ーほどかれた指 02ー




「ティナ聞いて、僕は魔法使いらしいんだ。」

トムが突然そんな事を言った。
その顔は真剣そのもので、ぽかんと口を開けたティナは言葉が出なかった。

「昨日、魔法使いのお爺さんが僕は魔法使いなんだって言いに来たんだ。」

「トムが、魔法使い? 」

「うん、その人が言うには僕の不思議な力は魔力を根元にしたものらしんだ。」

「すごいわトム!
私、魔法使いを見るのは初めてよ!夢見たい……とっても素敵だわ!」

トムに飛びついたティナは力一杯トムを抱きしめた。トムの力がステキなものだってやっと証明されたのだ。嬉しくて仕方ない。ティナを抱きとめたトムは優しく抱きしめ返しティナの額にキスを落とした。自分のことのように喜ぶティナが愛おしい。

「それでねティナ。ティナに大切な話があるんだ。僕は魔法を学ぶために魔法の学校に通わなきゃいけない。」

「魔法の学校なんてとってもステキ!きっとお菓子でできた部屋や星降る天井があるわ!トム、本当にステキだわ! 」

「……それでね、そこは全寮制なんだ。」
「えっ…」

全寮制と言った瞬間ティナの顔が曇った。てっきりここから通うと思っていたのだ。そして寝る前に魔法の話をたくさん聞かせてもらえると夢見がちにそう思っていた。少し考えればそれは難しいことだが、ティナはそれだけ舞い上がっていた。

「それじゃあ、トムに会えなくなっちゃうわ。魔法の話も聞けない。トム、いやよ、私きっと耐えられない。トム置いて行かないで。」

いきなりトムと離れ離れにならなければいけないという現実はティナの前に大きくのしかかった。トムがいない生活なんて考えられなかった。数ヶ月前までは一生現れないと思っていた理解者なのだ。

「僕も、離れたくない。
でも、僕の魔力は感情によって暴走することがある。君を傷つけるわけにはいかない。だから、僕は力をコントロールする方法を知らなきゃいけないんだ。」

「そ、んな。まってトム!私、強いわ!トムの力が暴走してもきっと側に居られるはずよ! 」

悲痛に叫ぶティナの背中をトムは優しく撫でた。

「ティナ、ごめんね。
毎日君に当てて手紙書くし、長期休暇は絶対誰よりも早く帰ってくる。ティナのためにお菓子やお土産も抱えきれないほどの買ってくるよ。だからお願いだ、泣かないで待ってて欲しい。」

「お菓子なんていらないわ!貴方がいれば!私だって貴方しかいない…!」

最初で最後のティナの我儘だった。私も共に行きたいとそう涙ながらに訴えた。しかしトムはそれ出来ないと告げる。目の前が真っ暗になりそうだった。

頼んだけれどできなかったと。

トムは泣きつくティナの手にそっと手を被せ抱きしめることしかできなかった。




《10/18》
しおりを挟む
戻る TOP
ALICE+