ー触れる指先 02ー


2ヶ月が過ぎて雪が地面を覆い隠す事が多くなった12月の暮れ、ティナはトムを探して寒々しい廊下を歩いていた。
ミュータントであるティナは身体能力の一部が蛇に寄っていて体温調節機能が弱い。寒さは直接ティナを冷やしていく。息が白く鼻は赤くなっている。珍しくシスターを見かけないが何処にいるのだろうか。
大広間からは孤児達の騒ぐ声が漏れだしていた。未だにティナは孤児達と話す機会は少ない。シスター達はその顔(かんばせ)の異様さのあまり他の子と会わせてはじき出される事を危惧していたし、何よりトムが嫌がった。
しかし、もう探していない場所は大広間しかない。トムが居るとはあまり思えなかったが好奇心が勝ってティナは大広間に足を向けた。

木でできた大きな扉を開けると、子供達はツリーに飾りをつけたり大広間を飾り付けたりしていて、そう言えばもう直ぐクリスマスかと考える前ティナに気づいた子供たちが一斉にこちらを向いた。無数の目がこちらを刺すように見つめてくる。その居心地の悪さにティナは声を振り絞りった。

「あの、トムは……」

ひそひそと子供達の囁き声が木霊する。足がすくんで言葉が震えた。

「ティナ!」
子供達の間を縫って走り抜けてきたトムは子供達を睨み荒々しくティナの手を引いた。
「ト、トム!い、痛い!」

ティナの声は届かずトムは腕をぐいぐいと引っ張っていく特別に用意されたティナの一人部屋に着くまでトムは手を離す事は無かった。

トムが手を離す頃にはティナの腕は赤く鬱血していた。
「ごめん、痛かったよね。」
「大丈夫よ、トムどうしたの?」
「彼奴らはティナの事を化物だって罵っていたくせに最近は君に取り入ろうとしてる。卑しい奴らを君に近づけたくない。」

ティナは瞳を揺らした。これは明らかな苛立ちと怒りだ。


《6/18》
しおりを挟む
戻る TOP
ALICE+