手向けに愛
澄んだ空の下、綺麗に立ち並んだ墓標のうちの一つの前で僕たちは肩を並べている。オリヴィアの手の内には白い薔薇の花束。それは彼女が尊敬する恩師に贈りたいのだと言って、此処へ来る前に店に寄り購入したばかりのものだった。
何を買うのかは決めているのだと言って彼女は一人で花屋に入ると、直ぐにその花束を大事そうに胸に抱えて出てきた。折目のひとつもない包装紙に包まれたそれは、陽の光を浴びて思わず目を瞑ってしまいそうなほど輝いて見えた。先生もきっと喜ぶだろうと言えば、彼女の方は蜂蜜色の瞳を細めて柔く微笑んだ。
そっと彼女が屈んで腕をのばし、その美しい花束を恩師の名が刻まれた石の袂に添える。そうして花束が手を離れると、彼女はまるで魔法の解けた操り人形のように力無くその場に座り込んでしまった。
「おい」
「セバスチャン、今日一緒に来てくれてありがとう」
今にも消え入りそうなか細い声がそう呟く。俯いた彼女がどんな表情をしているのかは窺えなかったが、その頬を一筋の涙が伝い落ちていくのを目に留めた。この一年間幾つもの苦難を共に経験してきた筈の彼女がこうして泣いている姿を目の当たりにするのは、思えばこれが初めてだと今になって気が付く。彼女はホグワーツに来てからこれまで、誰かの前で泣いたことがあるのだろうか。
「……いくらでも付き合うさ」
努めてなんてことのないようにそう返して彼女の隣に腰を降ろすと、小刻みに震えている小さなその肩を己の方へと抱き寄せた。