知識ありの夢主がDC世界に飛んできたらの話
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自分の声に驚いたのか、顔を上げた女性は目は丸くしていた。目尻に涙は溜まってはいるもののは、どうやら治ったようだ。
「……」
「あの…?」
しかし女性はぽかんと口を開けたまま固まっている。
「具合が悪いようでしたら…」
心配で顔を近づければ途端に顔を赤くし、伏せてしまった。参ったな、と安室はあからさまに苦笑いを浮かべる。
「僕、実は上の階に住んでおられる毛利先生と知り合いでして、何かお困りでしたら…」
「あ、あのっ!」
女性はようやく言葉を発した。
「はい、どうされ…」
「つ、つかぬことを伺いますが、貴方様のお名前は…」
「安室透ですが…」
だばー!という表現が正しいと思う。女性は滝のような涙を流し、安室を拝み出した。そう、拝み出したのだ。
「あの…?」
しまった。稀に見る変な人に声を掛けてしまったようだ。風見に連絡して引き取ってもらいたい。暫くして彼女は「はー、よい夢でした」と涙で濡れた頬をハンカチも使わずに手で拭う。立ち上がった彼女の服装は改めて見て、顔を顰める。この真冬の時期、彼女はまさかの半袖だった。
「寒くないんですか?」
「え?あー、確かに言われてみれば…」
くしゅ、と小さくくしゃみをする。仕方なしに安室は羽織っている上着を脱ぎ、肩に掛けてやろうとすればあわあわと慌て出した。
「死んでしまう…!」
なにが?という言葉は飲み込んだ。
「夢の中で降谷零に会えただけでも失神ものなのに、上着なんてかけられたらもう…!」
出されたその名に安室の目つきは変わる。
「嗅いでしまう!」
「……」
どうしてその名を知っているのだと開きかけた口は閉じてしまう。
「まさか人生でこんな至福な時間が訪れるとは思ってもみませんでした!夢ですけど、お礼を言わせてください!いつも癒しをありがとうございます!私の社畜人生、あなた様のお陰で何とか耐えられてます!」
言っていることの意味をほとんど理解することが出来なかったが「バーボンも飲めるようになりました!」と最後の一言に安室の中で彼女の対処の方針は決まった。
「そんなこと言わずに、今からお茶でもどうです?」
「うぇ!お、お茶ですか!?」
「はい、出来るなら二人きりになれるところがいいですかね」
「そ、そんな!二人きりなんて!!」
「……」
頬を赤く染め何やら勘違いしている彼女を今すぐにでも気絶させてやりたい衝動に駆られるがそこはグッと抑え、彼女に見えないようスマホ画面をタップする。
【風見、こっちに来る時、拘束具も頼む】
え?と返信でも戸惑っているのが窺える風見を無視して安室は彼女に満面の笑みを向けた。
「さぁ、僕とこれから楽しい時間を存分に過ごしましょうか」
これから何をされるかわかっていない彼女は「はい!」と語尾にハートでも着いてそうな声で嬉しそうに返事をしたのだったーー…
おわり
2021.2.4
いいね♡
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