140字SSまとめ

このページのお話は全て『診断メーカー140文字SSのお題』をお借りしています。
※タイトルクリックで文章展開します。

誰も欲しくない(Sebastian×転)

「皆に断られた」と転入生は机に項垂れている。どうやらダンスパーティの相手を探して片っ端から声を掛けているしい。
というか僕まだ誘われてないんだけど?
投げ出された手の甲にキスを落とすと、彼女は明らかに動揺して、耳まで真っ赤になった。
そりゃ、こんな番犬付きじゃ誰も欲しくないだろうね。


一緒に帰ろう(Sebastian×転)
※遺物の闇の中後

許されざる呪文を放った直後は何も分からなかった。正しい事をしたと思っていた。
でもアンが叔父さんを抱えて姿をくらました時に、僕の居場所は無くなったのだと悟った。
自業自得だから、泣く事は許されない。償うと決めたんだ。
「一緒に帰ろう」と言って抱き締めてくれた君をこれ以上失望させない為に。


言えない我儘(Ominis)

彼女の首筋に顔を寄せると柔らかくて絹のような髪が鼻に触れる。ハニーバタートーストの甘く美味しそうな匂い。
擽ったそうに笑う君の声がいつも以上に近く聞こえて、俺の鼓動が速くなるのが分かる。
消灯を告げる鐘の音が聞こえた。
君の温もりが名残惜しいけど、我儘を言って困らせる訳にはいかないな。


お題不明(Sebastian)

君はこういう恋愛ごとの駆け引きってやつに疎いから、どうせ無意識なんだろ。僕を見つめる蜂蜜色の瞳も、僕を呼ぶ時のあの綿飴のように甘くて柔らかい声も。
その全てが君が僕のことを好きなんじゃないかって胸を騒つかせるのに、君は平気な顔して笑うんだ。
僕ばっかりこんな気持ちにさせるなんて本当にずるいな。


こたえられない(Sebastian)

答えられない
「好きな人いるの?」

何を思って突然そんなことを聞いてきたのか。真意を探ろうと彼女を見つめても、首を傾げて笑みを深くするだけで何も得られない。少しの恥じらいくらい感じさせてくれれば僕も決心が着くのに。
君だと伝えた時どういう反応をするのか予想が付かなくて、僕は一旦答えをはぐらかした。


応えられない
追加課題を出されてレポートと向き合っている彼女の、零れ落ちてきたひと房の髪を掬って耳に掛けてやる。
そうして現れた小さな耳の縁を人差し指でなぞり、親指と一緒に耳朶の弾力を確かめる。擽ったそうに身を捩り「やめてよ」と笑う君があまりにも可愛い。
悪いけど、言うことは聞いてあげられないな。


嘘を暴く(Ominis)

君は俺と一緒にいたら決して幸せにはなれない。それほどゴーント家の闇は深い。
だから君の傍にいるべきではないと、分かっているフリをして一定の距離を保っているつもりだった。
それなのに君はかまいもせず境界を飛び越え、俺をその愛らしい声で呼ぶ。
もうこれ以上この胸に燻る熱を偽るのは無理だ。


御馳走様でした(Sebastian)

暖かな陽の射し込む窓辺に座り、レモンシロップがたっぷり染み込んだケーキを食べていると、セバスチャンが通りがかった。

「いい匂いだな」
「でしょ?美味しいよ」
「へえ」

近付いてくる彼は差し出した腕を過ぎ、私の口端を掠め取っていく。

「ああ、確かに美味かったよ」

なんて本当に、憎らしい人。


寂しい、と呟いて(Sebastian)

髪飾りを失くして泣きながら床と睨めっこする私に声を掛けてくれたのが彼だった。同い年の中で一番社交性があって気遣いが出来るのに、悪戯好きで笑うと可愛い男の子。

「久しぶり」

合わない間に随分と大人になった。知らない人みたいで少し寂しい、と呟いて視線を逸らすと捕らえられる手。
会いたかった。


いや、うん、うっかり(Garreth)

「いや、うん、うっかり。ごめんね」

今し方その中身をぶち撒け空になった大鍋を目前に、反省の色の薄い謝罪。魔法薬学の授業では勝手にアレンジを加えて爆発させる問題児。
しかし爆風で薄汚れた私の頬を、ローブの袖でほんの少し雑に拭う彼の手付きが、そんな私の中の悪印象を多少なりとも払拭した。


