景光くんとギャルB


景光くんとギャルB

転校初日。彼女の格好には驚いた記憶はあるものの皆が抱くような嫌悪感はなかった。周りの響めきを一切気にせず、堂々とした姿勢で景光の隣に座った彼女の姿は何故だろう…親友と被って見えたのだ。誰に何を言われようと自分の好きなことを貫き通す姿勢がどうしてだか惹かれた。

だからといって彼女も友達が出来ないのは悩みの種らしかった。その日彼女は掃除当番をサボった罰として担任から課題を出された。班が違うから気付いてあげられなかったのだが、彼女はサボりたくてサボったわけではない。班の子達が報せなかっただけ。転校したての彼女が分かるはずもなかった。

放課後。教室で一人頬杖を付き、寂しそうに携帯をいじっている彼女を見かける。ボタンを押すたびに着けている携帯より大きいストラップがジャラジャラと動いている。耳に髪を掛ける仕草が女性らしかった。すると露わになる軟骨部分に見えたピアス穴…

「それ痛くなかった?」

「は、え?」

声をかけられるとは思っていなかったのだろう。くるりと上がった睫毛がパチパチと上下する。ピアス穴を示すと、それを隠すように耳に手を当てた。少し、警戒しているようだった。

「課題プリント、分からないなら教えようか?」

君と、話すきっかけが欲しかったのかもしれない。未だ理解が追いついていないようで、固まってる彼女を放って隣に腰掛ける。見えたプリントを勝手に取る。

「あ、ちょっと…!」

「ほとんど出来てないじゃないか」

「まだ、前の学校だとここは習ってないの!」

その怒った表情は彼女が初めて見せたリアクションだった。少しムキになっている彼女に、つい意地悪したくなる。そんなことを女子に思ったのは初めてだった。

「…教えて欲しい?」

「は?自分で調べて出来るし」

「素直じゃないな。ほら、ここはこの公式じゃなくてこっちを使うんだよ」

彼女の筆箱から勝手にシャーペンを借りてカチカチ、と芯を出す。スラスラとヒントを与えるようにプリントに書き込んでいけば、文句を言っていた彼女もいつの間にか真剣な表情で覗き込んでいた。

「あ、出来た…」

最後の問題まで答えを導き出した彼女に景光もご満悦な表情を向ける。

「じゃあオレは帰るよ」

「まっ…て…」

来週の服装検査で指摘されそうな長く、綺麗に磨かれた爪が景光の制服の裾を掴む。少し顔の赤い彼女がそこにいた。忙しなく瞳を動かした後、ちらっと景光を見た。

「あり…がと」

口を窄めながら、か細く出たお礼。トスッと何かが景光の胸を貫いたのだった。



おわり
2021.01.23
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