景光くんとギャル@
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髪を染め、化粧をし、ピアスをつける。爪も長く、スカートは短い。
そんな校則違反だらけの自分は先日転校してきたばかりだ。しかし周りにそんな人間は誰一人おらず、早速孤立してしまう。地元とは大違いだ。失敗した。
隣の席の諸伏景光は変わった男だった。
心の中で勝手に景光って呼んでる。耳の軟骨部分にピアス穴を見つけると「それ痛くなかった?」と普通に訊いてくる。携帯よりデカいストラップになぜか笑う。邪魔じゃん、と言われた時は肩にグーパンをかました。けどクラスで話しかけてくるのは彼ぐらいだったからムカつくことを言われても心の奥底では楽しんでいたり…
転校してから初めての日直が回ってきた。しかし前日一緒にやる筈の男が自分だとわかると「俺マジで、ギャル無理なんだよ。学校休むわ」と廊下でしているのをたまたま聞いてしまう。明日一人かよ、なんて思いながら翌朝職員室に向かうと既に景光が日誌を持って職員室から出てきた。
「今日日直の奴休みらしいからオレが代わり。いい?」
こんな朝にそいつが休むなんてわからないじゃん。ズル休みすることを知ってわざわざ朝早くに来てくれたのだろう。恥ずかしいのと、嬉しいのが混ざって、ちょっと心は苦しい。
素直になれなくてぶっきら棒に「うん…」とだけ応えれば彼は嬉しそうに笑った。その笑顔にキュンとしたのは内緒。
たぶんこういう独りでいる人間がほっとけないんだと思う。
彼はみんなにするのと同じように自分に接してくれる。丁寧に、話してくれる。
もう、夕方。この日誌を書けば彼との時間は終わってしまう。みんなの景光くんに戻ってしまう。
「字、綺麗だね」
「そう?」
彼が書く綺麗な字を隣の席から見つめる。手持ち無沙汰に制服の裾を弄りながら足を組むと、彼の手が止まってしまう。
「どうし…」
ガタッといきなり立ち上がるもんだからつい身構えてしまう。そして制服の上着を脱ぎ始め、え、なになに?どうしたの?暑いの?と目を丸くする。
パサッと膝の上に掛けられる上着。
「目の、やり場に…困る」
ちょっとおいおい景光さんよ。マジで勘弁してくれよ。
そんな顔を真っ赤にして、そんなことを言われてしまえば好きが止まらなくなるじゃないか。
思わずそのまま彼の胸倉を掴み、引き寄せて彼の唇を奪う。嫌われたかな。もう口を聞いてもらえないかも。
しかしちょっと怒ったような顔で今度は彼の方からキスをしてきてくれたということはオッケーってことでいいのかな。
おわり
2020.12.19
いいね♡
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