ーほどかれた指 03ー



 
それからというもの、ティナ最後の抵抗だと言わんばかりにトムを避けた。部屋にこもり生活の全てを部屋の中だけで過ごした。シスター達は心配で仕方なかったが何も言わず、ご飯やお風呂用のお湯を運んでくれた。

トムが魔法魔術学校に通う。

ティナにもそれが必要なことで、覆らないのは分かっていた。しかし、どうしても寂しさが勝ってしまい受け入れることができなかったのだ。
部屋にずっとこもってトムが会いに来ても突き放した。

「ひとりよ。また、ひとり。」

トムに置いて行かれたら私はまた一人になってしまう。シスターや子供達も優しくしてくれるけれど、愛情を向けてくれるけれど、それはニンゲン≠フティナにであって、蛇人間≠フティナじゃない。
ばれたらきっとまたひとり。罵られて、嘲られて、蔑まれる。それがティナはたまらなく怖かった。味方でいてくれるトムがいない。それが、辛い。


「トム……」

トムが帰ってくるっていうならきっと帰って来てくれる。誰よりも早く、両手を沢山のお菓子とお土産で一杯にして。そんなことは分かっていた。トムが何よりティナを大切にしてることもわかっている。
それでも寂しさはティナの心に爪を立てる。

トムがいないと、私ダメなのよ。
トムがいてくれないと、さみしい。
トムがいてくれないと、かなしい。
トムがいてくれないと、ひとりだ。

これが独りよがりの我儘なことも最初からわかっている。わたしが部屋から出ないことでトムが心を痛めて悩んでいることも。

「トム、ごめんなさい」

でも、どうしても、どうしても離れたくない。その気持ちだけが病の様にティナを蝕んでいく。

わがままでごめんなさい、トム。
そう言ってティナはまた涙を流した。



《11/18》
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