ー触れる指先 04ー



それから黙り込んでしまったトムの横にティナは静かに寄り添った。
暫くしてトムが口を開く。

「ティナが一番だって言ってくれたように僕もティナが一番だよ。君しかいない。でも、僕が先走って君を傷つけてしまった。」
未だにほんのり赤らんだ腕をトムはそっと撫でた。

「大丈夫、大丈夫よトム。」
「大丈夫じゃないよ。ごめんねティナ。君がここで有名になって優しくする人が増えて、そうしたら君がそっちに行ってしまうんじゃないかって心配で仕方なかった。
一人になりたくなくて、信用できなかった。でもそんな僕にティナは一番だって言ってくれた。」
トムの目には涙が溜まった。初めて見たトムの涙をティナは必死に掬う。真珠のように光溢れるそれは温かくて優しかった。

「……嬉しかった。」

今までで見た中で一番慈愛のこもったその瞳はティナを縫い付けて離さない。

「トム……」
「だからもう絶対君を傷つけないし傷つけさせない。誰からも。僕であっても。約束するよティナ。」

そう言うとトムはティナの手をそっととって指先にキスを落とした。10歳の子供がするにはあまりにもませたその動作は自然と様になっている。
「大好きだよ、ティナ。」
「私も大好きよ、トム。」

その日、部屋の隅でお互いの体温にみをよせあって静かな時間を2人で過ごした。
心配したシスターが2人で眠る天使のような寝顔を見つけるその時間まで。


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