来てしまった”そう気づいたときには、もう君は言葉を紡ぐことすらできなかった。弱弱しく伸ばされた手。縋るように握りしめた手は、ただ、ただ、冷たかった。その時の言い表せようもない喪失感を未だにも鮮明に覚えている。
*
「やーすーさーだ!!」
「朝から声が大きい」
「えへへ、おはよう!また沖田総司の本読んでるの」
「おはよ……別にいいだろ」
それよりも早く席に戻りなよ。本を開く両手をそのままに、顎で遠くにある後方の彼女の席を示す。
「ほんと相変わらずだね」
「なに、今更」
なぜか彼女は満足げに微笑んでいた。
*
「安定、お昼食べよう!」
「うん、丁度の後ろの席開いてるから……って、ちょっとなに?!」
「行きたいところがあるんだ」
女子の割には強力な腕力で引っ張られ、椅子から慌てて立ち上がる。強くひかれる勢いで、前を行く小さな背中にぶつからないようにともつれそうになる足を何とか動かしながらついていく。お弁当と水筒の入った手提げを片手に、階段を駆け上がる彼女の一瞬見えた横顔がなぜか懐かしく感じたのは気のせいか。
「ねぇ、この上は屋上……」
「そうだよ」
「そうだよって、屋上は立ち入り禁止でしょ?」
「ふふふ……」
初めて見る銀色の重そうな扉。その前で彼女は不敵に笑う。その顔にはなぜかひどく見覚えがあった。
「じゃーーん!!」
捻られた扉は、予想外にもいともたやすく開かれた。瞬間、階段を駆け下りるように流れこむ風が彼女の髪を攫う。
なんで?どうして?目を瞬く僕に、彼女はしてやったりと悪戯な笑みを浮かべる。
「今日、職員室でたまたま聞いちゃってね。ここ一週間は、屋上の設備点検のため開いてるんだって!」
安定、青空好きでしょ?
(安定、また青空見てるの?…ふふ、そうだよね)
(好きなんだよね、この色)
(大好きなあの人の色だもんね)
ああ、そうだ。
そう言って笑う、記憶の中の誰かもわからぬあの人は寂しそうだった。
なんで目の前の君は、今。
あの人と同じ表情をしているのか。
「…馬鹿」
「…え?」
気が付けば腕の中に閉じ込めていた。無抵抗な小さい背中に腕を回せば、そこはぬくもりにあふれ温かい。そうだ生きている。そんな実感が胸に沸き上がる瞬間、どうしようもなく胸が締め付けられてたまらない。
「ここにいる……」
「安定、ちょ、なにして……」
「僕は、ここにいるから」
誰よりも、君の傍で、君を守るから。
すると君は、安心したように、身をゆだねるように目を閉じた。
これから触れ合う唇は、間違いなく熱を帯びているのだろう。
