お応え

今日だけで何人目だろう。
「済まないね。その気持ちには応えられないよ」
毎日懲りずに。
そもそも好みで無いのだよ。私の幼馴染は、有難い事に質が善いから、生憎眼が肥えていてね。
詩音ちゃんは、スレンダーで活発。ハキハキしてて善いよね。口悪いけど。
ドストエフスキーはね、うん。似た者同士だから。一緒に蟻の行列を眺める仲だよ。
卯羅はほら、もう、云わずもがなというか、卯羅だから。
「治くん、終わった?」
「うん、終わった」
漸く関係修復が出来た幼馴染。ああいう時は、必ず席を外すが、遠慮しなくても善いと思う。
「治くんモテ期だねー」
「嬉しくは無いけどね」
「なんで?」
「煩わしいだけさ。断ると刷り込まれたように『誰か居るの?』って訊いてくる」「本当のところはどうなの?」
机に胸を載せ、身を乗り出してくる。悪戯っ子の笑顔が、世界一可愛い。
「そうだなぁ。今度教えてあげようかな」
「なんで!何で今じゃないの?」
ぷくっと膨らむ頬。前よりも白くなった?睫毛も長く見えるし、身体つきもより女性らしくなった。
「まだ今のままで居たいから」
あともう少しだけ、時間をおくれ。
きっと、今恋人に成ったら、私はその喜びで、君を手荒く扱ってしまうかもしれない。私のものだと、教え込むために。
「卯羅」
「治くん?」
名前を呼んでくれるだけでも、こんなに愛しい。可愛い、という感情だけが込み上げてくる。
「今度のお休み、久しぶりに出掛けないかい?」
「行く!あのね、凄く可愛いお洋服買ったから見せたげる」
「そしたら、私もそれに似合うようにしなくては」
「駄目!そんなの、駄目……」急にどうしたの。顔真っ赤だけども。「あんまり、格好善く、しないで……」
ああもう。錯覚してしまうだろうに。
「程々にね」
「そうして?」
もう一度、手を繋げるようになるのは、いつに成るのだろうか。踏み切れないのは、私。彼女の眼は全てを物語っている。





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