ハンプティ・ダンプティいつのまに
同室の子に揺り起こされてはっと目を開いた。朝食食べそこねるよ、とすでに兵服に身を包んだその子はにっこり笑って部屋を出ていった。ナマエはのそりと体を起こし頭を掻く。顔を洗ってぐしゃぐしゃになったシャツを過ぎ捨て新しいシャツに袖を通した。爆発している髪は適当に梳いてまとめるといつものように後ろで一つに結い上げる。部屋を出ると早いものではすでに朝食を食べ終え戻って来はじめていた。ナマエも自然と早足になりながら食堂へ向かう。
「やあ、おはよう」
食堂の入口でエルヴィンとばったり顔を合わせた。軋むような不自然な動きのまま挨拶を返しお先にどうぞと促せば彼はレディファーストだと言ってナマエの手を取り誘導する。なるべく視線が合わないように下を向きながら食堂に入ると軽く頭を下げて手を引っ込めた。
「昨日は良く眠れたかい?」
「…はい、まぁ」
「私はあまり眠れなかったんだ。ベッドに入っても考え事ばかりしてしまってね」
「…そうですか」
「何を考えていたか…知りたい?」
突然耳元に顔を寄せられ囁くようにたずねられる。大袈裟に跳ねた肩をみてくすりと笑うとエルヴィンはすっと顔を離した。
「君のことを考えていたよ」
「べ、別に…聞いてないです」
「そうかい?聞きたそうな顔をしていたから」
エルヴィンはにこにこと笑いながらおどけたように肩をすくめた。ナマエは口元をひくつかせながら辛うじて笑みを張り付けそっと距離を取る。
「あぁそうだ、朝食が済んだら私の部屋へ来てくれないか。話したいことがあるんだ」
「……昨日のことなら、その…」
「それとは別件だよ。…じゃあ、またあとで」
エルヴィンはひらりと手を振ってその場を離れると適当な席に座り朝食を摂りはじめた。ナマエも少し離れたところに腰掛けスープを口にいれるといつも通りの薄い味に何となく安心感を覚える。
普段より時間をかけて全て食べ終えると、その頃にはすでにエルヴィンの姿は食堂になく少しほっとしながら立ち上がった。
「…やっぱり、行かなきゃ駄目だよね」
団長室へ続く廊下をちらりと見る。いったい何の話だろう。ナマエはぎゅっと下唇を噛み締めると鉛のように重い足を持ち上げゆっくりと踏み出した。