10センチが憎い(Garreth)

もう少し、と伸ばした手を嘲笑うかのようにすり抜ける薬瓶。それは赤髪の彼の高く掲げられた手に収まっている。
ただでさえ身長差があるのに、こんな事をされては到底敵わない。

「返してよ」

講義の声を上げる私に、彼は困ったように笑った。

「こんなの使わなくてもさ、君は十分魅力的だと思うよ」


世界が狂う(Garreth×転)

初対面でいきなり魔法役の材料をくすねて来て欲しいなんて、とんだお願いをされたものだなと思い断った。できれば関わりたくないとも思った。
その人は今私の目の前に立ち、私の胸を騒つかせている。

「いくら君が強くて、多少の怪我も直ぐ薬で治しちゃうんだとしてもさ、心配する奴はいるんだよ」


信じる神様が違う(Sebastian)

Sebastian side
「セバスチャン、そんな魔法は使っちゃ駄目だよ」

授業でも習わないのにと僕を咎める君は、少し前までその同じ口で僕の事を褒め称えていたくせに。
オミニスや妹のアンにさえ隠していた呪文。君になら教えても大丈夫だと思った僕が間違っていた。心臓が痛いほど苦しい。
君と僕は信じる神様が違う。


your side
「信じる神様が違うみたいだな」

そう紡ぐセバスチャンの、怒りも悲しみも表さない表情が恐ろしかった。
彼は頭が良く決闘も強い。授業では習わないような呪文も大抵独学で熟してしまう。そんな知識へ貪欲な所が好きだった。真剣な表情に惚れた。
凄いと褒めた時、照れ臭そうに笑う彼が私は好きだったのだ。


幼馴染、やめたいんだけど(Garreth)

「幼馴染やめたいんだけど」

彼女の顰めっ面が、大鍋をかき回していた僕を見下ろす。

「僕の新作が一番に試せるのに?」

深くなる眉間の皺。元気爆発薬を改良して、沈んだ気持ちにも効く薬を作れないかな。

「まあ偶に面白いのもあるけどさ」

僕だってそう笑って言う君のただの幼馴染でいるのはやめたいよ。


良い子、でしょ(Garreth)

「おばさんに言いつけるから」

薬の所為で頭が鳥の巣になった幼馴染が、定番の文句を言い放つ。自分の叔母が副校長だなんて、監視の目が厳しくて厄介でしかない。

「なら僕も君が夜に禁じられた森へ行ってることを言うよ」

何故、と見開かれる瞳。君のことは大抵何でも知ってるさ。

「君は良いこ、だろ?」


良い子、でしょ(Sebastian)

「ちょっと」
「んー、」

僕を咎める彼女の尖った唇が可愛くて、思わず口角が上がってしまう。髪はシルクのような滑らかさと艶やかさで、幾らでも触っていられる。

「あの、ね?集中できないから」

小さい声で呟く彼女の耳は朱に染まり、湯気が出そうだ。

「はいはい分かったよ・・・良い子、だろ?」


相手が悪かったね(Sebastian)

彼女の目の前に見知らぬ男が立っている。何やら頼み事をしているらしい。

「どうも、すまないが彼女の予定は埋まってるんだ」

身体を割り入るようにして二人の間を遮った。彼女が余計な事を言う前に肩を抱き、方向転換して歩き始める。
振り返った先には此方を睨む顔。相手が悪かったね。


花言葉で愛を告ぐ(Lucan×転)

「わあ、ありがとうルーカン」

いつもは凛々しい彼女の表情がふ、と綻ぶ。セバスチャン顔負けの杖捌きをする彼女の腕の中には、僕が今し方贈った黄色いスターチス。以前彼女が花を眺めた笑みを浮かべているのを見かけた。その姿があまりにも綺麗だったのだ。
強くて優しい、僕の憧れの人。


愛される覚悟をしておいて(Garreth)

「君がここまで鈍いなんて、僕、思いもしなかったな」

魔法薬の事しか頭になくて、それ以外は一切眼中にないと思っていた。その熱い眼差しが一度でも自分に向けられる時が来るなど、一瞬たりとも想像する事ができなかった。
僅かに苛立ちを含んだ彼の背が私に陰を作る。

「愛される覚悟をしておいてね」








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