初手

詩音ちゃんに世話係が付いて、私は前と変わらない太宰くんの世話役に戻った。太宰くんはまだ何かに不満で、苛々している様子だった。
私は先生からの宿題をやりながら、不満そうに長椅子に腰掛け、窓の外を眺める主の様子に注意を払った。
「ねえ」
「なあに」
「この煩わしい感じ、何だと思う?」
私は筆記具を止めて、彼の隣に座った。
頬に触れると、額をくっつけてきた。「どうすれば良いか解らない」
「何に就いて?」
「君に就いて」
思いもしない返答に私は何も返せなかった。少し距離を取るように、額を離し、彼の顔を見詰めた。
「僕の世話人なのに他の奴の面倒を看るなんておかしいだろ?でも君は喜んで引き受けた。それでいて、僕には我慢しろと云うんだ」
「そんな心算は無かったの。ごめんなさい」
少し嬉しかった。
母様や広津さんから教わったことを誰かに教えて、漸くマフィアの一部に成れた気分だった。
そして、詩音ちゃんにもお目付け役が付いたと聞いた時、何故だか寂しくなった。
「卯羅、寂しさを抱えた男と女がどうやってそれを埋めるか知ってる?」
「……知らない」
初めての口付けなのにな。もう少しロマンチックなものだと思ってた。それから長椅子に押し倒され、覆い被さる太宰くんがずっと口付けてくる。
「卯羅は僕の世話人だから、僕が好きなように扱って佳いんだ」
「そうだよ、太宰くんの好きなようにして佳いよ」





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