これはそのさいしょの劃期
扉の前で何度目かの深呼吸をしたあと意を決してノックした。ドアノブに手をかけ返事を待っていると突然それが開かれ思わず前のめりになる。
「おっと、…大丈夫かい?」
「っ!?す、すみません…!」
「怪我はない?」
「大丈夫、です…ありがとうございます」
危うく床とキスするところをエルヴィンに抱きとめられる。ナマエはお礼をいいながらエルヴィンの胸に手をついて離れようとしたが背中に回った腕はゆるむどころかいっそう強くなった。
「あ、あの…もう大丈夫ですから…」
「うん…」
「いやいや、うんじゃなくて!離してください!というかドアも開けっ放しでこんな、…!」
「あぁそうか、すまない」
エルヴィンはにこりと微笑むと何を思ったのかナマエを抱き上げ背で押しながら扉を閉めた。かちりと音がしたのはどうやったのかわからないがおそらく鍵を閉めたのだろう。ナマエが呆然とされるがままになっているとエルヴィンは彼女の頬にキスを落とし、それによってナマエも我にかえる。
「なっ…、はぁ!?何するんですか!」
「何って…キス」
「そ、そういうことを言ってんじゃないんですよ!」
わざとなのか天然なのか、エルヴィンは笑みを浮かべたまま答えた。ナマエを抱き上げたまますたすたと歩きだすとそのままソファーに腰掛けまるで人形でも愛でるかのように髪を撫でる。ナマエは当然逃げ出そうと暴れるがエルヴィンがそうさせなかった。
「団長!いったい、何なんですか!」
「何とは?」
「私は話があるというから来たのに、何でこんなことするんです!?」
「…ドキドキしない?」
「はぁ…?」
「こうしてくっついてるとドキドキするだろう?ほら、心臓もはやい……意外と大きいな」
「ちょっと、どこ触ってんの…!?」
敬語を使うことも忘れエルヴィンの手を叩き落とすとようやく彼の膝から脱した。壁際まで下がると思い切りエルヴィンを睨み付け上がった息を整える。
「やれやれ…ちょっと胸を触っただけじゃないか。もしかして処女かい?」
「〜っ、…用があるなら早く仰ってください!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶとエルヴィンは笑みを濃くしてなるほど、とひとつ頷いた。何がなるほどだ。ナマエはちらりと扉の方を見やりいつでも逃げ出せるようにと距離を測る。
「すまないね。君が可愛いからついからかってしまった」
「……」
「頼むから怒らないでくれ」
眉を下げて困ったように笑うエルヴィンに、ナマエは少しだけ肩の力を抜いた。だがそれが間違いだったと数十秒後に身をもって知ることになる。
エルヴィンはソファーから立ち上がりナマエのもとにゆっくりと歩み寄る。逃げなくてはと、そう思うのと同時にエルヴィンの腕が伸びてきて少し浮いた背がまた壁につけられる。彼は少し屈んでナマエの耳元に顔を寄せた。
「ねぇ、どうすれば君は…私のことを好きになる?」
内緒話でもするように囁かれた言葉に呆然としていると耳朶にエルヴィンの唇が触れる。びくりと震えた肩を押さえるように手が添えられた。
「…逃げないの?」
「っ…!」
くすりとエルヴィンが笑ったのが聞こえて顔に熱が集まった。一瞬エルヴィンが顔を上げて目が合うと次の瞬間には唇が重なっていた。