降谷さんと大晦日におでんを食べる話
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大晦日、もうあと数分で新年を迎えようとしているというのに暗い公園のベンチで一人虚しくコンビニで買ったおでんを食している部下を見つける。
出汁が染み込んだ大根を大口開けて食べようとしたまま固まっている部下に再度声をかけた。
「こんなとこでどうした」
「鍵を無くしました」
「家の?」
「家の」
「鍵会社に連絡したのか」
「しました。ただ、明日までお休みとのことて途方に暮れてたらお腹が空いたので取り敢えずそこのコンビニで…」
「おでんを買ったのか」
「はい」
「・・・・」
「あっ、でも電車が動く時間になったらカプセルホテルに行く予定なので…」
「あと四時間ぐらいあるが?」
「漫画喫茶を探します」
「大晦日にか」
「や、やってるかもしれないじゃないですか」
「何故頼らない」
「え?」
「君が一言、僕の家に来たいと言えば…」
「行っていいんですか⁉」
「・・・・」
「年越し蕎麦とかお節とか用意されてるんですよね!風見さんが言ってましたよ!それも食べていいんですか⁉」
「急に厚かましいな。それに蕎麦を食べる時間はもうない」
「うわー!降谷さんの手料理がたべられる!」
聞いているのか、いないのか「やったー!」とおでんを持ったまま両手を上げて喜ぶ彼女に降谷の口元も緩む。
「寒い中、我慢した甲斐がありましたよ!!」
どれくらいここに居たのだろう。鼻の頭や耳朶が真っ赤だった。おでんの出汁の匂いが食欲をそそる。降谷は彼女の隣に座り、手に持つそれを覗き込む。
「おでん…僕も食べたいな」
「えぇー、仕方ないですね。どれがいいですか?」
「卵」
「ちょっ、それ私が一番好きなやつ…!」
二人で仲良くおでんをつつきながら憎まれ口を叩く。日付はとっくに変わっていて、寒いはずなのに纏う空気は暖かいものに変わっていたーー…
おわり
2020.12.31
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